旅行・小旅行(17)


2014725(金)

再度ドイツ人に助けられる


工事のため、フランクフルトからバイロイトまでの行程はお決まりのニュルンベルク経由ではなくヴュルツブルク、バンベルク経由を余儀なくされました。

ドイツの駅では最近は各ホームにエレベータが設置されているところがほとんどで昔のように、階段をせっせと重い荷物を持って上り下りする必要がなくなっています。

ところが、ヴュルツブルク駅は違いました。やっと、階段脇に自動運転の荷物用のベルトがある階段を見つけ、載せたところ自分よりも先に荷物が滑ってしまい、階段下に荷物が転落してしまいました。

ところが、一緒にくくりつけていた洋服用のハンガーかばんが見当たりません。たぶん勢いで飛ばされてしまったのでしょう。少し固まっていると、階段下で私の旅行かばんが飛んできたのを見た中年の男性が、どうした?と言ってきました。

私は事情を説明して、その男性に旅行かばんを見ていてもらい、再度ホームへと上って行き近くにいた、二人の警官にかばんを見なかったか質問しました。

次のバンベルク行きの電車は20分後に発車です。

この警官も交えいろいろ押し問答しているうちに、時間がたっていき、警官にバンベルク行きを選ぶか、荷物を選ぶかどちらにする?と質問されました。

そんなこんなで押し問答しているうちに、もう一人の警官が失われた洋服かばんを持ってきてくれ、何とか事なきを得ました。次の電車の発車の5分前でした。

はじめにいた中年男性がホームの上まで旅行かばんを持ってきてくれ、電車の中においてくださいました。

本当にすんでのところでラッキーでした。洋服かばんには一日分のイブニングドレスが入っているので失くせばそれなりに痛手でした。それよりも旅行が楽しくないですし。

私が若かりしころにもケルンでドイツ人のおじさんに助けてもらったことがあります。仕事の関係でとても疲れていて、無理な旅程を組んだので、ケルンの街中で具合が悪くなってしまったのです。

そのおじさんは近くのバーに私を連れて行き、一息つかせてくれました。病院に行ったほうがいいといわれましたが、その日のうちにミュンヘンに(これも無理な旅程ですよね)行く予定でしたので、「それではこれをもっていきなさい」と5マルク駅までのタクシー代をにぎらせてくれました。

結果的にそのまま観光もせずにケルンを後にすることになったわけですが、本当に感謝で忘れられません。

まあともかく今回のことは幸運でよかったです。けが人もいなくて本当に胸をなでおろしています。

(バンベルク発バイロイト行きREリヒテンフェルス・マインロイス間で記す)



2012910(月)

ザルツァッハ河畔を歩く


ザルツァッハ河畔を歩く

(写真)ヴッパータール動物園内の風景 2012.8.23撮影

私は、人のブログでも旅行記に関するものは一番面白くない類だと思っていて、自分でも最近は書くのをやめていました。面白くない理由は簡単でしょう。書き手にとって楽しい旅行であればあるほど、書き手の独りよがりが勝ってしまって、読み手を置いてきぼりにするからですね。ブログというのは、ある程度独りよがりのものではありますが、私はやはり読者がいることを忘れてはいけないと思っています。

今日は、私の「散歩」シリーズの一環としてお届けします。実際に、本当にぶらぶら散歩なのがお分かりになると思います。

オーストリアの西端ドイツとの国境にある、サルツブルクの街です。

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まずこの街のサルツブルクの町名はドイツ語で「塩の城」で、近くに塩山があるからでしょう。多くはザルツブルクと表記しますが、ここでは地元の人々の発音に倣って「ザ」ではなく「サ」と表記することにします。

私は10年ぶりくらいにこの街を訪れました。最後に訪れたのはイースター3月だったと記憶しています。ずっと避けてきたというのも過言ではありません。というのは、街自体の閉鎖的な雰囲気、旅行者にとっての大変な不便さ、感じ悪い訪問者のイメージが勝っていたからです。

今回訪問してみて、2番目の不便さはかなり払しょくされたように感じました。以前はとにかくホテルをとるのも大変、雨でも降ろうものならタクシーは予約も入らない、という感じでしたから。今回は計画の段階からホテルの予約も間際でも可能でしたし、その辺のインフラ整備はできたということでしょう。

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まず、駅が白づくりの全く新しい駅になりました。以前は暗い、キオスクが一件みたいなこじんまりとした駅でしたが。タクシーの運転手さんによると今年できたらしいです。また、アイスクリーム屋さんが増えていました。また、これがなかなかの美味でした。ドイツにも言える最近の傾向ではありますが、もともとヨーロッパはケーキの国で、ウン十年前はアイスはすでに溶けたようなものしか出てきませんでした。もちろん、ケーキカフェがまだまだ主流なことには間違いありませんが。私が気に入った店の隣にはピザショップもあって、イタリア系の薄い生地を焼いたものを出していました。明らかにイタリアからの観光客と見られる人がオーダーしていましたので、私も食べてみました。もちろんマルゲリータです。とても気に入りましたよ。

それから、以前は目につかなかったディスカウント系のスーパーマーケットが何軒もありました。

ベルリンなどは面白くて、ディスカウント系の別系列のスーパーマーケットが近くに林立しているのですが、同じ商品でも系列によって値段の差があるのです。もちろん日本でもありますね。私たちはスーパーのチラシを見て梯子をしますが、ドイツの人たちはそれをやっている形跡がありません。弾力性の問題かもしれません。詳細な調査をしたわけではないので、断言はできませんが、そんな印象です。

私は、水が大好きで川沿い、海沿いを歩くのが大好きです。今回の散歩は長距離ではなく、お昼から1-2時間程度です。

サルツブルクの町の観光名所で唯一まあまあ気に入っている場所が、ミラベル庭園です。以前はベンチなどに座ってゆっくりしたものですが、写真のとおり人が多いので、写真だけにしてそそくさと出てきました。ここでも相変わらず、サロンコンサートがあって当日券の看板も出ていました。

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この後、裏手のParis-Lodron通りなども歩いたのですが、これといった特徴はないので割愛します。

サルツブルクは川を境に東側が新市街、西側が旧市街で見どころは旧市街に集まっています。駅は新市街側にあります。

川沿いを歩きましょう。

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カイは岸辺程度の意味ですが、比較的広い路で犬の散歩をさせたり、自転車で走ったり、散歩できるようになっています。川の向こうにホーエンサルツブルク城がみえます。これも私の個人的な趣味でどうしても写真に収めてしまいます。

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川沿いに並ぶ家々です。

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アップはこんな感じ。庭もありますね。これが一家族のものか、アパートメントタイプかどうかはわかりません。

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山の上にもあって、なかなか良いなと思いました。

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今回私はドイツで一般家庭のお宅に宿泊しました。家の造りは似たようなものです。インターネットは3年前と同じテレコムの無線に契約しました。そしてそれの接続の悪いこと。iPhoneのほうがよほどましなのですが、通信料金がすぐ高額になるので、PCを無線につないでいました。主な用途は、仕事用の交信だったのですが、何度も断線が起きました。窓にPCを置いてみるとやや良くなるようですが、それでもだめ。
原因を突き止めるためにググってみると、どうも家の造りが原因らしいのですね。確かに、後で外(動物園!)でつなげると、これがサクサク行きます。確かに、このような家の造りだと無線はだめそうですよね。改めて思います。

橋を渡ります。

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旧市街側に来ると、ドームプラッツにでます。写真はJedermannの舞台です。Jedermannはホフマンスタールの戯曲で、毎年野外で上演されています。私も、1989年に名優Klaus Maria Brandauerの最終年ということで、立ち見で見ました。この年は、全く券が入手できなかったです。足が痛かったのをよく覚えています。

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観光案内所がある広場にある噴水です。観光用の馬車のが何台も留まっています。

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この街は作曲家モーツァルトの生まれ故郷で、若い時を過ごしたわけですが、彼はこの街が結局大嫌いで、飛び出しています。独特の息が詰まるような感じはよくわかる気がします。そして、鼻高々な中流老婦人たち。(上流の人はけっしていばったりはしませんね。二流以下の人がこんな態度をとるのです)昔よりはかなり減りましたが、まだ絶滅はしていないです。間違いなく訪問者でしょうが、なぜかこの街を訪れることを選ぶのですね。

本当は、オフの日は南チロルのBolzano(Bozen)に小旅行しようかと思っていました。しかし、前々回のブログで書いたような、電車でのトラブルがあったために、自重しました。ここへ行くには、ブレンナー峠(ヒトラーがその昔隠れていたところ)を電車で抜け、それはそれは風光明媚なところなのですけれどね。

何回もこの街を訪問していますが、それなりの発見はありましたし、歩くのはなかなか楽しかったので後悔はしていません。

本来の目的の音楽のほうはさすが、満足を通り越して本当に来てよかったと思いました。私が過去ベルリンやボストンで体験した人たちが含まれていて、懐かしさもありました。
今では曲名と演奏家を見れば、それなりに出来栄えは想像できて、まず外すことはないので自分ながら満足です。

以下は、備忘録として自分用に残しておきます。
24. August, 21:00 Uhr, Großes Festspielhaus
Daniel Barenboim – Schubert-Zyklus III
FRANZ SCHUBERT • Vier Impromptus D 899
FRANZ SCHUBERT • Klaviersonate B-Dur D 960

26. August, 21:00 Uhr, Großes Festspielhaus
JOHANNES BRAHMS • Konzert für Klavier und Orchester Nr. 2 BDur op. 83
WITOLD LUTOSŁAWSKI • Symphonie Nr. 3 (1982/83)
Sir Simon Rattle, Dirigent
Yefim Bronfman, Klavier
Berliner Philharmoniker

27. August, 20:00 Uhr, Großes Festspielhaus
LUDWIG V. BEETHOVEN • Konzert für Klavier und Orchester Nr. 4 G-Dur op. 58
ANTON BRUCKNER • Symphonie Nr. 9 d-Moll
Bernard Haitink, Dirigent
Murray Perahia, Klavier
Wiener Philharmoniker

最後に、車窓から見たドイツバイエルン州の風景。ここは本当に十勝に似ていると思います。

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小話

1. ピリカの菓子パン

もう一月以上前になりますが、東京駅のコンビニでたまたま見かけたピリカの絵が描かれた菓子パン。こんなところにも進出しているんだと驚きました。裏を見ると例によって、円山動物園が国内唯一2000年以降ホッキョクグマの繁殖に成功している云々の記載と、価格の一部が円山動物園の動物の餌代になる旨の記載がありました。

でも、もうピリカは円山動物園にはいませんし、グッズの開発元として版権があるのは理解できますが、なんか違和感があります。ましてや東京で販売すると、ピリカが札幌にいるような誤解も生じる可能性があります。

おびひろ動物園で飼育員さんに「ピリカなかなか帰れませんね」と話を向けると、「うちのホッキョクグマは”一応”ピリカなんですけど。」とか「ピリカがかえってくるのはなかなか…」といった遠慮がちな答えがかえって来ます。ピリカの所有権がおびひろ動物園にあることを意識している人はどのくらいいるのかな?とかんぐったりして。

個人的にはピリカが近い将来おびひろ動物園が無事帰園できる可能性があると思っていますが、これは競馬の勝ち馬を当てる以上の絵空事になりますので、ここでは書くのは遠慮しておきます。このような空想は物好きな人たちに任せて、ファンはゆったりと発表を待っていればいいと思っています。

2.アメリカ版マンガ経済?

最近アメリカ人に教えてもらった、動画をご紹介します。私たちであれば、「マンガ日本経済」みたいなものですね。彼らはやはり映像文化なのでしょう。これからは、コンテンツ文化になっていくでしょうが。
バーナンキ議長のそっくりさんも登場します。




2012310(土)

今冬の北海道の思い出~道東編~


今冬の北海道の思い出~道東編~

(写真)知床の海に向かう船 羅臼町にて 2012.2.5

ここからは未知の世界です。

そういえば、このシリーズも「~の思い出」などといいながら、ほとんど動物園ブログになっていました。すみません。週末という限られた時間での移動になると、選択肢が限られてしまうのです。

今回の旅の目的は、野生のワシたちに会うこと。驚かれるかもしれませんが、野生のワシを見たことがありません。北海道に行くと放牧されている牛にも驚くくらいの私です。5分以内に5-6本の往復新幹線を見ることには全く慣れているのですが。仕事も含めて今まで国内移動をおろそかにしていた私は、各地の未知の美しい風景が多すぎるのです。

出発前日に家族からカメラも借りました。

帯広を夜明け前に出発し、知床まで今回の旅をご親切にもプロデュースしてくださった方の車で移動。

トップ画像の船に乗船して、大海原へ。気温が低く体が冷えてしまうので、目的地までは船室でぬくぬくと待機。元漁師さんという船長さんの言葉遣いには少し面喰いましたが、知床の海を誇りにされていることが分かりました。旅行者の方で2度目の乗船だという人から、餌をまいてワシをおびき寄せるのだと情報を得ました。

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目的地について2時間くらい写真を撮ります。壮大な風景にまず感激です。初め警戒してか、ワシの群れは遠くの流氷の上に群れになって留まっていましたが、船を止めて餌をまいてからは、近くに寄ってきてくれました。

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皆さんカメラマンなので撮影に夢中になっておられました。カメラマンではない私には、速くて、それも向こうに飛んで行ってしまう鳥を正面にとらえることはほとんどできません。「風の向きがどうのこうの」と説明されましたが、風向きまで測る余裕は到底なく、せっかくの機会をカメラに夢中になっているのも残念なので、途中で双眼鏡に持ち替えました。

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すると、まるで映画を見ているかのよう。パノラマの風景が目の前に広がりました。背景の知床山脈がまた美しい。

あまりいい動画ではありませんが、雰囲気はわかると思いますので載せておきます。


加えて、既出の写真もありますがカメラを貸してくれた家族に唯一褒められた写真を2枚載せておきます。

オジロワシは、啼いているのでしょうか?雄叫び?

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エゾシカの群れは驚きです。寒気も覚えるような。かわいい顔はしているのですが、繁殖力が強いですね。

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ついでに雪面で見つけた鹿の足跡。日が昇れば私たちから逃れても、夜はどんな活動をしているのでしょう。

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釧路に戻って、初めて食べた勝手丼。選ぶときは慎重に選ぶのですが、食べるとどの具だったか忘れていました。

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ドライブも楽しかった。目の前に広がる風景がどれも新鮮。この冬の旅のハイライトです。こんな風に普通に飛んでいるワシはいいですね。

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これでこのシリーズはおしまいです。



201234(日)

今冬の北海道の思い出~帯広編~


今冬の北海道の思い出~帯広編~

(写真)氷祭りPRの雪像 とかち帯広空港にて 2012.2.4

札幌編)の続き

凍っていなければまあまあ歩けると気をよくした私は、街中を結構歩きました。といっても、冬に車なしでは行動範囲は非常に限られるわけですが。

でも、地元の高校生でしょうか? 集団でランニングしている姿が見られました。やっぱり、いるんですね。以前珍しく雪が降ったハンブルクでアルスター湖の周りを一人ランニングをしている人がいて驚きましたが。

夏の時期も何度も来ましたが、400メートルベンチを撮ったのは初めてのような気がします。

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冬の北海道もいいですね。もちろん単なる訪問者なので、雪かきの必要もなく、他人事なのですが。一年を通してベストシーズンはいつなのでしょうか?ドイツはシューマンの歌曲(Im Wunderschönen Monat Mai)にもあるように、5月です。
新緑の季節が始まるということですね。

この日は、氷祭りの一週間前(1月22日)でした。実は、この日を旅行日にしたのは大失敗でした。大相撲放送が見れないので。出発前に把瑠都の優勝を見届けて北海道に来れたのは不幸中の幸いでした。

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把瑠都と臥牙丸、欧州出身のこの両力士を別々の理由で応援しています。これは、また機会があれば書くことにしましょう。

氷祭りの雪像も見本があるのですね。アニメのキャラクターでしょうか?あ、すみません。いけない写真だったかな?

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何の木かわかりませんが、芽らしきものが。

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緑ヶ丘公園はいろいろな季節を歩いてきましたが、今回はお散歩途中というご婦人とお話をしました。食べ過ぎたので運動、と冗談をおっしゃっていましたが、私たち関東の人間は雪があると必然性がない限りこもりがちになりますが、活動されているところがいいですね。

動物園に着きましたが、まだ開園時間まで時間がありました。

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外から丸見えのタツオ君。道路側を往復運動していました。

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イコちゃん。
私があいさつしに行くと、ドドッドドッと白い巨体を走らせて寄ってきてくれました。卒倒するくらいうれしかった。

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腹ペコだったのね。「おなかと背中がくっつくぞ」って感じ?
君は餌の時間までは、すごく動きがよくていろいろ反応するけど、おなかがいっぱいになると歩くことが多いのね。

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それでも、やっぱりすぐ君を落胆させてしまうのね。手を振ったりするのだけれど、どうしても期待に副えない。カメラを向けようものなら動物は、落胆して横を向くか、離れていきます。この時は、カメラを向ける暇もなかったですが。

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担当の2さんと最近のイコロについてお話をしました。2さんは、やっぱりクマが怖いみたいですね。時々かわいいと思われるみたいですが、やっぱり怖いと。「遊ぼうよ」といっているのではないですか?と話を向けると、「それどころではありません」とおっしゃっていました。

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私の中で、この一年イコロの株が相当上がりました。この夏の訪問くらいから、イコロのかわいさが群を抜いていて、距離的にはキロルのほうが訪問しやすいのですが、イコロを見た日のほうが多いです。

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キロルは移動があったせいか、新しい環境に慣れるのに時間がかかり、その魅力を発揮できなかった気がします。昨年末からかなり変わりましたが。素晴らしいベテラン飼育員さんが担当なのですがね。
それにしても、イコちゃん、大きくなったね。天井の餌ももうくの字になって取るのね。君はいまだにビビりで外のことを気にしいだけど、妹が来てもうそこからは外の様子が見えなくなったね。

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ナナさん。象とライオンはさすがに寒そうで、冬季期間は無理に外に出さなくても、といたく同情しました。

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ヤギさん。この子たちも寄ってきてくれます。ぴっくーも。でもやはり落胆させてしまうのですが。

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モルモットのだっこも体験しました。飼育員さんとの会話が楽しかったけど、モルモットに思いきりウンをされてしまいました。

駅に戻って幸福駅。新聞にもPRが載っていたので、写真だけパチリ。

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(続く)



2012228(火)

今冬の北海道の思い出~キロルの名前編~


今冬の北海道の思い出~キロルの名前編~

(写真)イコロとキロル おびひろ動物園 2011.2.26

ホッキョクグマのイコキロが命名された時以来気になることがありました。

両方ともアイヌ語で、

イコロは「宝物、宝刀」の意味。
キロルは「人が踏み固めた道」の意味。(円山動物園による)

イコロに関しては、地元図書館のアイヌ語辞典を参照しても自明なのですが、キロルはなかなか見つからず。

Kiroruのruが「道」に該当することはわかりました。

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それでは、Kiroは?この短い語に「人が踏み固めた」という日本語では、数々の単語をつなぎ合わせなければ表現できないような意味を含むのか?

そうだとしたら、「道」はアイヌの人たちには一般日本人よりもことさら重要な概念だということでしょう。よく言語ではある重要概念を詳細に表現するうえで、形容詞などのつなぎ合わせではなく単語そのものを作ってしまうことがあります。

さて、キロですが、アイヌ語で、kirorは「力」という単語があります。いくら、キロルが力任せの子だとはいえ、これではないようです。

次に考えたのは、Kiroの分解でした。

ki+ro?(キ+ロ)
k+iro?(ク+イロ)
kir+o?(キル+オ)

これらも、図書館で見ても見つからず。というわけで、私の北海道旅行の宿題となりました。

帯広百年記念館へ行けば、わかるだろうということで訪ねます。おびひろ動物園の閉園後に訪問すればちょうどいい時間です。

何冊か資料を広げてみて、ありました。例文も載っています。

Kiroru キロル:「足・そこにつく・道」「立派な道」(アイヌ語辞典)田村すず子

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Kiroru 船着場、道、表の道、幅広の道; 水際、人の通る良い道; 人間が踏み堅めた広い路; 立派な道 (サハリンアイヌ語辞典 大塚他編)

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キロルという単語が存在するのですね。それもこんな含蓄のある意味で。命名者さんに感心するとともに、いい名前でよかったね、と思いました。

これで、私の懸案も一件落着です。



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