201546(月)

アザラシの出産への思い


アザラシの出産への思い

雨模様の帯広からおはようございます。
飼育展示係7です。
夏期開園まであと3週間ばかり。


自分の区切りの兼ねて改めてご報告いたします。


おびひろ動物園でのゴマフアザラシの出産はオスのカイ君が生まれて以降ありませんでした。

なんとかしてアザラシの出産を成功させたい!
実はそんな思いでアザラシの担当になり、飼育改善に努めてきました。

メスのモモちゃんは帯広に来園して今回で5回目の出産ですが、残念ながら今まで無事に生まれ育ったことがありません。
多くが、早産・死産でした。

この2年間、縁がありゴマフアザアラシの繁殖について勉強する機会に恵まれた中で、この種が飼育下において正常な出産と育成が難しいことはわかっていました。
国内で飼育されているゴマフアザラシは、ご多分に漏れず、高齢化が進んでいると言われており、いずれ飼育下のゴマフアザラシはいなくなる可能性も…という状況。

とはいえ、難しいから繁殖できなくてもよしではないと思い、繁殖に成功している園館、大学の恩師、知り合いの飼育職員など手当たり次第に情報を入手しました。

その中でいくつか原因と思い当たるものが見つかり、その原因を一つ一つ潰していく作業となりました。

しかし、原因によってはお金のかかるものもあり、思うように進められなかったことも事実です。

冬の間もプールに循環ポンプを設置し、多くの職員に助けられながら水を入れ続けたのは、もちろん展示効果もありますが、最優先事項はモモちゃんのお腹への負担を軽くすること。そして、妊娠後期の運動不足解消のためでした。

もちろん、野生のゴマフアザラシの暮らしを考えれば、妊娠したメス以外にもこうした環境整備は必要だったわけで、オスのカイ君にも良い効果をもたらしました。

昨シーズン、今シーズンと手探りで繁殖に向けた飼育管理を行ってきたわけですが、無事に産まれてきたところまでを考えると、今シーズンの妊娠期の管理はある意味成功に近づけたのかなと思っています。

しかし、ここから先がやはり難しかった。

次に訪れるのは出産です。
とにかく、私自身、正常出産に立ち会ったことがなく、出産の兆候がどのように現れるのかがわからず、過去のモモの出産傾向と他園館からの情報を元にいくつかの兆候を観察ポイントとし、代番の職員にも確認をお願いしていました。

結果として、出産のタイミングを把握することができませんでした。

振返ってみると、兆候として観察していたポイントについて、私自身も体験・経験したことがない点を判断ポイントとしていたこと。
聞いた情報、調べた情報の中で、この行動はこういう風に出現する。と思い込んでいたと思います。

結果論ですが、前回・今回の経験を踏まえ、出産兆候の判断ポイントは自分なりに固まりました。

ただ、
出産時のトラブルも多いと言われている種ですが、モモちゃんは無事に出産していました。
今回は、早朝の夜警さんの見回り後に出産したため、出産の現場に立ち会った職員はいませんでした。

死亡後の解剖所見では、初乳を飲んでいたことも確認されました。
人工哺育になることも考えミルクなども用意していましたが、過去死産した時のモモちゃんの様子から、育児放棄はしないだろうなと思ってはいませんでしたが、やはり無事に産むことができればちゃんと子育てできるお母さんなのだと思います。


その後、新生個体は何らかの理由でプールに入ったものと思われます。

ここからは私の後悔です。

新生個体の死亡原因の多くが溺れることです。
泳ぐことができなくて、ではなく、陸に上がることができなくて溺れてしまうのです。
とはいえ、早い個体であれば産まれた日には泳ぎだすこともあるようで、この対策に思慮していました。

「出産兆候が出たらプールの水を抜こう。」

先ほど難しいと言っていた出産兆候を把握できなかったことがここで影響しました。

そして、初めて新生個体が泳ぐときには、プールから上がりやすくなるように、プールの水を満水にためられるようにする方法をじぃーじさんに相談して考えていました。

どちらかの対策を早々にとっていれば、と今は後悔ばかりです。

結果は、新生個体は何らかの理由(モモを追って行ったのかもしれません)でプールに入ってしまい、疲れたあともステージに上がることができずに力尽きてしまいました。

職員がアザラシの出産を確認したのは出勤後、既に新生個体はプールにいる状態でした。
写真の様子です。
確認後、すぐにプールの排水を行いましたが、間に合いませんでした。

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産まれた仔はメスで、体重が7.6kg
やや小さめですが、五体満足な仔でした。

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力不足を感じました。
力不足ゆえ、助かるはずの命をなくしてしまいました。
連日モモちゃんに頭を下げるばかりです。



しかし、いつまでもクヨクヨしていられません。
今回産まれてきた仔の命を無駄にしないためにも、確実に次につなげて行かなければなりません。
問題と課題に向き合いました。
来年度の出産シーズンに向けてすべきことも洗い出しました。


そして、
約1ヶ月、モモの出産を最優先とすべく、隔離されていたカイ君を一昨日外に出しました。
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突然外に出たので、1ヶ月暮らした室内がまだまだ気になるようです。

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モモちゃんともご対面を果たしました。

ゴマフアザラシは出産時期と繁殖期がほぼ同時期にある動物です。
出産した場合、約1ヶ月で発情を迎えるため、いつまでも隔離しておくと交尾のタイミングを逃してしまいます。
とはいえ、出産直後に同居させるのはモモちゃんに負担が大きいため、モモちゃんが心身ともに回復してきた頃を見計らっての同居となりました。

カイ君にも負担をかけていましたが、今は2頭とも普段通りの生活が戻ってきたようです。

間もなく発情を迎えることと思います。
交尾が確認されれば、来年こそはと思っています。

責任を再認識し、気持ち新たに彼らと向かい合って行きたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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