20101130(火)

ツキノワグマ


最近クマについて、ネットサーフィンやら、図書館の書籍の確認などをしていたせいか、息子までそれに感化されて、市の移動図書館から子供向けの、ツキノワグマの本を借りてきた。
彼の学年ではとうてい読めないであろう本。おそらく4年生以上でないと、出てくる漢字にも困難を示すだろう。(一応振り仮名はついてはいるが(笑))
子供ってのは、聞いていないようで、ちゃんと親の話を聞いているのだなあと、すこし怖く、彼なりに気にしていたのだなあと思い、嬉しかったりした。
ツキノワグマ

その名も「ツキノワグマ」。
出版社は偕成者、著者は宮崎学さん、発行年は2006年である。

ブログサイトもございました。
http://tukinowaguma.net/ツキノワグマ事件簿
(小さな世界のお話でも貼り付けてました、私。すごい偶然です)

宮崎学さんは、野生動物をロボット技術を駆使して撮影する写真家で日本の自然をテーマにして、40年以上の撮影をしてきた。カンムリワシが沖縄で繁殖しているのをつきとめたのもこの人だということなので、ご存知の方もいるかもしれない。この方は、野生動物の視点からみた環境についての本「アニマルアイズ」のシリーズを書いてもいる。
まるで日本のシートンだ。
と思ったのはちょっと内緒(笑

この本は、まず小学生を対象としている。将来をになう子供たちに、クマ(おそらく野生動物のほとんどと)との共生を願いを託して、いろいろな過去とは違っている問題点を浮き彫りにしているからだ。

この本で書かれた問題点は、おもに3つ。
ひとつ目は、ゴミ箱について。
ふたつ目は、人の犬の扱いについて。
みっつ目は、お仕置き放縦について。
実際に読むのが一番いいとは思うのだけど、簡単に触れておくことにする。


ゴミ箱について。
この本では長野県のクマの様子を書いている。そして現在では長野では、クマの住む地域にあるゴミ箱は、クマの手が入らないように小さな取っ手のなかにレバーがあってそれを持ち上げる方式になっている、というのはこないだテレビで見た。

このゴミ箱の発想は、カナダにある。
カナダにはヒグマはがすんでいる。ツキノワグマなど足元にもおよばない。いや足元くらいには行くだろうか、とにかく、北にすむものほど、大きな身体をしているというベルクマン(だっけ?)の法則のとおり、大きく力も強い。
それに負けないようにコンクリートで土台を固め、ゴミ箱本体もふたも鉄板がかなり厚く強度がある。そして、ふたを持ち上げてごみを捨てる。
クマは、押し込むことはできても持ち上げる発想がないというところから、カナダの人はこれを思いついたのである。

しかし、日本のゴミ箱は、主なところでもまだ丸かご。または小動物には効果があっても、とてもクマにはかなわないようなひ弱なものが圧倒的に多い。

熊もおいしいものがすきなのだ。そしておいしいものは、人が持ち込んだものが一番。


人の犬の扱いについて。
家の中や庭ではともかく、野良犬や、つながれて居ない犬は、めったに見なくなった。
ところが、私が子供の頃には、いわゆる野良犬というものが居た。野良でなくても、人とのいい関係を持ち、鎖につながれない犬がいた。
一部の犬は、血統書つきのハンター犬でもないのに、人と一緒に野生動物を相手にした。その中には当然熊もいただろう。

自分の縄張りにはいったものを激しく撃退するのは犬の特徴である。だからこそ、熊は犬の怖さ、犬と人が手を組んだ時の怖さをよく知って、あまり人里には出てこなかった。

しかし、今、そんな犬は居ない。
もともと猟犬の種類だったとしても、熊を相手にするような犬を私は日本犬でしか知らない。ダックスフントはアナグマ、ブルドッグは牛、レトリーバーは水鳥。
プードルやダルメシアンやビーグルなんかは、さっぱり分からない。
だからこそ、新世代クマという、犬や人を恐れない世代が出てきた。野生動物は、注意深くこちらを観察していて、人里のものを色々学習している。何が恐ろしくて、何が安全か、人の想像を絶する速さで学んでいるだろうと指摘している。


お仕置き放縦について

奥山に怖い思いをさせて放つ、といっても、いまやいたるところに林道が出来、山を越えたところに別の県の里があったりする。
奥山なんて今の日本にはない。(北海道は別だろうけれど)
そしてお仕置き放縦が怖いのは、そのお仕置きと個体の性格によって、怖がるどころか、復讐をさせてしまう可能性がある点だ。

唐辛子スプレーなどでおしおき、撃退することは、熊が逃げた先でも激しい痛みを長く続かせることになる。長い痛みは人にとっても不快きわまるものではないか。そうすると熊は、時には、そのような仕打ちをした人を思い出して、同じ色の服を着ていたり、同じにおいのするものに対して攻撃を加えようとすることがあるらしいのだ。

確かにそうだ。人がクマのそれぞれの個体の識別ができないように、クマもまた人の個体の識別などできはしまい。熊にとっては、ひどい仕打ちを加えた人という動物は憎むべき対象となる、それだけのことになってしまう。

これは北海道の野生動物研究所外部リンクでも指摘外部リンクしている。

本は、これらの3つの問題を写真入りで解説している。

そして、共生にも触れている。
彼の言い分はこうだ。

「まがりなりにも、クマの行動エリアに暮らしながら自然を売りにして営業活動をしているのなら、とられない工夫をするのが自然と共存していくのが人間としてのルールではないか」という。

この発言の背景もこのようなことである。
長野県では、養蜂や、蜂の育成などをしている。蜂の子も蜂蜜も熊にとってはごちそうだ。

その養蜂業者が、熊も一緒に捕らえてしまおうというので、真ん中に檻を構えて、周囲をぐるりと蜂の巣箱で取り囲んだ。

あなたが熊なら檻に入るだろうか?

否。入らない、これでは餌付けである。
クマの生息地においしいものを撒き散らして、それで十分な対策も打たなければ、熊はしたい放題。もし、この構図が逆で、蜂の巣箱の周りに熊を取るわなを仕掛けたら、とか、電気を流す簡易柵を設けていたら、くまは近寄れない。
そしてこんな簡単な警告で熊は立ち去っていく。


今までのやりかたはこうだから、過去の事例にならえばいいのだと私は思っていた。
里山を作り、ハンターを育成したり。
でも、野生は確実に、進歩、進化している。
私たちに今必要なのは、実は自分たちが自然を甘く見ているということに気づき、そこから、事象を並列させ多元的に物事を考え迅速に行動に移す、思考回路の変化かもしれない。

あーつまり。
ひとつのアイデアを実行する時、人の視点と、もし自分が熊だったらとか、子供連れだったらとか俯瞰にたってみるとかいうことの、あくまでもそういう意味合いです。






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