2009613(土)

大国アメリカの向上心と責任感に触れて距離感を感じた日


 6月4日、北海道ホテルで開催された、在日米国大使館の農務担当公使ジェフリー・ウィギン氏との意見交換会に顔を出してきました。

 明るく、親しみやすく、自信に満ちているという印象のウィギン氏の講演は主張が明確で、立場や賛否は別として、非常にわかりやいものでした。

(以下、ウィギン氏講演の要旨をメモしたものです)

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 日米関係は、政治、経済、軍事など多くの分野で強い結びつきがあるが、農業に関しては、ネガティブなイメージをもって報道されている。

 2008年、米国は、日本のトウモロコシの98%、小麦の63%を供給している。日本の面積よりも広い畑から収穫された生産物が日本に輸出されているのが現実だ。

 日本の食料自給率は、1984年の50%から現在の40%まで低下しているが、それは生活の質の向上によって多彩な食糧が求められた結果だ。

 食糧安全保障は自給率とイコールではなく、国産農産物と輸入農産物という2つのものから成り立っている。

 米国も食糧輸入国であり、輸出だけでなく、輸入でも世界第1位である。

 自給率と「食料が手に入る」ということは同じではない。いかに安定的にそれができるかが問題で信頼が重要だ。

 輸出国の政治状況による輸出規制は信頼を損ねる行為だ。過去の大豆の輸出規制は大きな誤りだと認識している。

 輸入国の消費者も国内の消費者と同様に重要だ。

 今、発展途上国における中流階級の増加が著しく、食糧の需要の高まりに対応するため供給を高めていくことが必要だ。

 主要な穀物生産国の反収を見ると、中国、ブラジルなどは米国などに比べ、まだ生産性向上の余地があるといえる。

(ここから農務スペシャリスト佐藤卓氏の補足)

 米国の有機食品産業は300億ドルの一大産業であるが、農業者の高齢化は進行し(平均54.3歳)、農作業の効率化、省力化が求められており、科学技術に期待されている。

 遺伝子組み換え作物によって、作業が減り、化石燃料の消費も抑えられる。

 グリホサート耐性ビートによる省力化や、豪国での乾燥耐性小麦、日本での花粉症抑制米など、遺伝子組み換え作物の可能性は幅広い。

 中国においても、食糧問題を解決するには遺伝子組み換え作物に頼るしかないとされている。

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 あまり時間がありませんでしたが、参加者との質疑応答もありました。

(質問1) バイオエタノール生産は今後、減らしていくのか。

(答) 穀物から作る現在の形は過渡期のもので、今後はセルロースからの生産になっていくだろう。

(質問2) 燃料や穀物の高騰を防ぐため、投機の規制が必要ではないか。

(答) 投機と投資の区別はむずかしい。

(質問3) 肥料高騰への対策。

(答) 窒素の利用効率の高い作物を開発中である。

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 輸入穀類への依存を減らすということも、私が放牧酪農に転換した理由の一つでしたので、会場で講演を聴いていて何となく場違いな感じもありました。

 が、参加してみて、世界の農業をリードする米国の目指す方向をはっきりと感じ取れたことは、大きな意味がありました。

 農業をする意味がお金もうけのためだったり、家が農家だったのでなんとなく継いだというのでは、米国のリードする農業の渦の中にどっぷりと浸かって流されてしまうことは間違いありません。

 豊かさや便利さを求めて、積み重ねてきた科学技術は、しかし、新たな問題も生みだしてきました。

 そして、それを解決するために、また新たな技術が求められます。

 農業も経営ですから、食っていけなければ終わりですが、時々、自分のしていることを立ち止まって考えてみるのも必要なことではないかと、ふと思いました。







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橋本てるあき
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