2009年1月6日(火)
枯(5)
物語×41
“ | 差別用語がひとつ存在します。 物語の進行上、取替えがきかないので、どうぞお許しいただけますようお願いいたします。 |
(続き)
パートのリーダーは個性の非常に強いハルより一歳年下の人だった。つまりハルの第一印象でみんなが年上に見えたのはまず間違いだった。彼女は自分の息子を、その職場で働いている男性が顧問を勤める剣道のクラブに入れていた。
あまりにもリーダーがハルの顔をみて話そうともしない人なので、ハルは、彼女の子供の頃を知っているだろう、親しい友人にも尋ねてみた。
初めは、
「あまり良く知らないの」
と答えられて、そうだよね、同じ学校だったからといって何でも知っているわけじゃないよねと納得していたが、そこをやめた後には、
「昔から強いものにはまかれて、弱いものをいじめる」
と聞かされた。
リーダーは自分が思い込んだことが全てで、客観性もなく他人ばかり非難し、調べるということや状況を聞くと言う事はしなかった。逆に言えば、人の顔色ばかり見ていたかもしれない。不機嫌な顔の他人を見ると、彼女もそれは面白くないのだ。
自分が何かしたかもしれないという、無意識の可責かもしれない。
そのせいかどうか知らないが、リーダーはハルヨという人といつもくっついていた。ハルヨは、ハルより4つ年上で背の高く、娘二人と息子一人が居て、息子は中学生、なかなかに腕の立つ剣士だそうだ。
ハルがまだそこに居ない、過去の話だが、リーダーに笑いながら平然と、
「針、さしてあげようか」
といったという神経の持ち主でもある彼女は、頬骨が鼻より出た、細い底意地の悪そうな目をしており、その彼女の顔をハルは心底恐ろしいと思った。
だが、物言いは柔らかかった。
「あら、今日からなのね、宜しくね」
と言って、ハルに作業道具を渡してくれたとき、自分の目が節穴だったと思わず恥じたほどに。
だが、実際には見た目どおりの人で、笑ってなんでも酷いことが言える人、できる人だった。
ここでは自らが剣道をしているものより、身内が剣道をしているものの方が、言い方は悪いが威張っていた。
リーダーとハルヨは、いつもおしゃべりしていた。
内容は、息子の剣道のこと、剣道をさせていて知り合った先生達のことだった。多くの内容は、あら捜し。たまに褒めることはあった。だが、ハルヨがちょっとでも褒めようならば、リーダーはそれをけなし、リーダーが好感的なことを言うと、ハルヨはトドメを刺す。噂の対象を持ち上げては落とし、持ち上げては落とし。本人がそこにいたら、決して出来ない話しを延々としていた。
対象にするのは、その場に居ない人なら、誰でもいいらしかった。社長への嫌味、専務への嫌味、他店の店長さんへの文句。おそらく居ないところではハル以下全員の文句が言われていただろうと想像するのは簡単だった。
それでも、仕事を一生懸命している、とアピールすることには非常に長けていた。
若い男性が多い職場でもあったので、若くて格好のいい社員の男の子達がたくさん出入りしていた。だから社員が来ると彼女達は甘い声を出して
「はい、承りました」
「はい、やっておきますね」
と優しく、優しく言った。
その変わりようは、好きな人にだけ好きな態度を取る、ハルには理解できなかった。
それをもしハルがやったら、色きちがいと言われてしまうだろうな、と子どものころの経験から感じていたからだ。
それでも、リーダーは、仕事は好きな人だった。丁寧で綺麗な仕事だった。
ハルヨはそうではなかった。自分に出来ること「だけ」をしているのに、さもなんでもできると言った態度で、しかも親切なふりをして、ハルの仕事のあら捜しや、アキさんの仕事の足を引っ張った。
そんな風に好き勝手に振舞っていても、二人はいつもかなりの不満を抱えていたようで、
「もうここ、やめちゃおうかなー」
と周囲が困るようなことをいつも言っていた。実際いきなり二人も抜けられたら困るのだ。
なにしろ、直前までアキさんほどに仕事をこなしていた女性は独立して行って、一時的にとはいえ、戦力は、がたがただったのだから。
(続く)
パートのリーダーは個性の非常に強いハルより一歳年下の人だった。つまりハルの第一印象でみんなが年上に見えたのはまず間違いだった。彼女は自分の息子を、その職場で働いている男性が顧問を勤める剣道のクラブに入れていた。
あまりにもリーダーがハルの顔をみて話そうともしない人なので、ハルは、彼女の子供の頃を知っているだろう、親しい友人にも尋ねてみた。
初めは、
「あまり良く知らないの」
と答えられて、そうだよね、同じ学校だったからといって何でも知っているわけじゃないよねと納得していたが、そこをやめた後には、
「昔から強いものにはまかれて、弱いものをいじめる」
と聞かされた。
リーダーは自分が思い込んだことが全てで、客観性もなく他人ばかり非難し、調べるということや状況を聞くと言う事はしなかった。逆に言えば、人の顔色ばかり見ていたかもしれない。不機嫌な顔の他人を見ると、彼女もそれは面白くないのだ。
自分が何かしたかもしれないという、無意識の可責かもしれない。
そのせいかどうか知らないが、リーダーはハルヨという人といつもくっついていた。ハルヨは、ハルより4つ年上で背の高く、娘二人と息子一人が居て、息子は中学生、なかなかに腕の立つ剣士だそうだ。
ハルがまだそこに居ない、過去の話だが、リーダーに笑いながら平然と、
「針、さしてあげようか」
といったという神経の持ち主でもある彼女は、頬骨が鼻より出た、細い底意地の悪そうな目をしており、その彼女の顔をハルは心底恐ろしいと思った。
だが、物言いは柔らかかった。
「あら、今日からなのね、宜しくね」
と言って、ハルに作業道具を渡してくれたとき、自分の目が節穴だったと思わず恥じたほどに。
だが、実際には見た目どおりの人で、笑ってなんでも酷いことが言える人、できる人だった。
ここでは自らが剣道をしているものより、身内が剣道をしているものの方が、言い方は悪いが威張っていた。
リーダーとハルヨは、いつもおしゃべりしていた。
内容は、息子の剣道のこと、剣道をさせていて知り合った先生達のことだった。多くの内容は、あら捜し。たまに褒めることはあった。だが、ハルヨがちょっとでも褒めようならば、リーダーはそれをけなし、リーダーが好感的なことを言うと、ハルヨはトドメを刺す。噂の対象を持ち上げては落とし、持ち上げては落とし。本人がそこにいたら、決して出来ない話しを延々としていた。
対象にするのは、その場に居ない人なら、誰でもいいらしかった。社長への嫌味、専務への嫌味、他店の店長さんへの文句。おそらく居ないところではハル以下全員の文句が言われていただろうと想像するのは簡単だった。
それでも、仕事を一生懸命している、とアピールすることには非常に長けていた。
若い男性が多い職場でもあったので、若くて格好のいい社員の男の子達がたくさん出入りしていた。だから社員が来ると彼女達は甘い声を出して
「はい、承りました」
「はい、やっておきますね」
と優しく、優しく言った。
その変わりようは、好きな人にだけ好きな態度を取る、ハルには理解できなかった。
それをもしハルがやったら、色きちがいと言われてしまうだろうな、と子どものころの経験から感じていたからだ。
それでも、リーダーは、仕事は好きな人だった。丁寧で綺麗な仕事だった。
ハルヨはそうではなかった。自分に出来ること「だけ」をしているのに、さもなんでもできると言った態度で、しかも親切なふりをして、ハルの仕事のあら捜しや、アキさんの仕事の足を引っ張った。
そんな風に好き勝手に振舞っていても、二人はいつもかなりの不満を抱えていたようで、
「もうここ、やめちゃおうかなー」
と周囲が困るようなことをいつも言っていた。実際いきなり二人も抜けられたら困るのだ。
なにしろ、直前までアキさんほどに仕事をこなしていた女性は独立して行って、一時的にとはいえ、戦力は、がたがただったのだから。
(続く)
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