昔の本の整理を続けている。冠 松次郎著「黒部渓谷」は影響を受けた山岳書の一つだ。半世紀前に初めて読んだ経緯はよく覚えていないが H先生かK先輩のおススメだったと思う。
昭和42年(1967年)朋文堂新社の出版。
下の廊下にある十字峡の部分に傍線が引いてあるので 当時はよほど気に入ったのだろう。断層が直交すれば不思議でもなく十字峡になるのだが。
また「鉛筆書きの栞」が挟んであったのは驚いた。描いた記憶はないが この下手な鉛筆画は当時の自分のものだろう。
最近入手した覆刻版の山岳書のシリーズの中に 同名の「黒部峡谷」があるのを発見した。
これは昭和3年(1928年)アルス社の初版本の覆刻になる。目次を見ると私が読んだものとは微妙に違う。ということはこれは旧版で 私が読んだのは新版ということになる。
旧版の折り込み地図(下の廊下)を見ると 黒部川は北アルプスで並行して走る立山~剣岳と鹿島槍~白馬の間にある渓谷であることがわかる。ただ旧字体で右から左の配列は非常に読みずらい。
旧版には要所に写真が含まれているがイマイチ明瞭ではない。一方 新版を読んだ頃には垂直の岸壁を穿って通した道とか十字峡とかがすごいと思い 昭和47年(1972年)の夏にパーティーを組んで下の廊下から登って剣岳~立山のルートを通る計画を立てた。まあ一部はカットして何とか目的は達成したが 今からするとよくまああんなことを平気でやったもんだと思う。危機管理と責任の所在が希薄だったと思う。
よく「古き良き時代を思い出す」と言うが 私の場合は「後悔ばかりでちっともハッピーではない」。後ろは振り返らず今後を考えたいところだ。