2011529(日)

草の力を生かそう


草の力を生かそう

 西十勝放牧研究会2011年5月例会が、5月21日、鹿追町で開催されました。

 今日の例会は、草の伸びがピークに近づきつつある時期のフィールドということで、真剣な意見交換が行われました。

 フィールド研修の場をお借りした武者牧場、樽見牧場ともに良い草地を持っているのですが、その草を十分に生かし切れているとは言えず、もったいない状況でした。

 武者牧場は5月15日、樽見牧場は5月9日の放牧開始でしたが、いずれも遅すぎです。そして、草がガンガン伸びている時期なのに両牧場とも昼間放牧だけで夜間の放牧を行っていません。本当にもったいないです。

 武者牧場の草地では、オーチャードグラスやライグラスが株化してクローバがあまり見えません。一方、ライグラスは全然冬枯れしている様子はありません。

      
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 簡易柵の左側が明日放牧する牧区。今日放牧している牧区(右)との差がはっきりしていて良く食べている印象から、一見良い放牧管理がされているように見えますが、大きな問題も含んでいます。ひとつは明日放牧する牧区の草が伸びすぎていることですが、これは放牧開始が遅れたことが原因です。そして、このように伸びた草を右側のように短く食べさせると、食べられた後の草が茎だけになって葉がなくなってしまうので光合成が十分できず、再生速度が遅くなってしまいます。そして、草を大事にしようとする意識が草を伸びすぎにしてしまいます。

 これは、北海道の多くの放牧酪農家が経験する放牧のむずかしさでもあります。粗放な放牧から抜け出そうと牧区を小さくいくつにも分けてローテーションさせる放牧を「集約放牧」と呼び、システマチックに放牧管理しているつもりが、実際は目の前の草の状況よりも放牧の方式を守ることに精いっぱいになっているうちに、想定を超えるこの時期の草の伸びについていけなくなってしまうのです。

 草は適度な放牧圧がかかることによって、短く食べられても伸び続ける密度の高い草地になっていくものだということを理解することが大事です。


       
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 樽見牧場の草地も草の伸びに加速度がついています。草の伸びにローテーションが追いついていません。

 この放牧地の草は分析の結果、CP29、TDN80であることが判明しています。濃厚飼料の成分を超える草を余らせて、夜、舎内で乾草を与えるのはあまりにももったいないです。

 試験場の先生方からも、両牧場とも頭数に比べて放牧地の面積が少ないので、しっかり放牧地の草を食べさせて、不足する分だけを補ってやるくらいの考え方でやると良いのではないかと、草の力を余すことなく乳生産に生かすよう助言がありました。

 百も承知のはずですが実践するには、ちょっとした勇気が必要なのかもしれません。

 まだまだ、フィールド学習はマンネリ化していないし、意義はあるということを再確認した次第です。






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橋本てるあき
橋本牧場(酪農)場主

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