2012725(水)

もうひとつの特攻作戦・戦艦『山城』


もうひとつの特攻作戦・戦艦『山城』

今日はホビーコーナーから新製品・戦艦『山城』の昭和16年と昭和19年の姿を再現した2つの商品から、戦艦『山城』についてのお話です。

戦艦『山城』は、扶桑型戦艦の二番艦。竣工時は世界最大の3万トンの排水量を誇る戦艦として就役しました。

しかし、最初に貼られたレッテルは「不良艦」。

と言うのも、設計上の速度を出す事も困難な上、舵を切ると極端に速度が落ちると言う致命的な欠陥。

そして主砲を発射すると艦上構造物が爆風で破壊される、またその主砲のうち3番4番砲塔は構造物が邪魔で運用に難があった・・・などなどとあげればきりが無いほど。

そのため、これら扶桑型戦艦は、改装につぐ改装で、ドックに入る期間が長く、その長い生涯のうち洋上で艦隊に属している時間よりドッグに入っている時間のほうが長いといわれたくらいでした。艦隊にいる姿が珍しいとさえ言われたこともあるようです。

そんな欠陥戦艦ゆえに太平洋戦争での出番も少なかったのでした。


しかし、戦況が悪化の一途を辿る1944年、遂にレイテ沖海戦へと投入されるのでした。

出撃命令が下った戦艦『山城』を待ち受けた運命は壮絶なものでした。

アメリカ軍のフィリピン・レイテ島上陸を阻止するため日本海軍とアメリカ海軍の間で交わされた海戦をレイテ沖海戦と言いますが、その中でミンダナオ島とレイテ島の間のスリガオ海峡を通峡するコースを辿る反撃作戦で散ることとなるのです。

史上最大と言われるこの海戦は①西から『大和』『武蔵』『長門』と主力を並べた栗田艦隊、②北から空母はじめ航空戦力を中心とした小沢機動部隊、そして③南からこの『山城』はじめ『扶桑』を含む西村艦隊と、3方向から同時に突入するというもの。

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戦艦『山城』

『山城』・『扶桑』と旧式艦を中心とした戦力も期待できない小艦隊・西村艦隊がスリガオ海峡に入ったのは昭和19年10月25日、敵艦が無数に待ち受ける海峡にそれを知りながら向かう、まさに特攻出撃でした。

何度も敵の空襲から難を逃れた西村艦隊でしたが、未明、突入地点へ近づくと同時にアメリカ艦隊の集中砲火を浴びる事となるのです。

夜戦を得意とした日本海軍でしたが、この旧式艦がレーダー技術で上を行くアメリカ艦隊と渡り合うのは難しい状況。姉妹艦である扶桑は敵魚雷を受けて戦線離脱を余儀なくされます。(山城はその後撃沈、生存者0名と記録されている。)

そのため作戦は『山城』の単独突入という形になりました。

そもそもの出撃命令の内容がこの扶桑型戦艦の能力では不可能な作戦であり、あまりに無謀な出撃であったことは確かです。

しかもこの頃、同時突入すべき主力艦隊はまだ突入地点から遠く、西村艦隊の単独突入は覚悟の上だった事がうかがわれます。

夜戦において『山城』は、アメリカ駆逐艦の魚雷攻撃と重巡洋艦のレーダー射撃を受け、艦の速度は低下、機関停止ののち火薬庫爆発とあっという間の出来事だったようですが最後のときまで主砲での反撃を止めなかったことがアメリカ側の記録に残ります。

総員退避命令が下されるもむなしく、2分と持たずに『山城』は転覆。1600名いたとされる乗員のうち、生存者は10名にも満たないとされています。

この数字は他の日本海軍艦の戦没に比して極端に少ない数字で、今も論議を呼んでいます。

出番の無かった戦艦の最後は生存者の少なさからも見えてくるように壮絶なものとなりました。それは、姉妹艦『扶桑』も同じに見えます。


今日は新製品・1/700戦艦『山城』から、戦艦『山城』の最後でした。

新製品フジミ・特-71 戦艦『山城』昭和16年・特-72 戦艦『山城』昭和19年 各¥2835 完全新金型で製作されたハイディテールモデルキット。


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先行で発売されている1/700・特-66 戦艦『扶桑』昭和16年・特-67 戦艦『扶桑』昭和19年 各¥2835  戦艦『山城』とともに行動しスリガオ海峡に散った『山城』の同型戦艦。扶桑とは日本の同義語でもある。


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