2008121(月)

鳥になりたかった、あの子


日曜の深夜、既に眠りに就いている十勝の皆さんが多いと思います。

これから書く話は、つい先日実際に起きた事を、私と言う人間を通して此処に書き、きっと何かの役に立つかもしれないと希望を持ってお伝えしたい事です。

まず断っておきますが、18歳以下の少年少女はまだ読むには早いと思いますので、なるべく読まないように。

マイ日記に書こうと思ったのですが、それでは読んでいただける方が少ないので、普通の日記で書かせていただくことをご了承下さい。

少し長くなるかもしれません。携帯で読む方はご容赦願います。




師走も押し迫った12月中旬、mixiで一通のメッセージが私に届きました。

それは私のマイミク(相互に登録しているお気に入りの方)である、由紀奈からのものでした。短い文面で、

「最近、日記をお書きになりませんね」

ただこれだけのものでしたが、意外な人物からのメッセージに少し驚きました。

彼女は僕の古くからの親しい友人の、その彼の友人で、mixiでの彼とのやり取りを横で読んでいる内に、私にも興味を持ったようでした。

「最近mixiでは書いてないんですよ。忙しいのが終ったら、また書こうと思います」

若い女性からのメッセージでしたが、友人の彼から彼女の事は聞いていたので、手短にしつこくない程度の返事を送ったのでした。

由紀奈と彼は、都会で最近増えている「ルームシェア」と言う、少し広いマンションやアパートを部屋貸しする、まるで外国映画のような生活で知り合った二人でした。

由紀奈はmixiの中で、自己紹介として「昼はOL、夜はお水の生活。先日までは銀座で知り合ったお客との愛人家業」と書かれていました。

後に電話で話した時に、それらは全て本当だと聞かされたのですが、その時はmixiによくある偽装履歴と思っていました。

それから彼女の書くたわいもない日記に、時折コメントを入れる関係になって間もなく、12月30日にメッセージが届いたのです。

「相談したい事があります」

どんな話なのか、不思議な気分でメッセージを読むと、

「こんばんは。

超個人的な相談をしたいと思います。
イヤだとは言わないで

これは、OOさん(彼)には黙っていて欲しいのですが、
ルームシェア生活5ヶ月にして、とうとう一線を越えてしまいました
彼って、どんな人?
紹介文に書いてあるように、浮気者なのかしら。

ていうのは、今日、彼の女友達が、電車がなくなった、って言ってウチに泊まっているのですよ。
彼の部屋でね。
まあ、可愛いわけでもない女の子(失礼!!)なんだけど、とてもいい子でさぁ。
なんだか複雑な心境ですよ
もう、どういうつもりで女友達を泊めるのか・・・
まあ、私もちょっと前までは男を連れ込んでいたので、人のことが言える義理じゃないですが、基本、自分勝手な人間なので、気になりますよ。」


読んで少し笑ってしまうような、僕からみれば事情も分からぬまま微笑ましいくらいの相談でした。

その時は私も、軽い気持で、

12月31日 「おはよう、お嬢さん」


「夜中のうちに布団の中で携帯から読んでいたのですが、どうお話しようか考えていました。


 彼って、どんな人?って思いながら一線越えちゃだめじゃん


ミクシの紹介文はあてになりませんが、浮気者とも思えません。

第一、浮気するほどもてるでしょうか?

それは少し言いすぎかもしれないね。


どういう経緯でルームシェアに参加されたか知らないので、二人の関係がもう一つ不明なのですが、5ヶ月経ってから親密になったって事は、それなりに慎重に人物考察していたって事でしょ?

そう考えれば、一夜の出来心って訳でもないでしょうし、由紀奈さんの事が好きなのだと思います。

これから二人の関係深めていくつもりなら、それぞれが仕事をしっかりされて、一緒に過ごす時間もたくさん持って、お互いの事を良く知る事が大事じゃないのかな?

まず、付き合ってる人が重ならないようにきちんと整理するとか、異性は泊めてあげないとか、世の中の常識が守られなきゃ進展は無いと思うのだけど。

それから先は二人の人生の問題です。

今の状態で二人が一緒に住んじゃうと、もう一人の方が気を使って出てっちゃ困るでしょ、家賃の問題あるし

だから上手に振舞った方がいいでしょうね。

彼は由紀奈さんと違ってアルバイト生活です。親の援助も受けずちゃんと独立していますが、正社員ではありません。そう言う事も彼にとって女性とお付き合いする上でいろいろ考える要素になっていると思います。

年齢的にそろそろ転機を迎える事は彼も気付いています。
OOに両親もいますからね。
これはお願いなのですが、彼といろいろ話し合える友達になってあげて下さい。彼だって、あなたの事を同じように考えているかもしれませんよ、どう思っているかって。

これまで通りの二人でいるのか、そうでない事を望んでいるのか、少しずつ話してみてください。」


大晦日にまさか恋の相談を受けるとは思っていなかった私でした。

程なく返事が届き、

「有り難うございます。

そうですね、気持ちをはっきりさせることが一番今は必要だと思います。
私自身も、自分の気持ちが分かっていないし・・・

それにしても、仲が良いのですね。
彼も、とても慕っているようですよ。」


私からすれば、いきさつはともかく、若いんだからこういう恋もあって良いくらいに思っていました。

その後は、携帯のメアドを教えあっていたこともあり、

「今、彼とファミレスにいます」とか、

「彼と初詣に行くんですよ」

「初詣の帰りに二人で渋谷に映画を観に行きました」

楽しそうなメールが届いては、少しからかう様な滑稽なことも交えて返事を返していたのですが。


そうしているうちに、状況が一変してしまったようです。

「彼に自分の気持を伝えました。 

そして彼の気持を聞きました。

彼はほかにづっと好きだった女性がいると言っていました。

私は彼にコケにされたようで、とても腹が立っています。

もう口もききたくありません」

携帯に届いたメールには、こんな事が書かれていたんです。


私はお節介かとも思ったのですが、電話で彼女と話をしました。

彼との事については、事情も分からぬままに必要もないのに謝ったり。

そして彼女のことをいろいろ聞かせてもらったのです。


北海道の函館を皮切りに道内を転々とした事、そしてアメリカの大学へ進み、帰って来てからは、転職を繰り返しながら希望するマスコミ関係の会社にようやく入社できた事。

その間に、生活費を稼ぐ為、水商売へ。銀座のホステス時代に愛人生活へ。

彼女の書く愛人話は本当のことだったと知らされました。

親とは絶縁状態で、弟さんは社会に適合できない精神病になっているとか、

ルームシェアは、その時付き合っていた愛人から逃げる為に転がり込んできた手段だった事なども聞かされました。

英語が堪能でも、なかなかそれだけでは就職できないのが東京だとも。

「とにかく彼と顔を合わせたくないので、早く引越ししたいのだけれど、お金がないんです」

そんな話で、その夜は終ったように憶えています。

同じような内容の簡単なやり取りがあったあと、

1月14日、彼女から届いたメール

「…、

これは言いたくないのですが、私は来週からデリヘルでバイトします。
実は多額の借金を抱えているため、もう首が回らないんです。
加えて引越しもしなきゃならなくなってしまって。
引越し費用なんて、一円もありません。
自己破産は会社にバレるので、絶対にできないので、死ぬか、風俗しか選択肢がないんです。
風俗は先日、面接に行って採用されました。
あとは死ななければ、人として外れた道を行くことになります。
先が真っ暗、というか、先があるかどうかさえ分からない私の人生、楽しみにしていて下さい。」


私は驚いて、彼女に電話しました。

まだ仕事中なのか、水商売のキャバクラにいるのか、電話はつながりませんでした。

夜遅くに、彼女から電話が。

私は、とにかく彼女に風俗なんか行っちゃいけないと説得するのが精一杯で、届いたメールの中に書かれていた大切な一言に気付かずにいました。

サラ金の借金は司法書士がきれいにしてくれるから、とか、カードの支払いは破産しなくても整理できるから、とか、とにかく彼女を説得しようと必至に話しましたが、彼女の何となく眠そうな話し方になんともラチがあきません。

「お父さんお母さんに相談してみたらどう?」

「父とも母とも、弟の事があって、経済的には絶対頼れないんです…。」

この一点張りでした。

私はとにかく、400万位の金で、自分を捨てるなんてやめとけ、若いんだから何とでもなるし…、そう繰り返すのですが、

OLをしている会社は、出張関係の経費を個人でカード立替させているので、絶対カードは止められないとか、やっと就職できたマスコミ関係なのでどうしてもやめたくない、そんな話が彼女の口から出てきます。

話し疲れたのか、

「ごめんなさい、今(睡)眠剤飲んでるので、ぼーっとしてるんです。明日は5時起きなので…」

それで電話を切ってしまいました。

確かに世の中には、風俗なんてものがあって、私も含めて男はそう言う場所を好むし、それはそれで職業としてあるのかもしれないけれど、身近な女性がそこに行くと言われれば、止めたくなるのが人情です。


「明日から行きます」

そう言われた事が気になっていましたが、私にはどうする事も出来ないのが事実です。


1月17日、朝5時に彼からメールが届いていました。

何か彼女と決定的に揉めたのか?そう思いながら朝になってから電話をしたのですが…、

「ちょっと重い話がありまして…」

少し間をおいてから、

「昨日、由紀奈さんが、ビルから飛び降りました…」


互いに深呼吸をしたように呼吸の漏れる音が受話器を通して聞こえてきます。

「前の晩にも、二人で話をしていて、コンビニに行くからと出て行ったのですが、カバンを持って出て行ったのでおかしいと思い、部屋を見ると遺書があったので、慌てて警察に電話して、ビルの屋上に居るのを見つけて連れ帰ったんです。

僕も仕事があるので、朝には出て行ったのですが、夕方メールが入っていたので、『今から帰るから、そこに居てね』と返事を返したのですが、帰る途中で警察から電話があって、由紀奈さんらしい女性が道路に倒れていると…」


「彼女、眠剤を大量に飲んでいたようなんです…、前の日も飲んでもうろうとしていたのを見つけたし、掛かりつけの精神科でもらう薬を少しずつ貯めていたようなんですよ…、今はたくさん飲んでもそれだけでは死なないようになってるみたいですからね…」


「ご両親は北海道だし、雪ですぐには来れないと言ってらっしゃいました。」

彼も私も、彼女が本当に死にたいと思っていたとは気付かなかったのです。

私は、彼女が借金を苦に死を選んだとは思いたくないのだけれど、子供の頃、夢を持つにはあまりに寂しい田舎町を飛び出して、一人東京で暮らす寂しさなのか、鬱の治療を受けていたようです。

ふと帰ろうにも、北海道は富山ほど近くはありません。

彼女が何かに負けて、自らの命を絶ったとは思いたくないのだけれど、

どうして気付かなかったのだろうと、後悔はあります。

わずかなお金がもとで、命を絶つ人が多いと聞きます。

馴染めない人間関係に、悩んで鬱になる人も多い。

避けられない運命や、否応なしに振り回される生活に、我を忘れてしまう不幸もあります。


彼女がどんな思いで空に飛んだのかは、今は知る由もないのだけれど、

彼女を悩ませていた何かから、飛び去る事が出来たのだろうか。


もしも、この話を読んで、あなたが死を考えていたり、悩める知人や友人がいたとしたら、面倒がらずに、声を掛けてあげて下さい。

借金を肩代わりとか、お節介と思えるような関わりを持つだけが救いではないと思うのです。

一人にしない、一人にならない、

それがどんなに大切な事か、改めて思い知らされました。






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maikyon
私は富山県在住で、知人が帯広に居り、とても親しみを持ってこれまで拝見させていただいておりました。富山の話なども織り交ぜながら、楽しく十勝とお付き合いさせていただこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。
年に2~3度、十勝の空気を吸い、十勝サーキットを走り、防風林のある景色を眺めるのがライフワークです。

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