観る(46)


2010123(金)

映画「悪人」誰が本当の悪人なのか?魂に突きつけられる重い宿題

観る×46

映画「悪人」誰が本当の悪人なのか?魂に突きつけられる重い宿題

映画「悪人」外部リンク

ずっと気になっていたんですが、とどこさんのレビューを見て、どうしても行きたくなり、なんとか時間を見つけて行って来ました。

誰が本当の「悪人」なのか

見た人それぞれが決める映画です。

スクリーンに妻夫木君はいませんでした。
そこにいるのは清水祐一

彼のインタビューを見たのですが、今までの役作りとは180度違っていたそうで。普段は役を作っていく足し算作業なんだけど、今回は、引き算の作業だったと。
それくらい役の中に「妻夫木聡」はいらなかった。自分をどこまで無くしていくか、その無の状態からこの役になりきっていました。

あるトラウマをもった幼少期、日々たまっていくなんともいえない徒労感を、鬱屈したはけ口を見つけることができないまま、ただ死んだように生きている青年を見事に表現していました。

深津絵里さん演じる馬込光代、地味で冴えない、本当の恋愛もしたことのないような、生まれてこの方、故郷の国道を往復しているだけの人生

そんな彼女と「出会い系」を通じて知り合います。

たとえ「出会い系」でも、最初に逢ったのが光代だったら・・・


人は時に自分を守るため人を傷つけます

自分の存在を確かめるため、相手を卑下したり、必要以上に自分を貶めたり

人と比べて、自分はまだマシだって思わないと立っていられないときがある

誰かを貶めることでようやく自分の存在価値を見出せる


でも、それじゃ悲しいです。
言うまでもなく「殺人」は罪です。


それは祐一自信も痛いほどわかっている。

光代に出逢った事で、その自分の罪、誰かのせいにしてみないようにしていたふたを開けられる恐怖感、焦燥感が痛いほど伝わってきました。

いくら身体を重ねても心の深い部分までは埋められない。

どしゃぶりの心の中で、すっと傘を差し出してくれたのが光代、だけど、遅かった。その愛を受け入れるには。うっすらと差し込んできた光さえ、祐一にはまぶしくって痛かった。


人間が人間らしくいるために必要なこと


誰かに愛されていること、愛していること

存在価値を自分で見つけられること

信じられる何かがあること

そんなことを考えさせられる映画です。


この二人だけではなく、家族の思いや葛藤も二人の悲しい愛を引き立たせていました。

名優が脇をがっちりかためていて、それぞれ役に成りきった上で、各自の持つ最大の魅力を引き出されていました。

特に祐一のおばあちゃん、樹木希林さん、被害者のお父さん、柄本明さん、お見事です。

「あなた、大切な人はおるね?」

柄本さんが語りかけるシーンは非常に印象的でした。

被害者も加害者も決して他人事ではないのです。
殺人者なんて別世界の人。殺人者の気持ちなんてわかるわけない。その通りです。
でもその危険性はもしかしたら身近にも潜んでいるのかもしれない。そんな怖さも感じた作品でした。


人の心に巣食ういろんな感情
白か黒か、簡単には割り切れないなんともいえない理不尽な気持ち

答えが出たわけではないけれど、重い宿題を突きつけられたそんな作品でした。



ラストシーン、個人的な解釈なんですが、私は祐一の愛を感じました。
光代を本気で愛したが故の・・・



201077(水)

踊る大捜査線THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!

観る×46

踊る大捜査線THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!

「踊る3」、週末にさっそく見てきましたよ。


踊る大捜査線THE MOOVIE 3ヤツらを解放せよ!外部リンク

もう改めて説明するまでもありませんよね。

大人気シリーズ、7年ぶりの最新作
前回のレインボーブリッジから、もう7年もたっていたんですね?

今回も踊るFANにはたまらないコネタが満載。

私もそこまでマニアではないので半分もわかっていないのかもしれませんが、人物リンク、小道具リンク、TVシリーズからもいろいろ細部にわたってリンクされている部分たくさんあるようですね。

ここまで作品としてマニアに愛されている作品もそうないですよね?

新規で参入した、メインキャスト、小栗旬さん、伊藤淳史君もそんなに違和感はなく馴染んでたように思います。

特に小栗君の冷徹で計算高い役柄はこの回だけでは終わらない、次回作へ繋がる予感も感じさせましたよ。

大枠のストーリーが若干ありきたりで(辛口ですいません)、弱い印象は否めませんが、くすっと笑える踊るならではのコネタは満載。

音楽がちょっと変更があったのに賛否両論あるみたいですが・・・私も音楽は従来のまんま使って欲しかったかなって気はします。


現代のセキュリティ社会をあざ笑うような、世相を取り入れてちょっぴり風刺もきかせた作品にもなってましたね。

「エラーを起こすのはいつも人間なんだ」

単純に笑ってちょっとドキドキさせられて、すかっと楽しめるエンターテイメント。

個人的には前半スリアミの会見と、吾郎ちゃん登場シーンがツボでした。

最後のエンドロール、ストーリー以外で、あの出番が少なかった吾郎ちゃんにもしっかり専属ヘアスタイリストがついてたのにも笑いました。

多分、まだまだたっくさんの方がこれから見に行かれると思います。できればTVシリーズからしっかり見直して行くと更に楽しめると思いますよ。

1回見ただけでは取りこぼしている、見逃している部分もたくさんあると思うので、見終わった人とあーでもないこーでもないと、ネタバレをしながら楽しみたい作品です。



201063(木)

映画「ソラニン」~等身大の普遍的な青春群像劇

観る×46

映画「ソラニン」~等身大の普遍的な青春群像劇

ずっと観たいと思っていた映画

ソラニン外部リンク

帯広での上映最終日にやっと行くことができました。

この映画・・・ヤバイです。
ド・ストライクでした。

きっと誰もが若い頃には夢があって

それがたとえ叶わないかも?ってわかっていながら

それでもどっか捨てきれなくて。

諦めるのには何かきっかけが必要だったり。

自分自身にいろんな折り合いをつけながら、なんとなく汚い「大人」になっていく。


そんな誰もが通る、ヒリヒリした焦燥感。

ポジティブだったり、ネガティブだったり、愛、協調性、猜疑心、不安、無気力etc

いろんな感情がとってもリアルに画面に登場する人物から伝わってくるんです。

主人公の芽衣子さんは宮崎あおいちゃん、種田には高良健吾
この二人、とってもいいです。

一緒のバンド仲間にはベースにサンボマスターの近藤洋一さん、ドラムには最近大注目の桐谷健太君、みんなをあったかく見守るアイちゃんには伊藤歩さん。

近藤さんの演技は初めてとは思えないとってもナチュラルで、原作の加藤にイメージがピッタリでした。

桐谷君もビリー役がびたはまり。ドラムも本当にお上手で。

伊藤歩さん、映画「スワロウテイル」で一躍有名になった女優さんですよね。あの頃は幼かったですがすっかり大人びちゃってww

ちょい役ですが、芽衣子さんのお母さんには美保純さん、種田のお父さんには財津和夫さん、ベテランのキラリとした演技も光ってました。

芽衣子さんに片思いのお花屋さんのギター少年には、今何かと話題の瑛太君の弟でもある永山絢斗君も出演していましたよ。

ストーリーは公式サイト等見ていただければわかると思いますが、ただ切ないだけのありきたりな青春映画と言ってしまうのはもったいない、とっても素敵な作品でした。

この映画のために、本気でギターも練習した、あおいちゃんのラストのライブシーンは見ものです。

高良君も、種田のなんともいえないやるせなさを、見事に表現していました。

高良君は次の映画「白夜行」、ビッグタイトルの準主役も決定していますよね。映画界では今ひっぱりだこの旬の俳優さんだと思います。

とにかく二人の関係がとってもナチュラルで微笑ましい。
あおいちゃんが本当に可愛くて仕方ないんですよ。

それだけでも見る価値のある映画なんですが、それだけじゃないんです。

いろんな立場でのいろんな感情に気持ちが自然と移入できます。そして、気がつけば涙が出てて、でも何かあったかいものも感じられて、一歩踏み出す勇気を与えてくれる、そんな作品。

決して夢が叶わなくても、ふとしたことで笑えたり、今が楽しいと思えたり、大切な仲間や家族の存在を感じられたら・・・
そんなとっても当たり前のことがシアワセと思える。
それは決して「負け」なんかではない。

そんなことを改めて感じさせてくれました。

残念ながら帯広での上映は今日で終わっちゃいますが、機会があれば、あらゆる年代の方にぜひ見てほしいと思った、イチオシの映画でしたよ。

あわせて原作漫画も読みましたが、こっちもすんごくよかった。ここまでセリフも場面も忠実に再現してる映画も珍しいのではないでしょうか?
どっちが先でもきっと楽しめると思います。

ソラニン・・・ジャガイモの芽の毒の事。
とりすぎると中毒になってしまうが、成長するためには必要なもの。

人間も毒を吐きながら、それでもしっかり成長していくんだよね。

Asian Kung-Fu Generation の曲ももちろん最高でしたよ。

ソラニン

Mustang(ムスタング)



2010211(木)

映画「ゴールデンスランバー」は「たいへんよくできました」

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映画「ゴールデンスランバー」は「たいへんよくできました」

伊坂作品×中村義洋監督

この組み合わせが文句なく好きです。

ラーメンやスイーツにそれぞれ好みがあるように

音楽や本、映画も人の好みは様々

決しておすすめしたもの、されたものが万人の好みにあうわけではなく。

ただ私は間違いなくこの二人の組み合わせの作品が好きです。

プラス堺雅人さん竹内結子さん、このお二人も以前から大好きでして

言うなれば大好きなメインディッシュに間違いないトッピングがあって、更に極上デザートまでおまけでついてきた・・・みたいな。個人的に大満足の映画でした。

ゴールデンスランバー公式HP外部リンク

ストーリーは公式HPなどでも紹介されてるので省きますね。

「イメージ」って時に怖いですよね。

善良な一市民がある巨大な陰謀によって犯人に仕立て上げられてしまう・・・

それがメディアや警察、国家ぐるみだとしたら、太刀打ちできるはずがありません。

でも、そこで折れずに勇気付けてくれるものは、人との信頼しかない・・・自分を信じてくれる存在がいるってとっても素敵です。

主人公、青柳の両親の存在、言葉が泣けました。

ともすれば私達人間は勝手な「イメージ」を作ります。
本当にその人を知らなくても先行する「イメージ」で勝手にわかったようなフリをします。
何かが起きたら勝手に理由を作って納得します。

でもそれってとっても危険なことでもありますよね?
本当に相手を理解するのってやはり生身のふれあいじゃなきゃ気づけない気がします。

主役級の役者さんが揃っているんですが、私が注目したのは中村組には欠かせない常連組の個性派俳優さんたち。

大森南朗さん、濱田岳さん、渋川清彦さん、石丸謙二郎さんetc名前はわからなくても、あ、この人ここに出てくるんだ!

と伊坂作品の人気のひとつでもある、作品間リンクが映画バージョンで「フィッシュストーリー」「アヒルと鴨のコインロッカー」見ていただけると楽しめます。

原作を読んだときに感じた青春のほろ苦さ、仲間との信頼、現代社会に潜む恐怖・・・奇想天外なエンタメ作品でありながら、じんわり湧き上がってくる人間愛

そういうものをしっかりこの映画でも感じられました。

原作のある映画って、本を読んでから観たら、映画は楽しめなかった・・・とか映画は面白いけど、原作はイマイチだった・・・って正直ありがちだと思うんです。

でもこの作品に関しては両方しっかりそれぞれ楽しめました。

もちろん役者さんの演技も素晴らしい。
特に竹内結子ちゃんの大学生時代が可愛すぎます。

小さくまとまるなよ。

ロックだなぁ。

たいへんよくできました。


伊坂FANならずともぜひ楽しんで欲しい映画です。

エンデイングの斉藤和義もかっこよすぎます。
「幸福な食卓 退屈な夕食」

♪今歩いてるこの道がいつか懐かしくなるはずだ



2009115(木)

映画「沈まぬ太陽」~魂を揺さぶられる大作

観る×46

映画「沈まぬ太陽」~魂を揺さぶられる大作

映画「沈まぬ太陽」外部リンク

を見て来ました。

山崎豊子さんの原作は以前から話題になっていましたよね。

評判通りの物凄い大作。
うまく表現できませんが、いろんなことを考えさせられ、
文字通り「魂を揺さぶられる」一大叙事詩に仕上がっていました。

アフリカサバンナのシーンから始まるんですが、最初は時系列がめまぐるしく入れ替わります。

しっかり記憶に残っているあの悲惨な墜落事故のお話。
映画でとりあげられる遺族のエピソードはきっとほんの一握り。実際はどの家族にもまだ想い出には片付けられない切なくてやり場のない怒り、悲しみが残っているんだろうなぁというのが改めて伝わってきて胸が苦しくなりました。

二度と起きてはならない繰り返してはならない哀しい事故。

最後にテロップが流れるんですが、全ての交通機関でこのような哀しい事故が起きることがないよう、そのためにも作られた映画であることが実感できます。

物語は事故のエピソードだけではなく、主人公恩地(渡辺謙)の正義と信念をまっとうした生き様を追っていきます。

組合のTOPをやっていたことでうけた懲罰人事
恩地はパキスタン、イラン、ケニアと外国をたらいまわしにされます。
友の裏切り、家族との断絶、日本にやっと帰ってきたと思ったときに待ち受けていた墜落事故・・・

役者も揃っています。
本当なら脇役と思えるような役にもいろんな名のある役者さんが勢ぞろいしています。

渡辺謙さん、三浦友和さんは言うに及びませんが、松雪泰子さん、石坂浩二さん、鈴木京香さん、どの役者さんもしっかり自分の役を見事に演じていました。

最後のテロップ、主要キャスト以外は出演順に名前が流れるというのもどれだけ大勢の役者さんが出演なさっていたかを物語っていましたね。

アフリカのサバンナのロケシーンは見事です。
本当に美しく哀しくそれでいて力強い。

最後の真っ赤な太陽はぜひスクリーンで堪能できて良かったなと思いました。

3時間22分という長時間作品、最近では珍しくインターミッション(途中休憩)が入ります。でも、長さをまったく感じさせない、飽きることなくその世界に入り込める作品でしたよ。

骨太で壮大なスケールの渾身の作品。
ぜひ大人の方に見て欲しい歴史に残る作品だと思いました。

フィクションとはいえ、実際にモデルになった人物もいたそうで、公開までもかなりの苦労があったようですね。

期待を裏切らず、本当に面白かったです。
最後に流れる福原美穂ちゃんの「CryNoMore」も素晴らしいですよ。

予告編


ここからは本編とはあまり関係ないオマケ話です。

作品の中で、笑えるシーンはほとんどなかったんですが、石坂浩二さん演じる国見会長の老眼がめっちゃ奇抜なデザインだったんですよね。なぜこのシーンでこの眼鏡?
とちょっと会場からも笑いが起きてました。
何か意図するところはあったんだろうか?

あと、レディースデイに行ったので、さすが、まわりは結構上の年代の女性が多い。映画が始まる前と、インターミッション中は、話し声が凄くてちょっとひいてしまいました。
で、どこからともなく「みかん」の匂い・・・以前TVでやってたんですが、おばちゃんって本当にかばんにみかんを入れてるんですね?(笑)
実際にその光景をみて、ちょっと感動すらしてしまいました。
映画が始まるととりあえず静かに見ていてくれたので安心しましたけどね。みなさん、マナーは守りましょうね♪




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