20101123(火)

TMRセンターに見る企業的農業の危うさ


 コントラクター(農作業請負組織)やTMRセンター(完全混合飼料生産組織)は、規模拡大した酪農家の労働時間短縮や機械投資の低減を図るべく、各地で立ち上がってきました。

 毎日の搾乳に加え、牧草の収穫、エサ作りとすべてをこなしながら、規模拡大を進めたことによって、どの仕事も中途半端になり苦労していた酪農家にとっては、分業・専業化による仕事の質の向上は大きな助けになっていることと思います。

 しかし、最近、本来酪農家を助けるはずのTMRセンターがしだいに酪農家を縛ってきているという話を聞きます。

 センターを運営するための負担金を生み出すため、搾乳に特化した酪農家はさらに規模拡大を進め、その結果、過剰になった糞尿を処理するための場所として草地が使われる事態に至っているというのです。

 こうなると、農家が本来目指すべき、土づくり、草づくりの道からは離れて行ってしまいます。

 そのような草地から生産された飼料で健康に牛を飼い、乳を搾ることは容易ではなく、新たな困難を抱え苦労を重ねることになります。

 農業の持続性には、経済や担い手などの経営の面と、土や草などの生物学的な面があります。どちらも重要ですが、後者を大事にすることが長期的に見た場合には特に必要になってきます。

 そんなことは百も承知と思っていたはずの酪農家が、実際には作業の外注によって経済重視に向かわざるを得ないのが現実です。

 競争力をつけるための規模拡大や新たな担い手としての企業参入などの取り組みが、農業の永続性を危うくすることのないように気を付けなければ、取り返しのつかないことになります。






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橋本てるあき
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