2011年9月8日(木)
円高是正と自己否定的な円買いと
エッセイ×28
“ | 財務相、G7「円高で厳しい日本の経済状況を訴えたい」 2011/9/8 10:30 安住淳財務相は8日午前、9~10日にフランスで開催される主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に向けて「日本の今の経済状況、特に円高の中で非常に厳しい状況だし下振れ感もあるので、そうした認識は白川方明日銀総裁と一緒に世界各国のリーダーに訴えていきたい」と意気込みを語った。 (後略)日経電子版より |
(資料)ドル円レート 1970年より。赤:名目レート 青:実効レート 日銀
円高、止まりませんね。最近の動きから1ドル76円台でやっと底が見えてきた感じはしますが。
輸出の実需筋からはさらなる為替介入への期待(というより要望)が高まっています。
日本は輸出国ですから、当然円高は企業業績そして、日本経済全体に悪影響を与えるといわれています。
また、円という通貨は不況時に高くなる傾向があり、2重苦です。
一方で「過去40年円高傾向にあるのに何をいまさら」とか「日本はデフレで実行為替レートに換算すると必ずしも円高とは言えない」という反論もあります(上記グラフを参照ください)。しかし、今日この日を生きている企業経営者にとって、40年前のことより、今の名目の数字が大事になるでしょう。
経済産業省の9月1日付の調査結果(下記参照)によりますと、「企業行動として海外調達を増やすとか、生産拠点の海外移転などで対応せざるを得ない。」と企業は回答しています。
さて、今日このブログで言いたいのは、このようなありきたりのことではなく、あまり表だって言われていないことです。
この1年で日本政府は3度為替介入を実行しました。9月15日の菅代表選出の翌日(2兆1千億円)、3月18日大震災後の協調介入(7千億円)そして、8月5日(4兆5千億円)。
介入によって最大4円くらい円安になります。
しかし、この介入の効果は数日で消え、元のレートに戻りました。
それでは、だれが売っているのか?もちろん投機筋もありますが、大きいのは実需の売りなんです。輸出企業の財務部の部員が円が安くなるその瞬間を狙ってドル円を売りたたいています。(つまり円を買っています。)
9月8日時点でのドル円水準は77円30銭程度。このすぐ上の78円台にはこの実需の売りオーダーがびっしり並んでいるといわれています。もともと彼らは80円台で売りオーダーを出していましたが、80円代では売れず、77円、78円まで下りてきています。
別に彼らが、為替差益を享受しようというのではありません。簡単に言えば、輸出して物が売れれば外貨がたまります。これをどこかで円にしなければならないという、それだけのことです。
「円安が望ましい、しかし背に腹は代えられず円を買わねばならない。そのとき円は1円でも安くなればありがたい。」
というのが本音でしょう。「介入をお願いします」、と財務大臣に陳情している大企業もあるようですが、その時は喜んで円買います、というわけです。
私は、投機筋もさることながらこの実需のドル売りが円高に大きな影響を与えていると思っています。9月になり半期末を控えればなおさらかもしれません。
今朝発表された貿易統計を見ればわかるように、日本は貿易黒字国です。震災の影響で昨年同月比で40%の下落とはいえ、7月の経常収支は9902億円の黒字となりました。つまり、国外で物を売って、それを円に換える。つまり円を買う需要のほうが売る需要より多いのです。構造上円高になります。
(グラフ)貿易収支(棒グラフ)と経常収支の推移(1996年より)単位億円 日銀資料
一方、中小企業は深刻ですね。円高によってアジアの周辺国と直に競争することになりました。国外で事業展開しないと、というのは本音でしょう。
それでは、円を売りドルを買ったポジションはどうなるか?ということですが、過去の介入分はほとんどが含み損となって残っています。ただし、米国と日本の金利差分は利益となっていわゆる「埋蔵金」として損をある程度相殺していたのですが、これも最近使ってしまいましたね。つまり、巨額な含み損だけが残っているわけです。
円高、なかなか複雑です。
(資料)「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」の結果の公表 経済産業政策局 調査課 平成23年9月1日(木)
http://www.mytokachi.jp/blog/kurome/uploader/1315457284.pdf
http://www.mytokachi.jp/blog/kurome/uploader/1315457295.pdf
http://www.mytokachi.jp/blog/kurome/uploader/1315457310.pdf
円高、止まりませんね。最近の動きから1ドル76円台でやっと底が見えてきた感じはしますが。
輸出の実需筋からはさらなる為替介入への期待(というより要望)が高まっています。
日本は輸出国ですから、当然円高は企業業績そして、日本経済全体に悪影響を与えるといわれています。
また、円という通貨は不況時に高くなる傾向があり、2重苦です。
一方で「過去40年円高傾向にあるのに何をいまさら」とか「日本はデフレで実行為替レートに換算すると必ずしも円高とは言えない」という反論もあります(上記グラフを参照ください)。しかし、今日この日を生きている企業経営者にとって、40年前のことより、今の名目の数字が大事になるでしょう。
経済産業省の9月1日付の調査結果(下記参照)によりますと、「企業行動として海外調達を増やすとか、生産拠点の海外移転などで対応せざるを得ない。」と企業は回答しています。
さて、今日このブログで言いたいのは、このようなありきたりのことではなく、あまり表だって言われていないことです。
この1年で日本政府は3度為替介入を実行しました。9月15日の菅代表選出の翌日(2兆1千億円)、3月18日大震災後の協調介入(7千億円)そして、8月5日(4兆5千億円)。
介入によって最大4円くらい円安になります。
しかし、この介入の効果は数日で消え、元のレートに戻りました。
それでは、だれが売っているのか?もちろん投機筋もありますが、大きいのは実需の売りなんです。輸出企業の財務部の部員が円が安くなるその瞬間を狙ってドル円を売りたたいています。(つまり円を買っています。)
9月8日時点でのドル円水準は77円30銭程度。このすぐ上の78円台にはこの実需の売りオーダーがびっしり並んでいるといわれています。もともと彼らは80円台で売りオーダーを出していましたが、80円代では売れず、77円、78円まで下りてきています。
別に彼らが、為替差益を享受しようというのではありません。簡単に言えば、輸出して物が売れれば外貨がたまります。これをどこかで円にしなければならないという、それだけのことです。
「円安が望ましい、しかし背に腹は代えられず円を買わねばならない。そのとき円は1円でも安くなればありがたい。」
というのが本音でしょう。「介入をお願いします」、と財務大臣に陳情している大企業もあるようですが、その時は喜んで円買います、というわけです。
私は、投機筋もさることながらこの実需のドル売りが円高に大きな影響を与えていると思っています。9月になり半期末を控えればなおさらかもしれません。
今朝発表された貿易統計を見ればわかるように、日本は貿易黒字国です。震災の影響で昨年同月比で40%の下落とはいえ、7月の経常収支は9902億円の黒字となりました。つまり、国外で物を売って、それを円に換える。つまり円を買う需要のほうが売る需要より多いのです。構造上円高になります。
(グラフ)貿易収支(棒グラフ)と経常収支の推移(1996年より)単位億円 日銀資料
一方、中小企業は深刻ですね。円高によってアジアの周辺国と直に競争することになりました。国外で事業展開しないと、というのは本音でしょう。
それでは、円を売りドルを買ったポジションはどうなるか?ということですが、過去の介入分はほとんどが含み損となって残っています。ただし、米国と日本の金利差分は利益となっていわゆる「埋蔵金」として損をある程度相殺していたのですが、これも最近使ってしまいましたね。つまり、巨額な含み損だけが残っているわけです。
円高、なかなか複雑です。
(資料)「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」の結果の公表 経済産業政策局 調査課 平成23年9月1日(木)
http://www.mytokachi.jp/blog/kurome/uploader/1315457284.pdf
http://www.mytokachi.jp/blog/kurome/uploader/1315457295.pdf
http://www.mytokachi.jp/blog/kurome/uploader/1315457310.pdf
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