2019年10月27日(日)
2015年インド旅行記⑤
旅行記×41
私の泊まっていた安宿とシャンとスニの働く高級ブティックは同じ通りに並んでいる。
店番をしていたシャンが散歩中の私をみつけ、外に飛び出してきた。
「店の中に入ってこいよ!日本語に興味があるんだ。少し教えてくれないか」
「いいよ」
私は店内に入り、日本語教室が始まった。
HELLO.
HOW ARE YOU?
WHAT IS YOUR NAME?
簡単な挨拶文を英語から日本語に翻訳し、アルファベットに起こして彼が読めるようにした。
kon nichiwaコンニチハ。
ogenki desukaオゲンキデスカ。
Anata no onamae waアナタノオナマエハ。
しばらく日本語教室の真似事をしたあと、彼が思い出したように言った。
「今晩予定空いていないか?俺の仕事が終わったら、病院に一緒に行こう」
「病院?」
「妹が体調を崩して入院しているのさ。付き合ってくれよ」
スニ以外に妹が2人いるらしい。
それにしてもだ。
何故外国人の私が、彼の妹の見舞いに付き合わなければならないのか?
??????????????????????
疑問を感じつつも、好奇心が先立ってしまう。
インド人の生活を覗き見るチャンスだと思った。
特に夜の予定がなかったので、結局彼に付き合うことにした。
待ち合わせの時間PM7:00。
宿の玄関前にシャンはオートバイで現われた。
私はオートバイの後部座席にまたがり、彼の妹がいるという病院に向かった。
病院はエルナクラム(新市街)の市立病院。大きい病院だった。
面会の受付を終え、シャンの妹が入院しているドミトリー(大部屋)に入った。
20人ほどの女性がベッドに横たわっており、シャンの妹がその中にいた。
シャンの母親も付き添いでいたので挨拶する。
シャンは母親に「日本から来た友人」という説明をしているようだった。
母親は息子の話を大きくうなずきながら聞き、私に向かってにっこり微笑んだ。
ベッドに横たわった妹は弱々しい声で私に見舞いの礼を言った。
「わざわざ来てくれて、ありがとう」
彼らの会話は英語ではなかったので、私は頭の中で都合よく解釈していた。
シャンがジャンパーの内ポケットから、あるものを取り出した。
それは見覚えのある、封が切られた日本のチョコレート。
私が彼に頼まれ、渋々プレゼントしたものだ。
ところが彼はそのチョコに、ほとんど手を付けていなかったようだ。
そして彼はチョコを一粒つまみ、
「ここにいる日本の友人からもらった」と言って妹に与えた。
「THANK YOU」妹は私に向かって言い、チョコを口にした。
シャンはもう一度チョコを一粒取り出し、今度は自分の母親に渡そうとした。
受け取った母親は自分では食べようとせず、隣のベッドに横たわっている女性に与えた。
母親はシャンからチョコを箱ごと受け取り、周囲の患者にチョコを配り始めた。
30分ほど経ったろうか、シャンが椅子から立ち上がり、「そろそろ戻ろうか」と私に告げた。
帰ろうとして病室内を歩き始めると、
THANK YOU!
THANK YOU!
THANK YOU!
色々な方角から女性の声が聞こえてきた。
これらの声は私に向けられているようなのだ。
そもそも私は何もしていない。
なんとも恥ずかしい気分になり、
「いやいや~YOU ARE WELCOMEどういたしまして~」
私は合掌のポーズをしながら、足早に病室を立ち去った。
つづく
店番をしていたシャンが散歩中の私をみつけ、外に飛び出してきた。
「店の中に入ってこいよ!日本語に興味があるんだ。少し教えてくれないか」
「いいよ」
私は店内に入り、日本語教室が始まった。
HELLO.
HOW ARE YOU?
WHAT IS YOUR NAME?
簡単な挨拶文を英語から日本語に翻訳し、アルファベットに起こして彼が読めるようにした。
kon nichiwaコンニチハ。
ogenki desukaオゲンキデスカ。
Anata no onamae waアナタノオナマエハ。
しばらく日本語教室の真似事をしたあと、彼が思い出したように言った。
「今晩予定空いていないか?俺の仕事が終わったら、病院に一緒に行こう」
「病院?」
「妹が体調を崩して入院しているのさ。付き合ってくれよ」
スニ以外に妹が2人いるらしい。
それにしてもだ。
何故外国人の私が、彼の妹の見舞いに付き合わなければならないのか?
??????????????????????
疑問を感じつつも、好奇心が先立ってしまう。
インド人の生活を覗き見るチャンスだと思った。
特に夜の予定がなかったので、結局彼に付き合うことにした。
待ち合わせの時間PM7:00。
宿の玄関前にシャンはオートバイで現われた。
私はオートバイの後部座席にまたがり、彼の妹がいるという病院に向かった。
病院はエルナクラム(新市街)の市立病院。大きい病院だった。
面会の受付を終え、シャンの妹が入院しているドミトリー(大部屋)に入った。
20人ほどの女性がベッドに横たわっており、シャンの妹がその中にいた。
シャンの母親も付き添いでいたので挨拶する。
シャンは母親に「日本から来た友人」という説明をしているようだった。
母親は息子の話を大きくうなずきながら聞き、私に向かってにっこり微笑んだ。
ベッドに横たわった妹は弱々しい声で私に見舞いの礼を言った。
「わざわざ来てくれて、ありがとう」
彼らの会話は英語ではなかったので、私は頭の中で都合よく解釈していた。
シャンがジャンパーの内ポケットから、あるものを取り出した。
それは見覚えのある、封が切られた日本のチョコレート。
私が彼に頼まれ、渋々プレゼントしたものだ。
ところが彼はそのチョコに、ほとんど手を付けていなかったようだ。
そして彼はチョコを一粒つまみ、
「ここにいる日本の友人からもらった」と言って妹に与えた。
「THANK YOU」妹は私に向かって言い、チョコを口にした。
シャンはもう一度チョコを一粒取り出し、今度は自分の母親に渡そうとした。
受け取った母親は自分では食べようとせず、隣のベッドに横たわっている女性に与えた。
母親はシャンからチョコを箱ごと受け取り、周囲の患者にチョコを配り始めた。
30分ほど経ったろうか、シャンが椅子から立ち上がり、「そろそろ戻ろうか」と私に告げた。
帰ろうとして病室内を歩き始めると、
THANK YOU!
THANK YOU!
THANK YOU!
色々な方角から女性の声が聞こえてきた。
これらの声は私に向けられているようなのだ。
そもそも私は何もしていない。
なんとも恥ずかしい気分になり、
「いやいや~YOU ARE WELCOMEどういたしまして~」
私は合掌のポーズをしながら、足早に病室を立ち去った。
つづく
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