2015619(金)

国語教科書を解剖すると・・・・・・。

石原千秋 『国語教科書の中の「日本」』筑摩書房 2009年
 同書は、光村図書、東京書籍、教育出版各社の小学国語教科書、及び光村図書、東京書籍、教育出版、三省堂各社の中学国語教科書を分析対象としています。そして、国語教科書にはどのような傾向をもった作品が収録されているのかを、長年の教科書編集に携わってこられた貴重な体験も交えながら明らかにしています。著者は<日本>という枠組みを軸に国語教科書をテクストとして読むことで、「教室で言葉にならない何かをおしえていないか」という問題提起をしたいとしています。

・学校空間で「道徳」や「常識」を教えるなとまでは言わないが、国語教育の影に隠れて「見えない」形で行うのは止めてほしい。国語教育にはもっと別の仕事があるはずである。(同書より)
・「道徳教育」が悪いとは言わない。問題はその「道徳教育」の中身であり、何のための「道徳教育」かということだ。(同書より)
・自由に読むことは、説得力の度合いに差はあっても、他人とは違った読みの根拠が示せること。根拠の強度はその時代のパラダイムに影響されやすい。だから、多くのパラダイムを身につけてほしい。その一方、無茶苦茶に読むとは根拠を示せないか、示してもまったく説得力を持たないこと。国語教育に必要なのは自由に読むことであって、無茶苦茶に読むことではない。(同書より)
・「平和教材」も社会的なレベルで考えるべき問題を、家族とか一人一人の努力の問題や個人に内面の問題に還元してしまう傾向がある。それが、「道徳教育」なのだ。国語教育であれば、物語と社会構造がパラレルな関係にあるところまで教えるべきではないだろうか。(同書より)

 石原さんは日本の中学入試や大学入試の国語の設問にも問題性を指摘しています。今後は入試国語のイデオロギー性も解明していくことが期待されると思いました。






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