2019年11月24日(日)
2018年インド旅行記・13
旅行記×41
2月24日
昨日に引き続き、本日もスニと一緒に行動。
彼女は私のために、わざわざ休みを2日取ってくれたのである。
安宿のロビーに、約束の30分遅れでスニが現れた。
「ん?」
スニはいつも民族衣装を着ているのだが、私には今までと同じものに見えない。
一目で良質な生地を使っているのがわかり、模様も上品な感じだ。
今日の彼女の服装は「気合」が入っているのだ。
前日の会話で私が「明日高級ホテルで昼食したいので、付き合ってほしい」
と話したからかもしれない。
エルナクラム(新市街)へ移動し、二人で高級ホテルのレストランで食事。
私はミールスとエビカレーをオーダー。
メニューを見たスニが、野菜ビリヤニをオーダーする。
「昨日ビリヤニ食べたよね。また食べるの?」
確認する私。
「好きだから何回食べても平気」
スニの言葉に、あきれる私。
インド人にとってのビリヤニは、日本人の外食での寿司だ。
ハレの日のご馳走。
スニが執着するのも理解してあげないとな。
「ここのビリヤニは今一つね。少し脂っぽい」
ところが食事に不満を言うスニ。
おいおい・・・
それでも追加注文したアイスクリームを彼女は実に美味しそうに食べていた。
スイーツは別腹なのは、インド女性も同様だった。
「これからどうする?映画でも見るかい」
レストランを出たあとに私が言うと、スニは気乗りしないよう表情をしている。
「映画・・・それよりも戻って色々話しましょうよ」
私の宿の2階が食堂になっているので、そこでおしゃべりしようと提案された。
彼女は既婚女性が外国人男性と二人で映画はマズイ、と思ったのかもしれない。
「じゃあ、戻ろうか」
私の宿に戻り、スニ先生の料理教室が始まった。
「ケララ伝統の卵カレーの作り方~♪」
上機嫌な彼女は歌うようにレシピの内容を口に出し、私のノートに書いていく。
そのピンクのボールペン・・・
彼女が持っているペンは私が昨日プレゼントしたものだ。
早速使ってくれて嬉しく感じる。
料理教室の次は、写真の撮影会だ。
スニはブロマイド写真のようなポーズをとり、自分の写真をとってくれという。
撮影後に彼女のスマホに写真を送った。
楽しそうに笑う彼女の表情を見て、私も嬉しかった。
他愛のない話をしていたら、気がつくと夕方になっていた。
「食事の準備をするので、そろそろ帰ります」
「2日間楽しかった。ありがとう、スニ」
「うん。またコーチンに来たときは連絡してね」
宿から外に出て、リキシャーに乗ったスニを見えなくなるまで手を振って見送る。
スニは帰っていった。
自分の妻が2日間も私と遊んで、スニの夫はどう思っているのか?
今回の訪問でスニに会ったときに、彼女の夫を紹介してもらうのが本来のスジだろう。
しかし、そうはならなかった。
スニの夫は、私が彼女と会っていることを知らない。
なぜなら、スニの結婚生活は破綻しており、現在夫と別居をしているからだ。
「夫はヒドイ人。この生活に耐えられない」
今回の旅行前に彼女からメールで何度か相談(というよりも愚痴)を受けたことがあって、そのたびに「何とか、やり直せないのかい?」と返信していた。
暴力なのか、浮気なのか、金銭トラブルなのか。
スニが具体的に語ろうとしないので何が問題なのか、よくわからない。
詳しい事情がメールではわからないし、「旦那と別れて新しい人生を始めたらどうか」とは無責任過ぎて言えない。
その後彼女から「結局、夫と別居することになりました」とメールがあった。
彼女の夫は料理人だと聞いていたので、本当は会って色々話を聞いてみたかった。
残念ながら、その希望はもう叶わない。
今回彼女と会っているとき、私はこの話題には一切触れていない。
また彼女から話し出すこともなかった。
彼女が今どのような生活をしているのかは、詳しくはわからない。
おそらく金銭的な不安もあるだろうし、別居ということで周囲の目も気になるだろう。
彼女は現在、何かとシンドイ毎日なのではないのか?と想像はしていた。
次に彼女と会うときは、どうなっているのか?
状況が好転していればよいのだが、としか言えない。
彼女に対して私の出来ること・・・
色々考えてみたけれど、現実的に私に出来ることはほとんどない、と感じた。
彼女と会ったときに、楽しい時間を一緒に過ごすこと。
これくらいしか思いつかなかった。
だから、いつかまたコーチンに来る機会があれば、私はきっとスニに会うのだろう。
つづく
昨日に引き続き、本日もスニと一緒に行動。
彼女は私のために、わざわざ休みを2日取ってくれたのである。
安宿のロビーに、約束の30分遅れでスニが現れた。
「ん?」
スニはいつも民族衣装を着ているのだが、私には今までと同じものに見えない。
一目で良質な生地を使っているのがわかり、模様も上品な感じだ。
今日の彼女の服装は「気合」が入っているのだ。
前日の会話で私が「明日高級ホテルで昼食したいので、付き合ってほしい」
と話したからかもしれない。
エルナクラム(新市街)へ移動し、二人で高級ホテルのレストランで食事。
私はミールスとエビカレーをオーダー。
メニューを見たスニが、野菜ビリヤニをオーダーする。
「昨日ビリヤニ食べたよね。また食べるの?」
確認する私。
「好きだから何回食べても平気」
スニの言葉に、あきれる私。
インド人にとってのビリヤニは、日本人の外食での寿司だ。
ハレの日のご馳走。
スニが執着するのも理解してあげないとな。
「ここのビリヤニは今一つね。少し脂っぽい」
ところが食事に不満を言うスニ。
おいおい・・・
それでも追加注文したアイスクリームを彼女は実に美味しそうに食べていた。
スイーツは別腹なのは、インド女性も同様だった。
「これからどうする?映画でも見るかい」
レストランを出たあとに私が言うと、スニは気乗りしないよう表情をしている。
「映画・・・それよりも戻って色々話しましょうよ」
私の宿の2階が食堂になっているので、そこでおしゃべりしようと提案された。
彼女は既婚女性が外国人男性と二人で映画はマズイ、と思ったのかもしれない。
「じゃあ、戻ろうか」
私の宿に戻り、スニ先生の料理教室が始まった。
「ケララ伝統の卵カレーの作り方~♪」
上機嫌な彼女は歌うようにレシピの内容を口に出し、私のノートに書いていく。
そのピンクのボールペン・・・
彼女が持っているペンは私が昨日プレゼントしたものだ。
早速使ってくれて嬉しく感じる。
料理教室の次は、写真の撮影会だ。
スニはブロマイド写真のようなポーズをとり、自分の写真をとってくれという。
撮影後に彼女のスマホに写真を送った。
楽しそうに笑う彼女の表情を見て、私も嬉しかった。
他愛のない話をしていたら、気がつくと夕方になっていた。
「食事の準備をするので、そろそろ帰ります」
「2日間楽しかった。ありがとう、スニ」
「うん。またコーチンに来たときは連絡してね」
宿から外に出て、リキシャーに乗ったスニを見えなくなるまで手を振って見送る。
スニは帰っていった。
自分の妻が2日間も私と遊んで、スニの夫はどう思っているのか?
今回の訪問でスニに会ったときに、彼女の夫を紹介してもらうのが本来のスジだろう。
しかし、そうはならなかった。
スニの夫は、私が彼女と会っていることを知らない。
なぜなら、スニの結婚生活は破綻しており、現在夫と別居をしているからだ。
「夫はヒドイ人。この生活に耐えられない」
今回の旅行前に彼女からメールで何度か相談(というよりも愚痴)を受けたことがあって、そのたびに「何とか、やり直せないのかい?」と返信していた。
暴力なのか、浮気なのか、金銭トラブルなのか。
スニが具体的に語ろうとしないので何が問題なのか、よくわからない。
詳しい事情がメールではわからないし、「旦那と別れて新しい人生を始めたらどうか」とは無責任過ぎて言えない。
その後彼女から「結局、夫と別居することになりました」とメールがあった。
彼女の夫は料理人だと聞いていたので、本当は会って色々話を聞いてみたかった。
残念ながら、その希望はもう叶わない。
今回彼女と会っているとき、私はこの話題には一切触れていない。
また彼女から話し出すこともなかった。
彼女が今どのような生活をしているのかは、詳しくはわからない。
おそらく金銭的な不安もあるだろうし、別居ということで周囲の目も気になるだろう。
彼女は現在、何かとシンドイ毎日なのではないのか?と想像はしていた。
次に彼女と会うときは、どうなっているのか?
状況が好転していればよいのだが、としか言えない。
彼女に対して私の出来ること・・・
色々考えてみたけれど、現実的に私に出来ることはほとんどない、と感じた。
彼女と会ったときに、楽しい時間を一緒に過ごすこと。
これくらいしか思いつかなかった。
だから、いつかまたコーチンに来る機会があれば、私はきっとスニに会うのだろう。
つづく
2019年11月23日(土)
2018年インド旅行記・12
旅行記×41
2月22日
コーチンに戻って最初に行ったのは問屋街。
食器とスパイスの買い付けが目的である。
問屋街は初めてではないので、すぐに金物屋は見つかり食器のオーダーを行う。
その場で梱包してもらい、エルナクラム中央郵便局で発送の手配を行った。
チェンナイでたらい回しにされたのがウソのように、実にスムーズに手配が進行し、あっという間に発送業務が終了した。
翌日、約束通りスニと再会した。
彼女は私の安宿のロビーまで、わざわざ出向いてくれた。
「君が言っていた通り、お土産を直接あなたに渡します」
チョコレートがたくさん入ったビニール袋を彼女に手渡した。
「そうそう、直接ね」と言って彼女は笑う。
「日本人は約束を守るでしょう?」
ドヤ顔の私。
「日本人じゃなくて、あなたが、よ」
スニは我慢ができず、袋の中身を外に出して確認を始めた。
キットカット2種詰め合わせ ファミリーパック
明治チョコ3種詰め合わせ ファミリーパック
きのこの山&たけのこの里 ファミリーパック
コアラのマーチ ファミリーパック
ブルボン アルフォート(ホワイトチョコクッキー)
グリコ ポッキー
スニが希望していた通り、山盛りのチョコレートである。
そしてピンク色のボールペンをプレゼントした。
サイズは小さいが、シャープペンとボールペンが切り替わるペンだ。
「やった!やった!」
スニは大喜び。
その場でチョコの封を切り、食べ始めた。
マルコスやシャンも同じようなリアクションだったけれど、インド人は本当にせっかちだ。
スニは満面の笑みで「美味しいー」を連発。
今回は無事お土産を渡せてよかった、よかった。
「これからどうする?」と聞く私に、「海を見にいきましょう」と答えるスニ。
「海?」
宿から10分ほど歩き、海岸へ。
海岸沿いの遊歩道を二人で歩いていく。
「♪~」
チョコを食べながら、上機嫌で歩くスニ。
インド人女性と一緒に並んで歩いている私。
まるでデートをしているような不思議な気分になってくる。
海が正面に見えるベンチに座って世間話をする。
「君の勤めていたブティックがなくなっていたよ」
と私が言った。
「そうね、あの店は値段が高かったから・・・コーチンとゴアの支店が閉鎖されたわ」
「そうなんだ。で、君は今働いているの?」
「ええ、今は医療事務の仕事をしているのよ」
「そうか、それはよかった」
私は空腹を感じていた。
「スニ。お昼ごはんは、ビリヤニを食べに行こう。確かムスリム街にお店あるよね?」
「わかったわ、行きましょう」
リキシャーに乗るが、なかなか走り出さない。
スニとドライバーが長々と話し込んでいる。
ようやく走りはじめたと思ったら、立派な店構えの店の前でリキシャーは止まった。
店の看板には、シルク、ジュエリーと大きく書いてあり、嫌な予感がしてきた。
ここはレストランではなく、高級土産物店だった。
高級土産物店!
私がここフォートコーチンで一番行きたくない所だ。
「スニ・・・なぜ?」なぜなんだー!
「まぁまぁ、とりあえず店に入りましょう」
彼女になだめられて店内へ。
スニは店主と現地語マラヤラムで談笑。
私にスタッフが近づいてきて、お土産の売り込みが始まった。
絨毯。
仏像。
やたらと細かい細工の置物。
スタッフは私が外国人なので値段の高いものばかり勧めてくる。
私の心は1ミリも動かない。
買う気がないものの、何度も売り込みを断っていくのはストレスが溜まる。
「もう、疲れたよ」
店員に聞こえない程度の小声でスニに苦情を言った。
「ドライバーの彼は、私たちが店に入っただけでコミッション(手数料)を土産店の店主からもらっているのよ。少し協力してあげて」
「うーーん・・・わかった。でも買わないからね」
スニは観光地コーチンで長く暮らしているので、リキシャードライバーが経済的に恵まれていないと知っている。
だから彼女は頼まれたら断れない。
買う気が全くない土産物店巡りに5軒付き合わされ、ビリヤニ屋にようやく着いたのは1時間半後のことであった。
つづく
コーチンに戻って最初に行ったのは問屋街。
食器とスパイスの買い付けが目的である。
問屋街は初めてではないので、すぐに金物屋は見つかり食器のオーダーを行う。
その場で梱包してもらい、エルナクラム中央郵便局で発送の手配を行った。
チェンナイでたらい回しにされたのがウソのように、実にスムーズに手配が進行し、あっという間に発送業務が終了した。
翌日、約束通りスニと再会した。
彼女は私の安宿のロビーまで、わざわざ出向いてくれた。
「君が言っていた通り、お土産を直接あなたに渡します」
チョコレートがたくさん入ったビニール袋を彼女に手渡した。
「そうそう、直接ね」と言って彼女は笑う。
「日本人は約束を守るでしょう?」
ドヤ顔の私。
「日本人じゃなくて、あなたが、よ」
スニは我慢ができず、袋の中身を外に出して確認を始めた。
キットカット2種詰め合わせ ファミリーパック
明治チョコ3種詰め合わせ ファミリーパック
きのこの山&たけのこの里 ファミリーパック
コアラのマーチ ファミリーパック
ブルボン アルフォート(ホワイトチョコクッキー)
グリコ ポッキー
スニが希望していた通り、山盛りのチョコレートである。
そしてピンク色のボールペンをプレゼントした。
サイズは小さいが、シャープペンとボールペンが切り替わるペンだ。
「やった!やった!」
スニは大喜び。
その場でチョコの封を切り、食べ始めた。
マルコスやシャンも同じようなリアクションだったけれど、インド人は本当にせっかちだ。
スニは満面の笑みで「美味しいー」を連発。
今回は無事お土産を渡せてよかった、よかった。
「これからどうする?」と聞く私に、「海を見にいきましょう」と答えるスニ。
「海?」
宿から10分ほど歩き、海岸へ。
海岸沿いの遊歩道を二人で歩いていく。
「♪~」
チョコを食べながら、上機嫌で歩くスニ。
インド人女性と一緒に並んで歩いている私。
まるでデートをしているような不思議な気分になってくる。
海が正面に見えるベンチに座って世間話をする。
「君の勤めていたブティックがなくなっていたよ」
と私が言った。
「そうね、あの店は値段が高かったから・・・コーチンとゴアの支店が閉鎖されたわ」
「そうなんだ。で、君は今働いているの?」
「ええ、今は医療事務の仕事をしているのよ」
「そうか、それはよかった」
私は空腹を感じていた。
「スニ。お昼ごはんは、ビリヤニを食べに行こう。確かムスリム街にお店あるよね?」
「わかったわ、行きましょう」
リキシャーに乗るが、なかなか走り出さない。
スニとドライバーが長々と話し込んでいる。
ようやく走りはじめたと思ったら、立派な店構えの店の前でリキシャーは止まった。
店の看板には、シルク、ジュエリーと大きく書いてあり、嫌な予感がしてきた。
ここはレストランではなく、高級土産物店だった。
高級土産物店!
私がここフォートコーチンで一番行きたくない所だ。
「スニ・・・なぜ?」なぜなんだー!
「まぁまぁ、とりあえず店に入りましょう」
彼女になだめられて店内へ。
スニは店主と現地語マラヤラムで談笑。
私にスタッフが近づいてきて、お土産の売り込みが始まった。
絨毯。
仏像。
やたらと細かい細工の置物。
スタッフは私が外国人なので値段の高いものばかり勧めてくる。
私の心は1ミリも動かない。
買う気がないものの、何度も売り込みを断っていくのはストレスが溜まる。
「もう、疲れたよ」
店員に聞こえない程度の小声でスニに苦情を言った。
「ドライバーの彼は、私たちが店に入っただけでコミッション(手数料)を土産店の店主からもらっているのよ。少し協力してあげて」
「うーーん・・・わかった。でも買わないからね」
スニは観光地コーチンで長く暮らしているので、リキシャードライバーが経済的に恵まれていないと知っている。
だから彼女は頼まれたら断れない。
買う気が全くない土産物店巡りに5軒付き合わされ、ビリヤニ屋にようやく着いたのは1時間半後のことであった。
つづく
2019年11月22日(金)
スリランカ全部乗せ
2019年11月22日(金)
2018年インド旅行記・11
旅行記×41
2月17日
ハイデラバードからタミルナドゥ州の州都チェンナイへ、飛行機で移動。
空港直結で市街地に向かうメトロをみつけたので、興味本位で乗ってみた。
ゴトンゴトン・・・
座席に座ると郷愁を呼び起こす音。
日本で電車に乗っているような錯覚を起こしそうになる。
しかし私の目の前には民族衣装を着た女性が座っている。
周囲は全員インド人。
窓から眺める風景からはヒンドゥー教の寺院が見える。
ここでは私が外国人。
メトロを降りてからはリキシャーを走らせ、安宿街トリプルケンに向かう。
宿はすぐに決まり、買いつけに出歩いた。
コーヒー豆の自家焙煎の店を見つけオーダー、カルパシというマニアックなスパイスを探し回って手に入れ、料理本も購入した。
全部バックパックには入りきらないので、ここで一度荷物を日本へ発送することにした。
「この箱、私がもらっていいかな?」
段ボールの空き箱が安宿に放置してあったので、タダでもらって梱包作業を部屋でする。
ここで日本から持ち込んだ秘密兵器、100均の布製ガムテープで頑丈に補強する。
よし、これで発送できる。
2月18日
梱包物を発送するため、安宿近くの郵便局に行く。
以前この郵便局には親切なスタッフがいて、一発で海外発送を手配してくれた。
「国際郵便か。ここでは対応しない。大きな郵便局に行ってくれ、アンナサライだ」
担当者が替わっていたせいで、今回は面倒そうに拒否された。
3年の月日の経過で、こういう残念な変化もある。
アンナサライ地区の大きな郵便局では、行列に並び辛抱強く待ち続け、やっと自分の番が来たら、パスポートのコピーが必要と言われた。
コピーと急に言われても、と途方に暮れる私。
「ほら、コピーと書いた看板が窓から見えるでしょう?あそこよ」
近くにいた親切な老婦人がコピー屋の場所を教えてくれた。
コピーを取ってきて、また行列に並び待ち続ける。
自分の番が来たが、局員に箱を開けられて中味の厳重なチェックを受けた。
お土産に買った健康食品とスパイスの数種類は発送できない、と箱から出された。
荷造りを頼む人は、専門の係にチップをこっそり渡している。
発送料金とは、別の支払いのようだ。
荷造り係がやけに一生懸命私の荷物を梱包していたのは、相場がわからず支払ったチップの金額が多かったからかもしれない。
郵便局に来てから発送が終わったのは3時間後だった。
もう、ぐったりである。
「郵便局から、あなたが本当に宿泊しているかを確認する電話が入ったぞ」
宿に戻ったら、スタッフが教えてくれた。
今までインドから何度も荷物を送っているが、初めてのことだ。
私は郵便局員から犯罪者予備軍として疑われたような気分になり、少々不快な気持ちになった。
2月19日
郵便の件ではゴタゴタしたが、食事に関してはチェンナイは完璧な印象しかない。
ミールスは今回の旅で色々な地域のものを食したが、ここチェンナイは最高レベルの味わいだった。
バナナの葉がパラリとテーブルに敷かれる。
サンバル・ラッサムといった菜食カレー、ヨーグルト、チャトニ、野菜炒め、揚げたパパド、そして米が豪快に盛られる。
手で混ぜ合わせ、どんどん味が変わっていき味の調和を楽しむ。
「そうそう、これこれ!」
見た目も味も一番違和感なく、しっくりきた。
食後に時間があったので床屋に行ってみた。
私の顔を見た店主が少し驚いた表情。
「全体的に、短く、お願いします」とザックリとしたオーダーをした。
「OK」
手慣れたハサミさばきで髪を短く刈り込んでいく。
日本の理髪店のようにシャンプーはしない。
20分で散髪が終了。
「これは・・・」
完成形は側頭部が少し膨らみ気味で、正直微妙な髪型である。
細かい注文を何度もするのが面倒だ、まあ・・いいか。
「パーフェクト!サンキュー」と言って店を出る。
出来栄えに満足気な店主の顔を見たら、文句は言えないのである。
「ミスター、洗濯物が届いているぞ」
宿に戻ると、マネージャーが声をかけてきた。
「ああ、そうだったね」
3日間チェンナイに滞在する予定だったので、滞在初日にジーンズやシャツなど厚手の生地の服をランドリーサービスに頼んでいたのだ。
そういえば料金を聞いていなかった気がする。
「いくらになりますか」
「200ドルだ」
マネージャーは真顔で言う。
「そんな訳あるか!」
怒った顔でにらみつけたら、マネージャーの表情が緩んできた。
クスクス笑っているのだ。
「200・・・ルピーだ」
私がマネージャーの顔面を殴るふりをしたら、ボクシングのスゥエーをするように体をのけぞらして避けるふりをする。
お互いを見て大笑い。
インド人にも冗談のわかるやつがいて嬉しくなる。
チェンナイはいつも足早に通り過ぎるイメージがあったが、今回は印象に残った滞在だった。
このあとはマドゥライ、カライクディを経由して、3週間ぶりにケララ州のコーチンに戻ることになった。
コーチンでは今度こそ、スニにお土産を渡さなければならない。
直接、本人に。
つづく
ハイデラバードからタミルナドゥ州の州都チェンナイへ、飛行機で移動。
空港直結で市街地に向かうメトロをみつけたので、興味本位で乗ってみた。
ゴトンゴトン・・・
座席に座ると郷愁を呼び起こす音。
日本で電車に乗っているような錯覚を起こしそうになる。
しかし私の目の前には民族衣装を着た女性が座っている。
周囲は全員インド人。
窓から眺める風景からはヒンドゥー教の寺院が見える。
ここでは私が外国人。
メトロを降りてからはリキシャーを走らせ、安宿街トリプルケンに向かう。
宿はすぐに決まり、買いつけに出歩いた。
コーヒー豆の自家焙煎の店を見つけオーダー、カルパシというマニアックなスパイスを探し回って手に入れ、料理本も購入した。
全部バックパックには入りきらないので、ここで一度荷物を日本へ発送することにした。
「この箱、私がもらっていいかな?」
段ボールの空き箱が安宿に放置してあったので、タダでもらって梱包作業を部屋でする。
ここで日本から持ち込んだ秘密兵器、100均の布製ガムテープで頑丈に補強する。
よし、これで発送できる。
2月18日
梱包物を発送するため、安宿近くの郵便局に行く。
以前この郵便局には親切なスタッフがいて、一発で海外発送を手配してくれた。
「国際郵便か。ここでは対応しない。大きな郵便局に行ってくれ、アンナサライだ」
担当者が替わっていたせいで、今回は面倒そうに拒否された。
3年の月日の経過で、こういう残念な変化もある。
アンナサライ地区の大きな郵便局では、行列に並び辛抱強く待ち続け、やっと自分の番が来たら、パスポートのコピーが必要と言われた。
コピーと急に言われても、と途方に暮れる私。
「ほら、コピーと書いた看板が窓から見えるでしょう?あそこよ」
近くにいた親切な老婦人がコピー屋の場所を教えてくれた。
コピーを取ってきて、また行列に並び待ち続ける。
自分の番が来たが、局員に箱を開けられて中味の厳重なチェックを受けた。
お土産に買った健康食品とスパイスの数種類は発送できない、と箱から出された。
荷造りを頼む人は、専門の係にチップをこっそり渡している。
発送料金とは、別の支払いのようだ。
荷造り係がやけに一生懸命私の荷物を梱包していたのは、相場がわからず支払ったチップの金額が多かったからかもしれない。
郵便局に来てから発送が終わったのは3時間後だった。
もう、ぐったりである。
「郵便局から、あなたが本当に宿泊しているかを確認する電話が入ったぞ」
宿に戻ったら、スタッフが教えてくれた。
今までインドから何度も荷物を送っているが、初めてのことだ。
私は郵便局員から犯罪者予備軍として疑われたような気分になり、少々不快な気持ちになった。
2月19日
郵便の件ではゴタゴタしたが、食事に関してはチェンナイは完璧な印象しかない。
ミールスは今回の旅で色々な地域のものを食したが、ここチェンナイは最高レベルの味わいだった。
バナナの葉がパラリとテーブルに敷かれる。
サンバル・ラッサムといった菜食カレー、ヨーグルト、チャトニ、野菜炒め、揚げたパパド、そして米が豪快に盛られる。
手で混ぜ合わせ、どんどん味が変わっていき味の調和を楽しむ。
「そうそう、これこれ!」
見た目も味も一番違和感なく、しっくりきた。
食後に時間があったので床屋に行ってみた。
私の顔を見た店主が少し驚いた表情。
「全体的に、短く、お願いします」とザックリとしたオーダーをした。
「OK」
手慣れたハサミさばきで髪を短く刈り込んでいく。
日本の理髪店のようにシャンプーはしない。
20分で散髪が終了。
「これは・・・」
完成形は側頭部が少し膨らみ気味で、正直微妙な髪型である。
細かい注文を何度もするのが面倒だ、まあ・・いいか。
「パーフェクト!サンキュー」と言って店を出る。
出来栄えに満足気な店主の顔を見たら、文句は言えないのである。
「ミスター、洗濯物が届いているぞ」
宿に戻ると、マネージャーが声をかけてきた。
「ああ、そうだったね」
3日間チェンナイに滞在する予定だったので、滞在初日にジーンズやシャツなど厚手の生地の服をランドリーサービスに頼んでいたのだ。
そういえば料金を聞いていなかった気がする。
「いくらになりますか」
「200ドルだ」
マネージャーは真顔で言う。
「そんな訳あるか!」
怒った顔でにらみつけたら、マネージャーの表情が緩んできた。
クスクス笑っているのだ。
「200・・・ルピーだ」
私がマネージャーの顔面を殴るふりをしたら、ボクシングのスゥエーをするように体をのけぞらして避けるふりをする。
お互いを見て大笑い。
インド人にも冗談のわかるやつがいて嬉しくなる。
チェンナイはいつも足早に通り過ぎるイメージがあったが、今回は印象に残った滞在だった。
このあとはマドゥライ、カライクディを経由して、3週間ぶりにケララ州のコーチンに戻ることになった。
コーチンでは今度こそ、スニにお土産を渡さなければならない。
直接、本人に。
つづく
2019年11月21日(木)
2018年インド旅行記・10
旅行記×41
2月15日
地元の若者がおススメするビリヤニ店に行くことになった。
自分が調べた範囲では、宿からレストランまでは結構距離がありそうで、リキシャーの相場がわからない。
流しのリキシャーを捕まえ、運転手に行先を言って運賃がいくらか言ってもらう。
「この料金の半分なら支払います」と私が言うと「話にならないな」と運転手は言う。
ところが、「しかたないですね、他を当たりますので」と私が言い出すと・・・
「ちょっと待ってくれ」と運転手が「この金額なら、どうだ」と言い始める。
ここからが本当の交渉。
運転手の表情を見ながら、最終的な価格を決めた。
リキシャーが走り出して15分後に目的地に到着。
おそらく5Km以上は走っただろう。
メモに書いてあった店名と同じだ、これで合っている。
間違いなくこの店だ。
地元民でごった返す大繁盛の店。
これは期待できそうだ。
着席後に壁のメニューを見て、一番オーソドックスなマトンビリヤニをオーダーした。
10分後に料理が運ばれてきた。
ブロンズの壺に入ったビリヤニは湯気を出している。
壺から、別に用意されたステンレスの浅皿にライスを移す。
いよいよ実食だ。
抜群に美味しい!
パラパラのバスマティ米に、ギー(澄ましバターの)濃厚な風味。
米もカレーの風味が効いて、かつ旨味とコクがある。
クローブやカルダモンなどのスパイスの香りも鮮烈。
大きめの骨付きマトン肉がゴロゴロと入っている。
肉はジューシー。
ライタ(ヨーグルト)や紫玉ねぎのスライス、レモンのスライス。
こうした酸味の付け合わせを口直しに食べる。
カレースープもついていて、ライスにかけて味のアクセントを楽しむ。
ライスをすくう手が止まらない。
それなのに・・・
いくら食べても、ライスは減っていかない。
このビリヤニはメチャクチャ美味しいのにもかかわらず、絶望的なほど量が多いのだ。
普通盛りで4人分くらいある。
もしかしたら6人分くらいあったかもしれない。
私はビリヤニの量がこれほどとは思っていなかったので、サイドメニューでチキン65(スパイスの鶏唐揚げ)をオーダーしてしまったことを激しく後悔していた。
これを全部食べ切るのは、どう考えても不可能だ。
よーくメニューを見ると、ビリヤニミニと書いてあるのを見つけた。
価格も量も通常の半額。
これをオーダーすべきだったが、後の祭りである。
店内を見渡すと、女性客2人組がビリヤニミニ1食分を食べていた。
これでも2人分以上はたっぷりあるのだ。
見ていて、そりゃあ当然そうなるよ、と思う。
しかし、通路を挟んで私の隣に座っていた小太りの男は、私の想像を超えてきた。
彼は私より遅れて着席し、ビリヤニ普通盛り(4人分)を非常に早いペースで食べていったのだが、私より先に完食してしまった。
彼は店員に向かって人さし指を1本立てている。
なんとお替りをしたのだ。
信じられない。
普通盛り(4人分)を続けてオーダー!!
本当に色々な人間がいて、見ていて飽きることがない。
インドは面白い人間が多すぎる。
つづく
地元の若者がおススメするビリヤニ店に行くことになった。
自分が調べた範囲では、宿からレストランまでは結構距離がありそうで、リキシャーの相場がわからない。
流しのリキシャーを捕まえ、運転手に行先を言って運賃がいくらか言ってもらう。
「この料金の半分なら支払います」と私が言うと「話にならないな」と運転手は言う。
ところが、「しかたないですね、他を当たりますので」と私が言い出すと・・・
「ちょっと待ってくれ」と運転手が「この金額なら、どうだ」と言い始める。
ここからが本当の交渉。
運転手の表情を見ながら、最終的な価格を決めた。
リキシャーが走り出して15分後に目的地に到着。
おそらく5Km以上は走っただろう。
メモに書いてあった店名と同じだ、これで合っている。
間違いなくこの店だ。
地元民でごった返す大繁盛の店。
これは期待できそうだ。
着席後に壁のメニューを見て、一番オーソドックスなマトンビリヤニをオーダーした。
10分後に料理が運ばれてきた。
ブロンズの壺に入ったビリヤニは湯気を出している。
壺から、別に用意されたステンレスの浅皿にライスを移す。
いよいよ実食だ。
抜群に美味しい!
パラパラのバスマティ米に、ギー(澄ましバターの)濃厚な風味。
米もカレーの風味が効いて、かつ旨味とコクがある。
クローブやカルダモンなどのスパイスの香りも鮮烈。
大きめの骨付きマトン肉がゴロゴロと入っている。
肉はジューシー。
ライタ(ヨーグルト)や紫玉ねぎのスライス、レモンのスライス。
こうした酸味の付け合わせを口直しに食べる。
カレースープもついていて、ライスにかけて味のアクセントを楽しむ。
ライスをすくう手が止まらない。
それなのに・・・
いくら食べても、ライスは減っていかない。
このビリヤニはメチャクチャ美味しいのにもかかわらず、絶望的なほど量が多いのだ。
普通盛りで4人分くらいある。
もしかしたら6人分くらいあったかもしれない。
私はビリヤニの量がこれほどとは思っていなかったので、サイドメニューでチキン65(スパイスの鶏唐揚げ)をオーダーしてしまったことを激しく後悔していた。
これを全部食べ切るのは、どう考えても不可能だ。
よーくメニューを見ると、ビリヤニミニと書いてあるのを見つけた。
価格も量も通常の半額。
これをオーダーすべきだったが、後の祭りである。
店内を見渡すと、女性客2人組がビリヤニミニ1食分を食べていた。
これでも2人分以上はたっぷりあるのだ。
見ていて、そりゃあ当然そうなるよ、と思う。
しかし、通路を挟んで私の隣に座っていた小太りの男は、私の想像を超えてきた。
彼は私より遅れて着席し、ビリヤニ普通盛り(4人分)を非常に早いペースで食べていったのだが、私より先に完食してしまった。
彼は店員に向かって人さし指を1本立てている。
なんとお替りをしたのだ。
信じられない。
普通盛り(4人分)を続けてオーダー!!
本当に色々な人間がいて、見ていて飽きることがない。
インドは面白い人間が多すぎる。
つづく