2008911(木)

こうふくあかの/こうふくみどりの

読む×33

読書の秋ですねー。
みなさん最近はどんな「本」読んでいますか?

私は週に2,3冊ペースでコンスタントにいろいろ読んでます。その中でなかなか面白かった2冊を紹介しますね。
こうふくあかの/こうふくみどりの

西加奈子 著

「こうふくあかの」「こうふくみどりの」外部リンク

この表紙、インパクトありますよねー。
シンプルだけど力強い、手にとってみたくなった2冊

表紙だけみると村上春樹著「ノルウェイの森」想い出しませんか?夢中になって読んだのは何年前?ww

「こうふく あかの」
女は穴である。笑いながら、泣きながら、求めながら、受入ながら、あきらめながら、焦がれながら、生きているー。
39歳、男は妻から妊娠を告げられた。それがすべての始まりだった・・・。

「こうふくの みどりの」
おばあちゃん、夫(おじいちゃん)失踪中。お母さん、妻子ある男性を愛し、緑を出産。辰巳緑、14歳、女未満。初恋まであともう少し・・・。
緑が語る物語と、棟田さんという謎の中年女性が語る物語。


それぞれ、まったく別のお話として完結していますが、どこかで繋がっている2冊です。

それぞれの物語に、2人の語り手が登場して、それぞれ二つのお話が同時に進行していきます。
最初は、なんの繋がりもないようなお話しが全部読み終わるとどこかここかで繋がっていて・・・

最近、この手法の小説、増えてきているかもしれませんね。
ちょっと前だと劇団ひとり著「陰日向に咲く」
先日読んだ「JOY」というロックスターを取り巻く女性の話もそうでした。

「こうふくあかの」
貞淑だと思っていた妻がある日突然、自分の子ではない子供を妊娠するお話。男性が読んだらちょっと怖いお話しかもしれませんね。

それと30年後のプロレスラーの話しが同時進行していきます。

作者は「赤」に産道、花道、血塗られた道etc、いろんな「道」のイメージを象徴させています。

不思議な浮世離れしているような感覚と実に現実的なリアルな描写が交錯してどんどんひきこまれて読めました。

「こうふくみどりの」
こちらは14歳の「緑」ちゃんを主人公にしたお話。
全編大阪弁で書かれた文章は、とってもテンポがあって、ユーモアに溢れていて、違和感なくさくさく読めました。

途中に何気なく入ってくる主人公が目にする言葉
例えばATMの「そのまま前にお進みください」
学校に貼られた「始まりはいつもあいさつから」
なんて言葉達が実に効果的に使われています。

「緑」ちゃんの家は、だらしなくぬるい家だけど、どこか温かくてみんなに愛されていて・・・
もうひとつの「棟田」さんが語るお話はとっても切ないんですが、最後には心が温かくなるような。

生まれた場所も時代もばらばらだけど、人間はたとえば見慣れた場所だったり、たとえば夢中になって見ていたTVだったり、何かを通して繋がっている。

この「本」も、そんな無数の繋がりの中で、泣いたり笑ったりして生きている・・・そんなあらゆる「繋がり」がそれぞれの「こうふく」な日常だったらいいなぁ・・・という願いがこめられた作品だと思います。


どちらもとっても斬新で、一気に読めました。
何か不思議な余韻が残る、面白い小説。

西加奈子さんという作家の非凡な才能に感動。
彼女の書いた他の小説ももっと読んでみたいと思いました。

みなさんもおすすめの1冊(1冊じゃなくても)がありましたら、ぜひ教えてくださいね。












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