2016年3月12日(土)
2015年 インド旅行記⑤
私の泊まっていた安宿とシャンの店は同じ通りに並んでいる。
店番をしていた彼が散歩中の私をみつけ、外に飛び出してきた。
「店の中に入ってこいよ!日本語に興味がるので、少し教えてくれないか」
「いいよ」
私は店内に入り、日本語教室が始まった。
HELLO.HOW ARE YOU?
WHAT YOUR NAME?
簡単な挨拶文を英語から日本語に翻訳し、アルファベットに起こして彼が読めるようにした。
konnichiwaコンニチハ。ogenkidesukaオゲンキデスカ。
Anata no onamae waアナタノオナマエハ。
しばらく日本語教室の真似事をしたあと、彼が思い出したように言った。
「今晩空いていないか?俺の仕事が終わったら病院に一緒に行こう」
「病院?」
「妹が体調を崩して入院しているのさ。付き合ってくれよ」
スニ以外に妹が2人いるらしい。
それにしてもだ。
何故外国人の私が、彼の妹の見舞いに付き合わなければならないのか?
???
疑問を感じつつも、好奇心が先立ってしまう。
インド人の生活を覗き見るチャンスだと思った。
特に夜の予定がなかったので、結局彼に付き合うことにした。
待ち合わせの時間PM7:00。
宿の玄関前にシャンはオートバイで現われた。
私はオートバイの後部座席にまたがり、彼の妹がいるという病院に向かった。
病院はエルナクラム(新市街)の市立病院。大きい病院だった。
面会の受付を終え、シャンの妹が入院しているドミトリー(大部屋)に入った。
20人ほどの女性がベッドに横たわっており、シャンの妹がその中にいた。
シャンの母親も付き添いでいたので挨拶する。
シャンは母親に「日本から来た友人」という説明をしているようだった。
母親は息子の話を大きくうなずきながら聞き、私に向かってにっこり微笑んだ。
ベッドに横たわった妹は弱々しい声で私に見舞いの礼を言った。
「わざわざ来てくれて、ありがとう」
彼らの会話は英語ではなかったので、私は頭の中で都合よく解釈していた。
シャンがジャンパーの内ポケットから、あるものを取り出した。
それは見覚えのある、封が切られた日本のチョコレート。
私が彼に頼まれ、渋々プレゼントしたものだ。
ところが彼はそのチョコに、ほとんど手を付けていなかったようだ。
そして彼はチョコを一粒つまみ、
「ここにいる日本の友人からもらった」と言って妹に与えた。
「THANK YOU」妹は私に向かって言い、チョコを口にした。
シャンはもう一度チョコを一粒取り出し、今度は自分の母親に渡そうとした。
受け取った母親は自分では食べようとせず、隣のベッドに横たわっている女性に与えた。
母親はシャンからチョコを箱ごと受け取り、周囲の患者にチョコを配り始めた。
30分ほど経ったろうか、シャンが椅子から立ち上がり、「そろそろ戻ろうか」と私に告げた。
帰ろうとして病室内を歩き始めると、
THANK YOU! THANK YOU!THANK YOU!
色々な方角から女性の声が聞こえてきた。
これらの声は私に向けられているようなのだ。
そもそも私は何もしていない。
なんとも恥ずかしい気分になり、
「いやいや~YOU ARE WELCOMEどういたしまして~」
私は合掌のポーズをしながら、足早に病室を立ち去った。
つづく
店番をしていた彼が散歩中の私をみつけ、外に飛び出してきた。
「店の中に入ってこいよ!日本語に興味がるので、少し教えてくれないか」
「いいよ」
私は店内に入り、日本語教室が始まった。
HELLO.HOW ARE YOU?
WHAT YOUR NAME?
簡単な挨拶文を英語から日本語に翻訳し、アルファベットに起こして彼が読めるようにした。
konnichiwaコンニチハ。ogenkidesukaオゲンキデスカ。
Anata no onamae waアナタノオナマエハ。
しばらく日本語教室の真似事をしたあと、彼が思い出したように言った。
「今晩空いていないか?俺の仕事が終わったら病院に一緒に行こう」
「病院?」
「妹が体調を崩して入院しているのさ。付き合ってくれよ」
スニ以外に妹が2人いるらしい。
それにしてもだ。
何故外国人の私が、彼の妹の見舞いに付き合わなければならないのか?
???
疑問を感じつつも、好奇心が先立ってしまう。
インド人の生活を覗き見るチャンスだと思った。
特に夜の予定がなかったので、結局彼に付き合うことにした。
待ち合わせの時間PM7:00。
宿の玄関前にシャンはオートバイで現われた。
私はオートバイの後部座席にまたがり、彼の妹がいるという病院に向かった。
病院はエルナクラム(新市街)の市立病院。大きい病院だった。
面会の受付を終え、シャンの妹が入院しているドミトリー(大部屋)に入った。
20人ほどの女性がベッドに横たわっており、シャンの妹がその中にいた。
シャンの母親も付き添いでいたので挨拶する。
シャンは母親に「日本から来た友人」という説明をしているようだった。
母親は息子の話を大きくうなずきながら聞き、私に向かってにっこり微笑んだ。
ベッドに横たわった妹は弱々しい声で私に見舞いの礼を言った。
「わざわざ来てくれて、ありがとう」
彼らの会話は英語ではなかったので、私は頭の中で都合よく解釈していた。
シャンがジャンパーの内ポケットから、あるものを取り出した。
それは見覚えのある、封が切られた日本のチョコレート。
私が彼に頼まれ、渋々プレゼントしたものだ。
ところが彼はそのチョコに、ほとんど手を付けていなかったようだ。
そして彼はチョコを一粒つまみ、
「ここにいる日本の友人からもらった」と言って妹に与えた。
「THANK YOU」妹は私に向かって言い、チョコを口にした。
シャンはもう一度チョコを一粒取り出し、今度は自分の母親に渡そうとした。
受け取った母親は自分では食べようとせず、隣のベッドに横たわっている女性に与えた。
母親はシャンからチョコを箱ごと受け取り、周囲の患者にチョコを配り始めた。
30分ほど経ったろうか、シャンが椅子から立ち上がり、「そろそろ戻ろうか」と私に告げた。
帰ろうとして病室内を歩き始めると、
THANK YOU! THANK YOU!THANK YOU!
色々な方角から女性の声が聞こえてきた。
これらの声は私に向けられているようなのだ。
そもそも私は何もしていない。
なんとも恥ずかしい気分になり、
「いやいや~YOU ARE WELCOMEどういたしまして~」
私は合掌のポーズをしながら、足早に病室を立ち去った。
つづく
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