2010年9月14日(火)
エキノコックスの話 2/3
獣医×29
続き
黒線:H9.10.4感染が発覚した日
黄色四角:感染の可能性時期
水色線:投薬を開始
赤☆、四角:急性経過個体
緑☆、四角:慢性経過個体
いつ感染したか?
この13頭の生存期間の重なりと赤色の急性経過個体を考えるとほぼ同じ時期に感染したと考えるのが妥当かと思います
だから、1994(H6)年末から1996(H8)年初め頃が疑われます
何らかの原因でエサか水がキツネの糞(?)で汚染されたのでしょう
急性経過個体は'98.11~'99.4の間に5頭が死亡
投薬を初めて1年以内です
薬が効く間もなく亡くなったようです
4~12才のサルたちです
その他のサルは4年以上生存し
10~23才で死亡です
このサルたちは薬の効果があったのかなと考えています
No.44については今でも元気に生きています
’99に死亡したNo.37の解剖写真です
右側肝臓に大きな腫瘤が見えます
また、腹膜に白い球体がたくさん見えます
今年4月に死んだNo.44の3DCTです
胸腔から腹腔にかけて病変が見えます
大きな腫瘤が一つと小さな腫瘤がたくさん見えます
多包虫症というように
肝臓を中心に感染し多包を形成します
No.65では大きな腫瘤が数個あるだけ
No.37ではたくさん
No.33でもたくさん
急性で死亡したからと言って多包が多いわけではありませんでした
また、大きさもあまり関係なさそうです
病変を拡大してみると
シストの外層には好酸性(赤色)に染まる多包虫症特有のクチクラ層が観察されます
その内側には寄生虫由来の胚芽層が観察されます
その内側に繁殖胞、そしてその内側に原頭節が観察されます
生体側は多核巨細胞など免疫反応が認められました
急性に死亡した個体に原頭節が確認できることがありました
キラキラと見えるクチクラ層があるとエキノコックス症と確定されるようです
ネズミや人間にも当然出来ます
胚芽層の核の大きさが外側のサルの細胞核と比べると小さいのが分かりますか?
原頭節(虫体)は繁殖胞の中で成長します
ここでは一つしか見えませんが普通は複数あります
ネズミになると一つの繁殖胞の中に多数の原頭節があります
さらに繁殖胞もシストの中に多数出来て外から見ると部屋がたくさんあるように見えます
ネズミではネズミがエキノコックスを攻撃するような生体反応(免疫反応)をほとんど確認することが出来ません
ニホンザルは多核巨細胞や免疫細胞を反応させエキノコックスと戦っています
今年まで生き残っていた2頭についてもう少し検査をしてみました
左の超音波写真
赤矢印のように石灰化病変が確認できましたがその他はよく分かりませんでした
ここに造影剤を入れると虫食い状にエキノコックスの活動病変を見ることが出来ました
まだ、エキノコックスをやっつけることが出来ていません
これはヒトの所見にとても似ています
2年が経過しその病変が石灰化し終息に向かっていることが分かりました
上のX線写真
X線で確認できる病変はありませんでした
下の左の写真
1998(H10)年の超音波では肝臓に51.7~75x34.3~50.9mmの病変がありましたが
2008(H20)年のCTでは病変の痕跡が確認できるのみでした
2010(H22)年の超音波でも病変を確認できませんでした
つづく・・・
エキノコックスといえば、人間もかかる病気です。しかし、このサルから人間にかかることはありませんのでご安心下さい。
おびひろ動物園では対策を実施し現在まで新たな多包虫症の発生がありません
また、通常の衛生管理(手指洗浄など)を行えば感染することはほとんどありません
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黒線:H9.10.4感染が発覚した日
黄色四角:感染の可能性時期
水色線:投薬を開始
赤☆、四角:急性経過個体
緑☆、四角:慢性経過個体
いつ感染したか?
この13頭の生存期間の重なりと赤色の急性経過個体を考えるとほぼ同じ時期に感染したと考えるのが妥当かと思います
だから、1994(H6)年末から1996(H8)年初め頃が疑われます
何らかの原因でエサか水がキツネの糞(?)で汚染されたのでしょう
急性経過個体は'98.11~'99.4の間に5頭が死亡
投薬を初めて1年以内です
薬が効く間もなく亡くなったようです
4~12才のサルたちです
その他のサルは4年以上生存し
10~23才で死亡です
このサルたちは薬の効果があったのかなと考えています
No.44については今でも元気に生きています
’99に死亡したNo.37の解剖写真です
右側肝臓に大きな腫瘤が見えます
また、腹膜に白い球体がたくさん見えます
今年4月に死んだNo.44の3DCTです
胸腔から腹腔にかけて病変が見えます
大きな腫瘤が一つと小さな腫瘤がたくさん見えます
多包虫症というように
肝臓を中心に感染し多包を形成します
No.65では大きな腫瘤が数個あるだけ
No.37ではたくさん
No.33でもたくさん
急性で死亡したからと言って多包が多いわけではありませんでした
また、大きさもあまり関係なさそうです
病変を拡大してみると
シストの外層には好酸性(赤色)に染まる多包虫症特有のクチクラ層が観察されます
その内側には寄生虫由来の胚芽層が観察されます
その内側に繁殖胞、そしてその内側に原頭節が観察されます
生体側は多核巨細胞など免疫反応が認められました
急性に死亡した個体に原頭節が確認できることがありました
キラキラと見えるクチクラ層があるとエキノコックス症と確定されるようです
ネズミや人間にも当然出来ます
胚芽層の核の大きさが外側のサルの細胞核と比べると小さいのが分かりますか?
原頭節(虫体)は繁殖胞の中で成長します
ここでは一つしか見えませんが普通は複数あります
ネズミになると一つの繁殖胞の中に多数の原頭節があります
さらに繁殖胞もシストの中に多数出来て外から見ると部屋がたくさんあるように見えます
ネズミではネズミがエキノコックスを攻撃するような生体反応(免疫反応)をほとんど確認することが出来ません
ニホンザルは多核巨細胞や免疫細胞を反応させエキノコックスと戦っています
今年まで生き残っていた2頭についてもう少し検査をしてみました
左の超音波写真
赤矢印のように石灰化病変が確認できましたがその他はよく分かりませんでした
ここに造影剤を入れると虫食い状にエキノコックスの活動病変を見ることが出来ました
まだ、エキノコックスをやっつけることが出来ていません
これはヒトの所見にとても似ています
2年が経過しその病変が石灰化し終息に向かっていることが分かりました
上のX線写真
X線で確認できる病変はありませんでした
下の左の写真
1998(H10)年の超音波では肝臓に51.7~75x34.3~50.9mmの病変がありましたが
2008(H20)年のCTでは病変の痕跡が確認できるのみでした
2010(H22)年の超音波でも病変を確認できませんでした
つづく・・・
エキノコックスといえば、人間もかかる病気です。しかし、このサルから人間にかかることはありませんのでご安心下さい。
おびひろ動物園では対策を実施し現在まで新たな多包虫症の発生がありません
また、通常の衛生管理(手指洗浄など)を行えば感染することはほとんどありません
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