2008年10月11日(土)
専守防衛(6)
物語×41
(続き)
ケンカの原因は、積み重なったものがあってこれとはっきりは判らない。
きっかけは、小さなことである。
新しい家の、サユリたちが主に居住する2階の台所の下に階段があった。はじめの設計では、この階段の上は天井まで吹き抜けだった。
新しい生活でも、当面は買い換えた食器棚と、冷蔵庫を並べて台所に置くつもりだったので、それでは、サユリたちの台所はずいぶん狭くなり、冷蔵庫以外の家電を置くには家具を買い換えなくてはいけなくなる。
食器棚は、使って4年しか経っていないために、捨てることはまだ考えられなかった。
あのときだって、家を建てたときのような熱心さで、使い勝手と価格の面で一番兼ね合いのいいものを厳選したものだから。
家を建て替えた直後で、他のものに回すお金のゆとりも考えられなかった。
そこで、サユリは、階段を上るときに圧迫感を感じない程度に吹き抜けをさえぎることを申し入れた。さえぎった裏側が台所のカウンターになってそこに家電を載せれば、狭い台所も有効に使えると思ったからだ。
それは役に立った、そこに不満はない。
不満なのは些細な部分だ。
食器棚と、冷蔵庫の寸法を測って、あわせてもらったが、そこにゆとりは無かった。
それは高齢の親と同居するために、いずれ手すりをつけられるようにと廊下を広く取ったためと、家のバランスから計算された通し柱があったからだった。
でも、ぎりぎりでも入ればいいと二人は快諾した。
しかし、出来上がってみれば、そのカウンター天板は、カウンターと言ってしまったばかりに、横へ5センチほどの張り出しが生まれていた。
引っ越す前に、切って貰うことはすぐ考えた。
けれど出来上がって直後の家に傷を付けることは、自分も含め皆嫌がった。
ぎりぎりだったために、食器棚と冷蔵庫を並べて置けなくなり、件の食器棚はテレビ横に一時的に本棚として置かれた。
引っ越しが終わったら、すぐ、一番最初に食器を出し、食事の支度をしたかった。
引越しの準備で子ども達にも自分もサトルも出来合いの食事ばかりが増えていた。
出来合いでは無い料理を食べたかった。
だけど、まずそれが来なかった。
あちこち駆けて歩く子どもがいるその頃のサユリには、誰かの手伝いが無ければ、長時間の買い物も出来なかった。一週間、台所に関しては何も出来なかった。
越して初めてのサトルの会社の休日、赤ん坊を背負って、二人でホームセンター行き、そこで柱材と、壊れたので捨てるつもりだった、組み立て家具の棚板を組み合わせ、間に合わせの食器置き場を用意した。
それは、居酒屋のような感じだったので、二人は面白がった。
そのうちに、なんとかしようと約束をして、それっきりになった。
(続く)
ケンカの原因は、積み重なったものがあってこれとはっきりは判らない。
きっかけは、小さなことである。
新しい家の、サユリたちが主に居住する2階の台所の下に階段があった。はじめの設計では、この階段の上は天井まで吹き抜けだった。
新しい生活でも、当面は買い換えた食器棚と、冷蔵庫を並べて台所に置くつもりだったので、それでは、サユリたちの台所はずいぶん狭くなり、冷蔵庫以外の家電を置くには家具を買い換えなくてはいけなくなる。
食器棚は、使って4年しか経っていないために、捨てることはまだ考えられなかった。
あのときだって、家を建てたときのような熱心さで、使い勝手と価格の面で一番兼ね合いのいいものを厳選したものだから。
家を建て替えた直後で、他のものに回すお金のゆとりも考えられなかった。
そこで、サユリは、階段を上るときに圧迫感を感じない程度に吹き抜けをさえぎることを申し入れた。さえぎった裏側が台所のカウンターになってそこに家電を載せれば、狭い台所も有効に使えると思ったからだ。
それは役に立った、そこに不満はない。
不満なのは些細な部分だ。
食器棚と、冷蔵庫の寸法を測って、あわせてもらったが、そこにゆとりは無かった。
それは高齢の親と同居するために、いずれ手すりをつけられるようにと廊下を広く取ったためと、家のバランスから計算された通し柱があったからだった。
でも、ぎりぎりでも入ればいいと二人は快諾した。
しかし、出来上がってみれば、そのカウンター天板は、カウンターと言ってしまったばかりに、横へ5センチほどの張り出しが生まれていた。
引っ越す前に、切って貰うことはすぐ考えた。
けれど出来上がって直後の家に傷を付けることは、自分も含め皆嫌がった。
ぎりぎりだったために、食器棚と冷蔵庫を並べて置けなくなり、件の食器棚はテレビ横に一時的に本棚として置かれた。
引っ越しが終わったら、すぐ、一番最初に食器を出し、食事の支度をしたかった。
引越しの準備で子ども達にも自分もサトルも出来合いの食事ばかりが増えていた。
出来合いでは無い料理を食べたかった。
だけど、まずそれが来なかった。
あちこち駆けて歩く子どもがいるその頃のサユリには、誰かの手伝いが無ければ、長時間の買い物も出来なかった。一週間、台所に関しては何も出来なかった。
越して初めてのサトルの会社の休日、赤ん坊を背負って、二人でホームセンター行き、そこで柱材と、壊れたので捨てるつもりだった、組み立て家具の棚板を組み合わせ、間に合わせの食器置き場を用意した。
それは、居酒屋のような感じだったので、二人は面白がった。
そのうちに、なんとかしようと約束をして、それっきりになった。
(続く)
コメント(0件) | コメント欄はユーザー登録者のみに公開されます |
コメント欄はユーザー登録者のみに公開されています
ユーザー登録すると?
- ユーザーさんをお気に入りに登録してマイページからチェックしたり、ブログが投稿された時にメールで通知を受けられます。
- 自分のコメントの次に追加でコメントが入った際に、メールで通知を受けることも出来ます。