2015年12月20日(日)
三方よし
旧ブログ×498
先日、こんな記事を拝見しました。
私どもの店はこのランチパスポートの企画に参加しておりませんが
影響を受けていることは間違いありません。
お客様にとって非常にインパクトのある企画ですから
購入された方が参加店舗を巡るのは当然ですよね。
一方お店側にとっては経営面のようなデリケートな問題も含むので
同業者として、率直なご意見を述べられていることに
まず敬意を抱きます。
そしてそれについて消費者、飲食店従事者の両方の側面から
私どもなりに思うところを述べます。
この「ランチパスポート」に掲載されているメニューは
原則として「通常営業で提供されているもの」になります。
通常提供されているものとは異なる
パスポート専用メニューを出しているところもあるようですが
これは不当表示に該当する可能性がかなり高いと思います。
(これについては後ほど触れます)
あくまで通常¥700~¥1000で提供されているものが
ワンコインの¥500で食べられて、
そこで初めて購入した方の特典、恩恵になるわけです。
ということは、お店側としては値引き分
利益を圧迫、もしくは消失していることになります。
リンクの記事でも触れられていますが
食材原価3割
営業経費3割
人件費3割
利益1割
というのが適正価格とされている中で
仮に消費税込¥800のランチを消費税込¥500で提供すると
人件費と利益は消失します。
税込価格¥800であれば本体価格は約¥740です。
食材原価と営業経費として計算される3割は
それぞれ約¥220ということになります。
一方税込価格¥500の本体価格は約¥460です。
食材原価と営業経費を足して約¥450ですから
人件費と利益がほぼ消失していることが分かります。
本来人件費と利益として計上される¥280ほどが
お店の赤字として残ることになります。
ランチパスポートの掲載費用はかからないようなので
この赤字分を広告宣伝費として転換するというのが
店側のランチパスポートの恩恵ということになります。
言い換えれば
「一見お店は損をしているように見えるけれど
宣伝費として考えれば損ではない」
という考え方になるわけですね。
ただ、その宣伝費としての費用対効果が
率直に言って疑問ではあります。
上記の計算において
1日に10人のランチパスポート利用者がいるとします。
宣伝費として考えるべき赤字分は
1名¥250としても¥2500です。
1ヶ月25日の営業日として赤字分は¥62500で
これを3ヶ月続けると¥187500の赤字=宣伝費ということになります。
2500円*25日*3ヶ月=187500
ランチパスポートの期間は12月~2月ですから
この18万以上の費用に見合う効果を
3月から11月までの9ヶ月で獲得しないといけないわけです。
本来の価格¥800で得られる利益が¥75ということは
9ヶ月で2500人分の効果が得られないと
費用対効果としてはマイナスということになります。
1ヶ月あたり270人以上
1日あたり10人以上の効果です。
1日に10人来るという仮定なのに
1日10人以上の効果が必要になるわけです。
ちょっと何を言っているか分かりませんね。
しかもこの人数を達成してようやくプラマイ0ですから。
もちろんこれはランチだけの単純計算なので
ドリンクなどのサイドオーダーの利益は考慮されていません。
ランチではなくお酒などの単価の高い部門への影響も
期待できるだろうというのも当然あります。
逆に、たとえばせっかく来たのに食べられなかった、とか
パスポート使用期間の開始直前と終了直後は来店を控える傾向になる、とか
そういうマイナス面も考慮されていません。
また、これだけのインパクトのある企画ですから
他の広告宣伝費をカットすれば
その分の営業経費が浮くでしょう。
(「しゅん」さんや「Chai」さんにとっては大打撃でしょうが)
ですから実際はもう少し効果が低くてもいいかもしれません。
それでも極めて高いリピート率が期待できないと
システムとしては厳しいのではないかと感じます。
たとえば限定10食にして
食べられなかったお客様が通常価格のメニューを注文すれば
その分はお店の利益にはなるでしょうが
それがリピートにつながるかというとそれは疑問です。
もしかしたら
「企業努力で¥500でも利益を出せるようなものを作ればいい」
というご意見もあるかもしれません。
もちろんそれ自体は可能でしょう。
専用メニューはこの考え方に沿っているものでしょう。
考え方としてはある意味当然ではあります。
ですが、¥500で提供しても利益が出るメニューならば
それはそもそも適正価格が¥500の商品なのであって
適正価格¥500で提供できるものをランチパスポートに載せたところで
お客様には恩恵はありません。
お得ではない価格であるにもかかわらず
あるいはさほどお得ではないにもかかわらず
パスポート使用でとてもお得になるという表示は
いわゆる優良誤認を禁じた景品表示法に抵触することになります。
通常営業で提供しているメニューの質や量を
利益確保のために調整して提供するのが論外なのは言うまでもありませんが
通常営業で提供していない、パスポート専用メニューの提供も
通常存在していない商品を通常よりお得だとして売るわけですから
同じように不当表示に該当する可能性があります。
お得かどうか消費者は比較判断できないからです。
だからこそ通常営業で提供しているメニューを
パスポート提示時にも提供することが原則になっているわけです。
専用メニューではなく新メニューを時期を合わせて発売した、
というのはありでしょうけれど
その場合はもちろん期間終了後もずっと継続販売しなければいけません。
結局のところ、ランチパスポートの仕組みに限ると
お店側は利益確保のための努力ではなく
利益の消失分を広告費として計上するしかないことになります。
参加されているほとんどの店舗の皆さんは
そういったことを承知の上で
その後の集客を期待して
いわば血を流しておられるのだと思います。
真っ当にやればどうしたって血が流れる仕組みですから。
とはいえこれだけ採算ラインが高いと
最終的にお客様もお店側も得をせず
発行した出版社だけが利益を得ることになりかねません。
血が流れすぎてしまえば人もお店も斃れます。
ランチをやめてしまったり、営業自体をやめてしまうことにも
つながりかねないのではないかと感じたりもします。
もちろんもし、このランチパスポートという仕組みが
不当表示無しでやっても本当にメリットがあるものなら
今年参加されているお店は
来年以降もこのランチパスポートに掲載するでしょう。
終わってみないと効果の程は分かりません。
新メニューなのか専用メニューなのかも含めて
答えは過ぎ行く風の中に、ですね。
継続するお店は少なく、新規のお店が参加しては翌年やめていく、
あるいは十勝では無理になったから今度は釧路で、
という焼畑農業のようなことがないといいなとは思いますが、
私どものお店も
適正な価格であるとお客様に思っていただけるような
そういうお料理を提供できるよう、
今後もより一層努力していきたいと思います。
「商人の道は
売り手よし
買い手よし
世間よし
の三方よしとすべし」
昔の人は上手いことを言いますね。
私どもの店はこのランチパスポートの企画に参加しておりませんが
影響を受けていることは間違いありません。
お客様にとって非常にインパクトのある企画ですから
購入された方が参加店舗を巡るのは当然ですよね。
一方お店側にとっては経営面のようなデリケートな問題も含むので
同業者として、率直なご意見を述べられていることに
まず敬意を抱きます。
そしてそれについて消費者、飲食店従事者の両方の側面から
私どもなりに思うところを述べます。
この「ランチパスポート」に掲載されているメニューは
原則として「通常営業で提供されているもの」になります。
通常提供されているものとは異なる
パスポート専用メニューを出しているところもあるようですが
これは不当表示に該当する可能性がかなり高いと思います。
(これについては後ほど触れます)
あくまで通常¥700~¥1000で提供されているものが
ワンコインの¥500で食べられて、
そこで初めて購入した方の特典、恩恵になるわけです。
ということは、お店側としては値引き分
利益を圧迫、もしくは消失していることになります。
リンクの記事でも触れられていますが
食材原価3割
営業経費3割
人件費3割
利益1割
というのが適正価格とされている中で
仮に消費税込¥800のランチを消費税込¥500で提供すると
人件費と利益は消失します。
税込価格¥800であれば本体価格は約¥740です。
食材原価と営業経費として計算される3割は
それぞれ約¥220ということになります。
一方税込価格¥500の本体価格は約¥460です。
食材原価と営業経費を足して約¥450ですから
人件費と利益がほぼ消失していることが分かります。
本来人件費と利益として計上される¥280ほどが
お店の赤字として残ることになります。
ランチパスポートの掲載費用はかからないようなので
この赤字分を広告宣伝費として転換するというのが
店側のランチパスポートの恩恵ということになります。
言い換えれば
「一見お店は損をしているように見えるけれど
宣伝費として考えれば損ではない」
という考え方になるわけですね。
ただ、その宣伝費としての費用対効果が
率直に言って疑問ではあります。
上記の計算において
1日に10人のランチパスポート利用者がいるとします。
宣伝費として考えるべき赤字分は
1名¥250としても¥2500です。
1ヶ月25日の営業日として赤字分は¥62500で
これを3ヶ月続けると¥187500の赤字=宣伝費ということになります。
2500円*25日*3ヶ月=187500
ランチパスポートの期間は12月~2月ですから
この18万以上の費用に見合う効果を
3月から11月までの9ヶ月で獲得しないといけないわけです。
本来の価格¥800で得られる利益が¥75ということは
9ヶ月で2500人分の効果が得られないと
費用対効果としてはマイナスということになります。
1ヶ月あたり270人以上
1日あたり10人以上の効果です。
1日に10人来るという仮定なのに
1日10人以上の効果が必要になるわけです。
ちょっと何を言っているか分かりませんね。
しかもこの人数を達成してようやくプラマイ0ですから。
もちろんこれはランチだけの単純計算なので
ドリンクなどのサイドオーダーの利益は考慮されていません。
ランチではなくお酒などの単価の高い部門への影響も
期待できるだろうというのも当然あります。
逆に、たとえばせっかく来たのに食べられなかった、とか
パスポート使用期間の開始直前と終了直後は来店を控える傾向になる、とか
そういうマイナス面も考慮されていません。
また、これだけのインパクトのある企画ですから
他の広告宣伝費をカットすれば
その分の営業経費が浮くでしょう。
(「しゅん」さんや「Chai」さんにとっては大打撃でしょうが)
ですから実際はもう少し効果が低くてもいいかもしれません。
それでも極めて高いリピート率が期待できないと
システムとしては厳しいのではないかと感じます。
たとえば限定10食にして
食べられなかったお客様が通常価格のメニューを注文すれば
その分はお店の利益にはなるでしょうが
それがリピートにつながるかというとそれは疑問です。
もしかしたら
「企業努力で¥500でも利益を出せるようなものを作ればいい」
というご意見もあるかもしれません。
もちろんそれ自体は可能でしょう。
専用メニューはこの考え方に沿っているものでしょう。
考え方としてはある意味当然ではあります。
ですが、¥500で提供しても利益が出るメニューならば
それはそもそも適正価格が¥500の商品なのであって
適正価格¥500で提供できるものをランチパスポートに載せたところで
お客様には恩恵はありません。
お得ではない価格であるにもかかわらず
あるいはさほどお得ではないにもかかわらず
パスポート使用でとてもお得になるという表示は
いわゆる優良誤認を禁じた景品表示法に抵触することになります。
通常営業で提供しているメニューの質や量を
利益確保のために調整して提供するのが論外なのは言うまでもありませんが
通常営業で提供していない、パスポート専用メニューの提供も
通常存在していない商品を通常よりお得だとして売るわけですから
同じように不当表示に該当する可能性があります。
お得かどうか消費者は比較判断できないからです。
だからこそ通常営業で提供しているメニューを
パスポート提示時にも提供することが原則になっているわけです。
専用メニューではなく新メニューを時期を合わせて発売した、
というのはありでしょうけれど
その場合はもちろん期間終了後もずっと継続販売しなければいけません。
結局のところ、ランチパスポートの仕組みに限ると
お店側は利益確保のための努力ではなく
利益の消失分を広告費として計上するしかないことになります。
参加されているほとんどの店舗の皆さんは
そういったことを承知の上で
その後の集客を期待して
いわば血を流しておられるのだと思います。
真っ当にやればどうしたって血が流れる仕組みですから。
とはいえこれだけ採算ラインが高いと
最終的にお客様もお店側も得をせず
発行した出版社だけが利益を得ることになりかねません。
血が流れすぎてしまえば人もお店も斃れます。
ランチをやめてしまったり、営業自体をやめてしまうことにも
つながりかねないのではないかと感じたりもします。
もちろんもし、このランチパスポートという仕組みが
不当表示無しでやっても本当にメリットがあるものなら
今年参加されているお店は
来年以降もこのランチパスポートに掲載するでしょう。
終わってみないと効果の程は分かりません。
新メニューなのか専用メニューなのかも含めて
答えは過ぎ行く風の中に、ですね。
継続するお店は少なく、新規のお店が参加しては翌年やめていく、
あるいは十勝では無理になったから今度は釧路で、
という焼畑農業のようなことがないといいなとは思いますが、
私どものお店も
適正な価格であるとお客様に思っていただけるような
そういうお料理を提供できるよう、
今後もより一層努力していきたいと思います。
「商人の道は
売り手よし
買い手よし
世間よし
の三方よしとすべし」
昔の人は上手いことを言いますね。
コメント(3件) | コメント欄はユーザー登録者のみに公開されます |
コメント欄はユーザー登録者のみに公開されています
ユーザー登録すると?
- ユーザーさんをお気に入りに登録してマイページからチェックしたり、ブログが投稿された時にメールで通知を受けられます。
- 自分のコメントの次に追加でコメントが入った際に、メールで通知を受けることも出来ます。