2012713(金)

たかが肩こり、されど肩こり


たかが肩こり、されど肩こり

肩こりは、頸部から肩、肩甲帯にかけて広がる痛みと違和感、それに肩甲骨内上角に硬結のある症候群をいう。
(医道の日本第782号より抜粋)

日本人は、肩身が狭い、肩をもつ、など対人関係を肩で感じるといわれ、肩を仕事や日常生活で負担のかかる部位と捉えています。
現代社会における肩こりの原因には、様々な要因が重なりあい、その症状をひとくくりに不定愁訴とも言われてきました。
また日本国内においては、これらの病変に関する整形外科領域の論文も少ないのが現状です。
よって、肩こりだと言われてしまえば、そう思い込む他なく、巷ではご丁寧に、単なる肩こり、単純な肩こりと、言い換えられてしまうほどです。

かなり古い話ですが一応、平成の話です。いわゆる肩こり裁判がありました。
タイプライターを操作する職業、小さなお子さんの相手をする保母(父)業、手話通訳をする職業、どの職種の方が裁判をおこされたかは、記憶が曖昧ですが、慢性的な肩こりがきっかけで手に痺れがでて仕事ができなくなったとして、労災を認めろとの裁判でした。

争う相手側は、それは単なる肩こりだから労災認定はできないと主張。
原告側は、肩こりは症状の訴え、すなわち主訴であり、これにかかわる病変を当時は認識の浅かった頚肩腕症候群と主張。
この裁判で、原告側が勝訴して日本では初の、肩こり裁判により労災認定を受けた事をきっかけに、この頚肩腕症候群が世に広まったと記憶しています。

その後、肩こりの症状を訴える患者に対し、医学界が様々な角度からのアプローチをして注目。近年では、急性の外傷、亜急性の外傷による頸部捻挫、繰り返す炎症による筋膜炎や線維筋膜炎、姿勢の保持が困難になり発症すると考えられる胸郭出口症候群や交通事故などで、お馴染の低髄圧症候群、また肩こりが発症する筋群には自律神経線維に富むものが多いため、神経学的なアプローチやその他、内科的な要因も考えられることから、肩こりは軽視できない一つの症状としての認識が広まりました。

しかし、どの病気も同じなのですが、患者本人に単なる、単純な、との認識が残り、それらを完治させようと考えない事と、一時楽になれればいいとの考え方が残る場合は、慰安を求め慰安的な治療で終えてしまいがちであり、慢性的な症状を残してしまった病変について医学は無力である。

肩こりに関する一般常識をかえてゆくには、肩こりは身体の不調を示す反応である一症候だとの認識が必要だと考えます。

■肩こりを訴える患者への治療は下記のような療法が多い。しかしこれらの療法で改善されない症状は他の病変を疑うこと。
病因は決定的ではないものの治療原則は、悪循環の遮断、正常バランスの回復で具体的には、十分な睡眠、適度な運動、などが指導される。

【保存療法】
圧痛点・結節部への麻酔剤とステロイドの局所注射。以前はビタミンB1の注射剤も使われたが、現在はあまり使われない。内服薬は消炎、筋弛緩剤など、漢方薬は葛根湯が用いられる事が多い。

メリット 薬剤の即効性がある
デメリット 麻酔剤による倦怠感、脱力感、アレルギー反応

【理学療法】
◆積極的方法
 姿勢保持の自動運動、弱い筋肉に対する強化、抵抗運動による筋力増加、などの運動療法
◆愛護的方法
罨方(冷・温)療法・電気療法・手技療法などマッサージ・牽引療法など。

メリット 自身が覚えてしまえば、私生活でも実践できる。
デメリット 運動歴のない人にとっては筋疲労や筋肉痛を増大させることもある。






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