物語(41)


2008925(木)

運動会(1)

物語×41

ブログは初投稿です。
物語を載せて行ってみようと思っています。

宜しくお願いします。
下手ですみません。

運動会(1)

受付を済ませ、そこで言われた場所のそばで日陰を探し、ミサはその日陰にある校庭のコンクリートの、基礎の部分に軽く腰掛けた。

タケルはようやく自分の出番が来たと知ってはしゃぎ、春から一緒に通うことになる、近所の小学生のそばに寄っていってしまった。慌てて止めても聞こえもしないかのようだ。
本当に聞こえていないのだろう。

ずっと楽しみにしていたから。

9月も半ばを過ぎたというのに今日は暑い。
運動会を行なうには十分すぎる、いい天気。

空は晴れ、青く澄み渡り、雲は軽い羽のよう。
すっかり秋の空だ。
ただ、じりじりと照らすお日様の光は、まだ夏の強さを残していた。

子どもは元気だ、ミサは感心と呆れをない交ぜにして思った。

かつては自分もそうだったはず。
幼い姿の、麦藁帽子を被り、虫取り網を振り回して蝶を採り続けた、長い一日が頭のなかに思い浮かんだ。
子どもの頃を思い浮かべると、ミサには真っ先にこの日の風景が浮かぶ。

日本の国中が開発されている途中の時代。あちこちに背の高い雑草の生えた空き地があり、ひらひらと飛ぶ蝶は、今のように少なくなく、それこそ無数に飛んで、楽園のように見えた。一年の半分くらいは寒い北海道の、短い夏を惜しむかのように、時間を忘れ、蝶を追い続け、虫かごをいっぱいにした。
それらが次の日には死に、泣きはらすことになることも気がつかなかった。

めぐり合った夫と結婚したあとに、北海道から出て、東京そばの地方都市に移った。
ミサが生まれ育ったところから比べて、20年は遅れているようなところ。首都圏のベッドタウンだけあって、集合住宅がたくさんあり、食べ物を扱うお店も多く、安い。
でも、おしゃれを楽しむには、まだ若いミサには、不十分なところだった。

子どもと中年の上のほうの揃えはあるのだけど、ミサの年頃の女性だと東京に行って買い物をするのだろうか。電車で行けば20分だしなと気にしないでいたら、東京まで出て行かないとおしゃれも楽しめない、そんな田舎なのだと気がつくのに3年かかってしまった。

カブトムシもカマキリも、滅多に見なくなったタマムシまでも、そこには生きていた。
水田が広がり、鯰がときおり田に迷い込み、白鷺が田で踊り水面に口を突っ込み、水の中を覗けばザリガニが水の中に赤黒い体を横たえ、暴れ、夜にはカエルの大合唱があり、稀に、蛇が郵便受けの中で昼寝をして、ぎょっとしたこともあった。

それらの虫のいる生活と、若者のおしゃれは、一緒の線にはのっていないんだな、と思うとミサはひとり可笑しくなった。

おしゃれをすることが、疲れると感じたときがあったから。

(続く)



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