エッセイ(28)


2011518(水)

原発事故賠償スキームはギリシャ支援策に倣ったらどうでしょうか。


官房長官が、5月13日の定例記者会見で、

事故発生前に金融機関が実施した融資は「事故のリスクを考慮に入れて融資がなされているというのがマーケットの基本だ」と述べ、金融機関にも一定の責任があると強調 (産経ニュース 2011.5.13)

したことで、銀行株を中心に急落しました。
三菱UFJ銀行の株価は400円から380円と5%の下落です。
画像
(出所)Yahoo ファイナンス

素人政治家の不用意な一言でまたもや、市場が混乱し社会全体が被害を受けました。

いい加減にしてほしい。これは切実な願いです。

もともと、今回のケースに限らず政府や日銀は株式市場や企業には冷淡です。株価の下支えをしない。だから、リーマンショックにせよ海外で起きた金融危機のあおりを最も受けるのが日本市場であり、そこから立ち直れないのも日本市場なのです。

今回の原発事故の賠償問題にしても、政府は東京電力に対して非常に冷淡です。日本全体が東電の敵になってしまっている。

今、「東電の社員です。」なんて社員が名刺出せるのでしょうか?

東京電力は株式会社です。倒産したら、社員は全員解雇となり、工程表どころではない。原発対策が全面ストップですよ。

経産省だって、原発を認可していたのではないですか。その責任はないのですか?

ところで、現在の東京電力の資金調達は、ギリシャに似ているような気がします。

東電一社では到底、補償債務を賄いきれません。
ギリシャも今債券利回りが20%。つまり、借金することで金利20%を支払う義務があるわけですね。

はっきり言って終わっています。

ギリシャの場合、EU(おもにドイツ)が金融支援を行うわけですが、それでも足りず、債務期限延長や、一部債権カットを行うだろうといわれています。

そうすれば、当然ヨーロッパ域内の債権者である銀行のバランスシートが毀損するわけです。

まだ、この金融支援スキームは不透明ですが、何らかの形で銀行に負担をお願いすることになるのでしょう。

そしてここからは、予想ですが、次期ECB総裁と目されているマリオ・ドラギ氏(スーパーマリオともいわれる)が株価下支えなどでバランスシートの改善を行った後、ギリシャ支援策を出すのではないかと思っています。

ギリシャと東電、支援者が通常なら責任を負うべきではない他国であったり、国民であったりする点、そして債務問題を抱える点で共通することは多いです。

ドラギ氏が総裁になるのは11月ですが、東電救済策に関し、彼の辣腕にこっそり教えを乞うてもいい、と私は思っています。

(以下、新聞記事を載せておきます)
 「スーパー・マリオ」。メディアは猛烈な働きぶりからドラギ氏をこう形容する。イタリア政府の経済・財務省国庫局長時代には、財政再建策を取りまとめ、イタリアをユーロ加盟に導いた。昨年5月のギリシャ危機では、イタリア中銀総裁として、ECBによるギリシャ国債買い入れ策を支持。ギリシャ救済策の推進者として名を上げた。

 主要20カ国・地域(G20)の中銀などで構成する「金融安定化理事会(FSB)」の議長を長年務め、リーマン・ショック後の金融危機対応でも手腕を発揮。「識見、経験ともに抜群」(日銀幹部)とユーロ圏外からの評価も高い。(毎日新聞 2011年5月18日 東京朝刊)



201158(日)

相撲放送中止: ニコニコ来場者13万人の意味するもの


NHKは「大相撲五月技量審査場所」の放送中止を決定し、4月末の英国ウィリアム王子の結婚式をBSではありますが、約4時間生中継しました。

相撲はダイジェスト放送も行いません。

理由は「本場所ではないから」「世論を考慮して」ということです。

本日、まさに今この時、初日の幕内の取り組みをインターネットのニコニコ動画が生放送配信しています。

加えて、日本相撲協会のHPでも配信しています。

ニコニコの現在(17:15)の来場者数は13万6千人。これをどのように解釈しますか?

統計局ホームページによると日本の世帯数は約5000万です。

タイムシフト(録画)申込者数は2300件。単純計算でニコニコの視聴率は0.3%。日本相撲協会のHPの視聴者や、インターネットに接続できない潜在視聴者を考慮すると20万人は下らないのでは?と思います。

無料のチケットの申込人気も大変なものでした。

「日本」放送協会は、この20万人の視聴者を切り捨て、英国王子の結婚式を生中継する。

確かに相撲協会には賭博、八百長と不祥事が続きました。しかし、不祥事も含め日本の文化です。放送の中で反省を求めてもいい。日本の文化の伝動役を降りる公共放送の存在意義があるのでしょうか?

テレビ放送がこれでは、早晩その地位をインターネットに明け渡す日も近い気がします。

(追記:視聴者数15万人突破しました。17:50)



201158(日)

浜岡原発停止要請: 浜松のキロルは?日本平のロッシーはどうなる?


浜岡原発:停止要請 大口需要者に戸惑い 動物園や水族館など見通し立たず /静岡 毎日新聞 5月8日(日)11時32分配信


 浜岡原発の運転停止要請について、県内の動物園や水族館などの大口需要者の間で供給見通しが立たないことへの戸惑いが広まっている。
 静岡市駿河区の日本平動物園は、「動物園は温度管理など昼夜を分かたず電力が必要で停電は許されない。内容がはっきりしないので、影響については何とも言えないが心配だ。代替エネルギーなどの対応策も早く示してほしい」と政府に説明を求めた。
 また、同市清水区の水族館・東海大学海洋科学博物館では、「水槽の維持などで開館、閉館にかかわらず一定の電力消費がある。閉館時に節約できるのは空調と照明くらい」といい、「今後の状況により対応を検討することになる」と話した。
(略)
【沢田均、高橋龍介】
浜岡原発停止要請: 浜松のキロルは?日本平のロッシーはどうなる?

(写真)ホッキョクグマのキロル 2011.2.27 おびひろ動物園

巨大津波の襲来の可能性ことを考えたら、浜岡原発に関し何らかの対策を打たなければならないのでしょうが、動物が犠牲になるのはやり切れません。

おびひろ動物園から浜松市動物園に3月に移動になったホッキョクグマのキロルは、すでに暑さのために汗びっしょりでぐったりとなり、一時展示中止になったと聞いています。

あの無邪気なキロルが浜松の暑さに苦しむのはかわいそうです。

記事にあるように日本平の動物もどうなるのでしょう?
豊橋や名古屋の動物園は?

私たちは狭い檻の中に動物を閉じ込め、彼らの自由を奪っています。このようなときに彼らの安全の優先順位が下がるのは許されません。

咥えて、中部地方は自動車や精密機械をはじめとする世界企業があり、震災後に世界的にサプライチェーン供給の課題が浮き彫りになりました。
あまり、災害対策にもたもたするようだと世界のサプライチェーンから日本企業が外れてしまいます。

中部電力は、防潮堤の建設に数年かかるとしているようですが、今から全力で取り掛かり、夏までに終了させるくらいのことをしたらどうでしょうか? 原発が残れば、火力発電に必要なLNGの調達もなくなり、収益の悪化も防ぐことができるでしょう?

数年なんてのんびりすぎます。



201157(土)

円高に対する正直すぎる政府高官の発言


5月5日、ゴールデンウィーク中に円高が進行し、ドル円相場が一時80円を割り込みました。

震災後の3月18日以来のことです。この日に財務省は各国連銀と円売りの協調介入を行ったことは記憶に新しいです。

今回も、80円が介入実施水準のバロメータと見られていたため、要人の発言がありました。

●野田佳彦財務相(5月5日、6日)
・(外国為替市場での円の上昇について)G7が円売りの協調介入を実施するに至った3月18日の上昇とは異なるものだ。
・為替市場と金融商品市場の動きを注意深く見守っていきたい。現時点では(為替市場を)注意深く見守る。

●与謝野経済財政相(5月6日)
・為替相場の水準は市場で決まるが、あまり乱高下しては困る。
・円独歩高というよりはドルが安くなっているとみられる。

●篠原尚之国際通貨基金(IMF)副専務理事・元財務官(5月6日)
・最近の円高は、予想よりも弱い米国の経済指標を受けたドル安を反映した動きのようだ。円高というよりも、ドル安と理解した方がいい。大震災直後の(3月の)円高とは状況が異なる。

総じて、今回の円高はドル安の結果であり、介入の対象ではないと聞こえます。

ちょっと待ってください。正直すぎませんか? 円高を容認するということなのですか?

もちろん、連休中は国内実需の取引が休みなので円高に振れやすいことはわかっています。しかし、相手にしているのは、海外投機筋です。

介入しないとわかれば、安心して円買いに走るでしょう。

ここで考えたいのは、日本人が考える「言葉」や「会話」の意味と、西洋人が持つそれらの意味合いの違いです。

日本人は、言葉を「人とつながる友好の手段」として用います。

しかし、彼らにとって言葉とは、時には「相手を納得させるための戦闘手段」なのです。ですから、彼らは議論を重んじ、相手をいかに納得(convince)させるか、いかに言葉が納得できる(persuasive)なものかが重要なのです。

これを考えると、野田大臣以下の発言はあまりに無防備すぎると思います。

米国の財務長官やFRB議長はドル安についてどのような発言をしているでしょうか?

かれらは、何も言及しません。

忘れたころに、「強いドルが米国経済のけん引力となる」などといいます。

ドル安は米国経済に良薬以外の何物でもありません。しかし、ドル安誘導となると各国の非難を浴びるために、なんの発言もしないのです。

さらに、思い出すのは3月18日の為替協調介入時の野田大臣の発言です。大臣は、介入を9時に行ったことに加え、各国中央銀行が市場オープンのときに介入するとペロリと発言しました。

市場参加者にとって、こんな親切な介入の示唆はありません。

もちろん彼らは、野田大臣の発言を信じ、その時を待って、介入が起こると同時に円を買い利益を得ました。(海外中央銀行の介入額が少額であったためでもあります。)

協調介入自体はとても効果的であったと思います。しかし、大臣の発言は正直(英語でいうナイーブ)すぎたと思います。



201157(土)

浜岡原発停止に関する菅首相の記者会見の意図とは?


ブログで、政治の話をするのは好みませんがこの話はせずにはいられません。

昨夜(5月6日)、仕事中にNHKのテロップが急きょ流れ、菅首相が静岡県の浜岡原発の要請する記者会見を行ったという。

それはそれで、その時はなるほどと思いましたが、今日になって中部電力が取締役会を開き対策を練るという。

耳を疑いました。

決定ではない事項を首相が記者会見するのでしょうか?

まだ中部電力が結論を出していないということは、首相の要請事項が覆る可能性もあるということですか?

私は首相の言葉は最後の言葉であると今まで信じてきました。
もし、この人の発言内容が結果としてころころ変わるようでは、だれの言葉を信用したらいいのでしょうか?

言葉が軽すぎます。影響をもっと考えてください。

なぜ、結論が出る前に記者会見したのですか? そのそも要請の内容が当該者や市に伝わっていなかったというではないですか?

支持率が低下しているために、パフォーマンスが必要なのでしょうか?

要請は要請として経産省も含め、中部電力をはじめ各電力会社とも十分協議をしたうえで結論を出すべきではないですか?

それから、記者会見しても遅くはありません。

そもそも菅首相は原発停止の副作用を考えているのでしょうか? たとえば、

・代替となる火力発電の可能性とコスト、環境への影響
・中部電力の経営への影響
・雇用の問題
・交付金の問題
・株主などステークホルダーへの影響

各電力会社は株式会社です。事業内容は限りなく公共事業に近いとはいえ、私企業の経営の根幹を揺るがすようなことを政治が関与してよいのでしょうか?

安全性の問題なのだから、早急に十分に対策を練るように指示するということで十分だったと思います。

首相の地位に固執したいのならば、それらしく振舞ってください。



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