庭縁雑感(15)


2011425(月)

心地良い空気


心地良い空気

ここに座っていると様々な音が聞こえます。

風の音は木の葉がザワザワと代弁して聞かせてくれています。

水がチロチロとキラキラした音で流れていきます。

鳥たちは不意に背後で鳴いて隠れん坊のつもり。

動物たちが立てる音は活き活きとして嬉しくなります。

シャカシャカシャカシャカ......

一定のリズムが林の中から聞こえてきます。

この音が聞こえだしたら秋ももうすぐ。

エゾリスがオニグルミの実を食べる音です。

観察するとおもしろい。

クルミを見つけ、両手でくるくる回しながら臭いを嗅ぐ。

首をひねって少しかじる。また、臭いを嗅ぐ。

たぶん熟し具合がわかるんだろう。

あるときは土に埋めにいきます。

まだ若い実なのだろうか。

あるときは木の上に運んでお気に入りの場所でシャカシャカ

食べ出します。

冬の為の貯蔵と、脂肪をまとうための栄養補給に大忙し。

ここではいちばん長い時間観察できる時期かもしれないな。

そうして風は少し冷たいけど暖かな陽射しの中で

こうして色々な音につつまれて

心地良い空気につつまれている時間

生かされている事を感じながら。



8月28日


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2009430(木)

あるがままに


あるがままに

大好きな[自然林]に分け入ると、色々な事をそこから学び取る事ができます。

人が手を加えたり植林などで人為が介入してしまうと自然林というカテゴリーからははずれてしまいますが、ここ十勝でもまったく人為の影響を受けていない林は珍しく、皆無と言ってもいいかもしれませんが、比較的それらの影響が見られない「営農地残置林」と「段丘林」「河畔林」についてお話しします。


ここ十勝は文字通り「農業・酪農王国」として全国に知られています。
先人は、非常に苦労して一面カシワやハルニレの生い茂る大地を開墾して広大な耕作地としました。
比較的平坦な十勝平野ですが、自然の地形そのままに耕作地にする事で、排水性の良い良質な畑を手に入れました。
そんな中で湿地や河畔などは耕作には適さないためにそのままの形で残されました。それが[営農地残置林]です。期せずして手付かずの自然が残される事になりました。
湧き水や流れが連続した帯に、各々まとまった大きさの湿性林をつなぐ形で残されました。


河川にまだ堤防と呼ばれるものが無かった頃、川の流れは大雨の度に自由に暴れてその流路を変えて上流から肥沃な土砂を下流へと運びました。その範囲は数キロに及び土砂が流される事で河床はどんどん低くなっていきます。
そうして河川の暴れる幅に沿って段丘と呼ばれる丘ができました。やがてその削られた崖部分に植生が成立して[段丘林]が生まれました。本来湿性林のために利用価値が無くそのまま後生に残される事になりました。


[河畔林]は文字通り、河川沿いに植生する林の事ですが、上記のように川は洪水の度に暴れ、その流れを変えてきたわけですから、成立しては消失するを繰り返して今に至っているわけです。しかし、上流にダムができて、河岸は護岸で守られ、幅は堤防で決められる中で、かつての氾濫原はなくなりつつあります。
こうして河畔林が安定した基盤になると、かつて洪水の度に更新を繰り返してきたサイクルが変化する事になるために、本来の姿ではなくなる可能性を秘めている事になります。
十勝の河畔林を代表する種類のひとつであるケショウヤナギは、氾濫原に依存して生き残った代表種ですから今後どのような経緯をたどる事になるのかは注視しなければならないと感じています。


このような自然林である[河畔林][段丘林][営農地残置林]が山地森林と連続する事により、動植物の移動・生息・活動の拠点やルートとして、また、育み還る場所として十勝の生態系や豊かな環境の骨格として機能してきた事は推して知る事実だと思います。


その自然林の中に踏み行った事があるでしょうか。


自然林には当然危険も伴いますので服装や意識としての注意が不可欠である事を記しておきますが、その中に身を置く事で自身の精神や知覚、感情に変化が起きる事もそうですが、その圧倒的な自然度に圧倒される事が多くあります。


いつもいつも感じる事があります。
「あるがままにそこにある」という当たり前の事に改めて気づかされる事です。
すべては理にかなってそこに在る。
逆らえばそれは死を意味する。
枯れ枝を見て庭木などで行う剪定の意味を知る事ができます。
枝の流れを見て植栽の目的に沿った植え方を学ぶ事ができます。
清楚で可憐で派手さのない野草の佇まいはそこに在る意味を教えてくれます。
昆虫の居る場所を風の通り方で感じられます。
その樹木本来のにおいに気づく瞬間がたまりません。
踏みしめる足の感触でその土地の豊かさがわかります。
木の葉のざわめきにこの林の個性が聴こえてきます。

ここにあるすべてに無駄な物など一つもないと気づかされます。そしてそれは事実です。

何気なくて美しい。
地味だけど美しい。
危険だけど美しい。

人として あるがままにありたいと思う。
だけどそれは なかなか難しいのだとも思う。

そこから学ぶべき事は 限り無いのだと思いつつも
少しでも近づけたらとも思う。



200846(日)

「いい庭」の心


当たり前に「いい庭」とは人それぞれであります。

たくさんお金をかけたからいい庭になるわけでもなく、カタチばかりに捕われても住まう人の気持ちとは違ったところにそれがあった場合には、やっぱり何か違った庭の佇まいになってしまいます。

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結論を言えば、プランナーと「とことん」話し合うべきです。はずかしいとかくだらないとかは「そこ」にはないのです。

でも、多くのお客様は初めてお伺いさせてもらってお話をお聞きした時は「まったくわからない」とおっしゃいます。
それも理解できます。何ができて何ができなくてどんな物があってどんな形にしたらいいのか。

それはその通りです。だから「プランナー」がいるのです。

お客様は、理想を語れば良いのです。突拍子なくてもいいのです。現実離れしていてもいいのです。それを噛み砕いて形にするのがプランナーの仕事であり、現場技術者や職人の仕事なのです。もちろん出来ない事もありますが。
まず、考える事は小さな事からで、必要な物は何かとかからなら思い浮かぶと思います。

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例えば、物置には何を入れるだろう?とか、車は今は2台だけど将来的には3台になるだろうとか、雪は敷地内でしか処理できないだろうとか、そんな事から最低限確保しなければならないスペースがわかってきますね。

次に何がしたいか?です。
花を育てたい。野菜を作りたい。焼肉をしたい。子供を安全に遊ばせたい。とか、そこからもスペース的なものが想像つきます。

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あとは、どう魅せるか?はプランナーの腕です。
家の顔にもなるアプローチや住まう人が憩うテラスなどはイメージがなければ提案として出させてみるときっと自分の想像を超えたものが見られると思います。

「御予算は?」これも「まったくわからない」とお答えになるお客が多いですね。これがプランナー泣かせの言葉ではあるのですが、実際には「庭の値段」は住宅の坪単価みたいものが存在しないのでお客様がわからないのは当たり前の事なのですが。プランナーは、その住宅の佇まいや住まう人の趣向など色々な情報からプランをしていきますが、その中で最良のものを出したいと思うのが性分としてありますので、目安でも大まかでも金額を想定しておいた方が手戻りが少なくて「いい庭」になる条件のひとつになると感じます。

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最後に重要なポイントです。
少なくてもここ十勝では提案と見積もりは無料のところがほとんどです。
プランニング能力が比較的高いと言われている土地柄なので、最低でも2社、多くても3社くらいに提案を出してもらう事をお勧めいたします。そして、他社にも依頼している事を伝える事です。3社なら3様のプランを見る事ができてそれぞれの特性も知る事ができます。その中でご自分の感覚に一番近いところに決めれば良いと思います。業者間でも競争心理が働きより良いものにしようとしますし、何よりもその切磋琢磨がプランンナーのレベルアップにつながるからです。

「いい庭」にならない方法は簡単です。「良くない業者」に頼む事です。
良くない業者とは、「自信」と「能力」と「モラル」の無い業者です。

見分け方は簡単です。
1)他社の図面で平気で見積もりを出す。
2)他社の見積もりを見てディスカウントしてくる。
3)他社を公然とけなす。

プランはプランナーの努力の賜物です。血と汗の結晶と言っても大げさではありません。
その労力を横取りして平気な業者にはモラルのかけらもありません。当然自信と能力もありません。
今の時代、そんなに大もうけできるはずがない絞り込んだ見積もりに対して数十万単位で値引きを提案してくる時点で「おかしい」と感じて下さい。
「モラル」の無い業者は平気で手抜きをします。断言できます。

良く言うのですが、お庭をつくらせていただいたご家族とは一生のお付き合いがはじまります。
モラルの無い業者はそのようなスタンスには立っていませんし、立てません。

ここまで言うのには理由があります。
どうぞ汲み取って下さい。

どうか、これからお庭を計画するお客様も公平な比較の中で、あなたにぴったりと合った業者を見つけて、「いい庭」を、そして「愛せる庭」と出会える事を願う次第です。


生意気を言わせて頂きましたが本心です。
どうぞ宜しくお願い致します。



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2008329(土)

『メンテナンスフリー」の心


「メンテナンスフリー」のお庭がいい。
確かに理想です。

自分は、「メンテナンスフリー」の意味を[永久にメンテナンスがいらない]と解釈していました。

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しかし、違う解釈がある事を知りました。そしてそれが共通認識らしいのですが。それは、[ユーザーではメンテナンスができないので、壊れたりしたら修理を依託する。あるいは買い替える。]商品が「メンテナンスフリー」だそうです。

なるほど。

どちらにしても庭の場合は、「メンテナンスフリー」は当てはまらないでしょう。維持管理のすべてを業者に依託すればある意味「メンテナンスフリー」にはなるのでしょうが、日々の玄関先の掃除までしてもらうのは一般庶民としては現実的ではないでしょう。

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そうなると、やはり「なるべく手間のかからない庭」という事になるのでしょう。前回に戻ってしまいますね。

一時、「メンテナンスフリー」だとして[ワイルドフラワー]が流行った事がありました。主に一年草の種を播いてその年に咲き終わった花からタネが落ちて次の年にまた咲くので放っておけば毎年花が楽しめるというものでした。今では見る事がなくなりましたが、やはり雑草除去などのメンテをしなければ衰退してしまうのです。

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比較的手間がかからないとして人気のコニファ-類も放ったらかしでは樹形も乱れ衰退してしまいます。適度なメンテナンスの上に美しさが保たれるのは類を選びませんよね。

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木製デッキなどは、メンテナンスによって腐食を押さえて永く使う事ができますが、腐食が進行してからでは復旧が難しい場合があります。簡単に作り替えるとはならないでしょう。

何事にも共通だと思いますが、良く見てあげる事に尽きると思います。それによりちょっとした変化に気づき、手立てを早くしてあげる事で結果メンテの軽減につながります。

「愛でる気持ち」を大切にしてお庭と向き合いましょう。

次回は、「いい庭の心」で。



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200822(土)

「手間のかからない庭」の心


近年の庭のオーダーのほとんどが、「手間のかからない庭」というのはどこも同じではないかと思います。言い換えれば多くの人の庭に対するイメージは「手間がかかる」という事になります。

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その多くの要因は樹木・芝生・雑草などの植物に起因するものであるという事です。

「芝生は管理が大変だからやめたほうがいいと言われた」「樹木は葉っぱが落ちて掃除が大変だし、御近所の迷惑になるから」「雑草を取るのが大変」「虫がきらい」など様々なお言葉を耳にします。

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それで、どのような庭になるかと言うとアスファルト舗装やレンガ・インターロッキングなどの敷き物と防草処理をした化粧砂利との組み合わせでしょうか。確かにスッキリとオシャレな空間ができあがります。手間も植物を導入するよりはかからないと思われます。

しかし、それで良いのかと我々は考えます。

「お客様が満足する。」というのはあらゆる仕事の大前提であるとは思います。しかし、お客様の想像を超えてより良くなる提案をしていくのも我々の責務であると思います。

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では、なぜ良くなるのか?それはお客様の「声」にあります。

「ここにこの木を植えて良かった。」「葉の色(緑)がいいですよね。」「思いの他揺らめきとか動きがあるんですね。」「音がいいんですよ。風を感じられる。」「鳥が来るようになりました。餌台を置こうかと考えています。」「近くで見ると花がこんなに美しい事に気付かされました。」などなど。

それでは、手間についてはどうでしょうか?

「花壇はどうしても雑草が生えてきます。でも、手を掛ければかけるほど花がそれに応えてくれるような気がします。」「確かに落ち葉は一時期掃除しなければ人の目が気になるので極力掃くようにしています。でも、このアプローチも同時にきれいになりますし、落ち葉がなくても外回りを掃いていると気持ちがいいです。思わぬ出合いもありますし。」「共働きでそんな時間なんて取れないと思ってましたが、庭がある喜びみたいなものなのか何かと庭に出ている自分に気付きました。楽しいです。」「おとうさんが毎週芝生を刈っている。しかもイヤイヤじゃなく。信じられない。」「土いじりは人間の本質です。」などなど。

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しかし、実際に手が掛けられないままに放置してしまい雑草ボーボーになってしまった方もおられるのも事実です。
「芝生を剥がして手間がかからなくしたい。」「おじいちゃんが植えた庭木がジャングルです。処分してほしい。」などが典型的な例でしょうか。

人にはそれぞれライフサイクル、ライフスタイルがあります。長続きするには「無理をしない事」そして「楽しめる事」が重要です。

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すべての人に「庭には緑がなくてはダメです。ぜったいに植えましょう。」と言っているわけではありません。
ただ偏見を持たないで欲しいのと、もしかしたら1本の木が草が花が生活スタイルを変えてくれるかもしれないという提案です。

何よりも私が植物が好きな物ですから。




次回は「メンテナンス・フリーってなんだろう?」の心です。



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