2019年11月26日(火)
2018年インド・スリランカ旅行記・15
旅行記×41
3月1日
ジャフナ滞在3日目の朝。
私の滞在していた安宿は、朝食つきのシステムだった。
一階の食堂で目玉焼きとトーストを食べていたら、長身の老人が私の対面の席に座った。
お互いの自己紹介、軽い世間話をした。
この老人はフランス国籍だが、「ジョンと呼んで」と言った。
ジョンはアメリカではよく聞く名前だけれど、フランスでも一般的なのだろうか。
どちらかと言えば、ジョンよりもジャンの方がフランスっぽいと思うのだが。
「今夜2階のロビーでコンサートがあるから、時間があれば見に来てね」
食事を終えたジョンが言った。
私はこの宿にミュージシャンが遊びに来るのかと思っていた。
夕方になった。
街歩きを終え宿に戻った私は、二階のロビーに向かった。
聴衆は10人くらい集まっている。
ステージ用の演台では、ジョンがギターを抱えて椅子に腰かけている。
彼自身が演奏者だったのか!
いったい、どのような音楽を演奏するのだろう。
ジョンは静謐で美しいメロディを爪弾いていく。
おそらくクラシック音楽、まるで教会で流れる音楽のようだと感じた。
彼は素人目に見ても、メチャクチャ演奏がうまい。
フレット(指板)間の指の移動が速く激しく動いているのだが、正確にしっかり押さえている。
とても難易度の高そうな曲を弾いていると感じるのだが、聴いていて演奏ミスがない。
ところが、途中でノイズが入った。
「ワンワンワン!ワンワンワン!」
演奏中に、外で野犬の群れがほえ始めたのだ。
「シャラーーーーーーーップ!!」
ジョンはハイレベルな演奏をしながら、野犬をたしなめる余裕があるのだ。
彼は3曲続けて演奏した。
「Johann Sebastian Bach」(バッハ)
演奏が終わった後、彼は作曲者を告げた。
聴衆はパラパラと、まばらな拍手。
ジョンが私を見ながら言った。
「日本から来た君のために、日本の曲を弾いてみよう」
♪さくら、さくら、弥生の空は見渡す限り・・・
彼は、さくらを超絶技巧で弾いていた。
ただメロディを爪弾くだけでなく、アルペジオやハーモ二クスといった高度な演奏技法で弾きまくり、途中で転調も入り、何度も同じメロディを繰り返すのだ。
こんな美しく激しい「さくら」を聞いたのは初めてだ。
「スゴイ、凄すぎる」
興奮する私。
他の聴衆も演奏に聞き入っている。
彼は間違いなく基礎的な練習をしっかり積んでいるし、もしかしたらプロのミュージシャンなのでは、と疑うほどの技術力を感じる。
演奏が終わり、割れんばかりの聴衆の拍手。
ジョンがプロ奏者だろうが、アマチュアだろうが、どうでもいい。
とにかく圧巻だった。
「すごい演奏でした。本当に感動しました」
感想をジョンに伝えた。
「実は日本には行ったことがないんだ。私の演奏は日本のさくらになっていましたか?」
彼は照れくさそうに聞いてくる。
「もちろん。日本のオリジナルよりも、よかったです」
「それは良かったな。聴いてくれて、ありがとう」
ジョンの熱演に触発されたのか、観客だった女性が彼からギターを受け取った。
二人の会話を聞いていると、彼女もフランス人。
女性はシャンソンを歌い始めた。
歌を聴きながら、自分もギターが弾けたらよかったのに、と少しだけ後悔する。
若い時の旅は、お金を節約するため安宿に泊まっていた。
現在はある程度自由に使えるお金があるから、もっと良い宿に泊まることはできる。
でも、こういう出会いが待っているから、安宿めぐりはやめられないのだ。
つづく
ジャフナ滞在3日目の朝。
私の滞在していた安宿は、朝食つきのシステムだった。
一階の食堂で目玉焼きとトーストを食べていたら、長身の老人が私の対面の席に座った。
お互いの自己紹介、軽い世間話をした。
この老人はフランス国籍だが、「ジョンと呼んで」と言った。
ジョンはアメリカではよく聞く名前だけれど、フランスでも一般的なのだろうか。
どちらかと言えば、ジョンよりもジャンの方がフランスっぽいと思うのだが。
「今夜2階のロビーでコンサートがあるから、時間があれば見に来てね」
食事を終えたジョンが言った。
私はこの宿にミュージシャンが遊びに来るのかと思っていた。
夕方になった。
街歩きを終え宿に戻った私は、二階のロビーに向かった。
聴衆は10人くらい集まっている。
ステージ用の演台では、ジョンがギターを抱えて椅子に腰かけている。
彼自身が演奏者だったのか!
いったい、どのような音楽を演奏するのだろう。
ジョンは静謐で美しいメロディを爪弾いていく。
おそらくクラシック音楽、まるで教会で流れる音楽のようだと感じた。
彼は素人目に見ても、メチャクチャ演奏がうまい。
フレット(指板)間の指の移動が速く激しく動いているのだが、正確にしっかり押さえている。
とても難易度の高そうな曲を弾いていると感じるのだが、聴いていて演奏ミスがない。
ところが、途中でノイズが入った。
「ワンワンワン!ワンワンワン!」
演奏中に、外で野犬の群れがほえ始めたのだ。
「シャラーーーーーーーップ!!」
ジョンはハイレベルな演奏をしながら、野犬をたしなめる余裕があるのだ。
彼は3曲続けて演奏した。
「Johann Sebastian Bach」(バッハ)
演奏が終わった後、彼は作曲者を告げた。
聴衆はパラパラと、まばらな拍手。
ジョンが私を見ながら言った。
「日本から来た君のために、日本の曲を弾いてみよう」
♪さくら、さくら、弥生の空は見渡す限り・・・
彼は、さくらを超絶技巧で弾いていた。
ただメロディを爪弾くだけでなく、アルペジオやハーモ二クスといった高度な演奏技法で弾きまくり、途中で転調も入り、何度も同じメロディを繰り返すのだ。
こんな美しく激しい「さくら」を聞いたのは初めてだ。
「スゴイ、凄すぎる」
興奮する私。
他の聴衆も演奏に聞き入っている。
彼は間違いなく基礎的な練習をしっかり積んでいるし、もしかしたらプロのミュージシャンなのでは、と疑うほどの技術力を感じる。
演奏が終わり、割れんばかりの聴衆の拍手。
ジョンがプロ奏者だろうが、アマチュアだろうが、どうでもいい。
とにかく圧巻だった。
「すごい演奏でした。本当に感動しました」
感想をジョンに伝えた。
「実は日本には行ったことがないんだ。私の演奏は日本のさくらになっていましたか?」
彼は照れくさそうに聞いてくる。
「もちろん。日本のオリジナルよりも、よかったです」
「それは良かったな。聴いてくれて、ありがとう」
ジョンの熱演に触発されたのか、観客だった女性が彼からギターを受け取った。
二人の会話を聞いていると、彼女もフランス人。
女性はシャンソンを歌い始めた。
歌を聴きながら、自分もギターが弾けたらよかったのに、と少しだけ後悔する。
若い時の旅は、お金を節約するため安宿に泊まっていた。
現在はある程度自由に使えるお金があるから、もっと良い宿に泊まることはできる。
でも、こういう出会いが待っているから、安宿めぐりはやめられないのだ。
つづく
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