2016年7月10日(日)
ガチで、すげー本です。
アンソニー・B・アトキンソン
『21世紀の不平等』東洋経済新報社2015年
この本の序文をトマ・ピケティが書いています。『21世紀の資本』の著者です。彼は格差の原因をr>g(資本収益率>経済成長率)というたった一つの式であらわしました。経済のグローバル化が進んで貧困化や格差はしょうがないんじゃないかと思ってしまっている人にこそ有益な本です。
・この絶望論に対して言いたいことは三つある。一つは過去に不平等の削減が起きたときの根底にある原因の一つ(唯一ではない)は政府の介入が成功したからなのだ、ということだ。こうした介入としては、第二次世界大戦後の数十年で作られた社会プログラム、報酬均等法制、教育の拡張、累進資本税や累進所得税の運用がある。こうした手法は完璧ではないが、間違いなく効果があった。二つ目の言い分は、政府プログラムが失敗する理由として重要なのは、事前の計画や相談がなかったことだ、というものだ。詳細な提案を示して公的な議論を行い、地ならしをしなくてはならない。私は現状の政策を理解するにあたり制度的な細部の重要性を強調してきた。同じように、本書で述べたアイデアも法制や施策の具体的な提案に翻訳しなくてはならない。この過程は間違いなく、制度や施策の形式も中身も改善する。(360ページ)
・そして最後に言いたいのは、本書の唯一の対象読者が政府だなどといっていないし、またそんなことを思ってもいない、ということだ。ここで述べた提案を実施するかどうか、このアイデアが実施されるかを最終的に決めるのは個人なのだ。その個人たちは、有権者として間接的にその決断を下すかもしれず、あるいは・・・今日ではこちらのほうが重要かもしれないが・・・キャンペーングループやソーシャルメディアを通じたロビイストとして、有料のプロのロビイストたちに対抗する力として動くことでその決断を行うかもしれない。選出代議士に電子メールでメッセージを送るだけでも違いは生まれるのだ。だがそれ以外に、個人は消費者、貯蓄者、投資家、労働者、雇い主としての自分自身の行動を通じ、社会での不平等の度合いを直接的に左右できる。これが最も明白なのは個人の慈善活動の面だ。そこでのリソース移転は、それ自身が重要であるだけでなく、政府に何をしてほしいかという強力なメッセージを提供するという点でも価値が高い。でも政府の場合で強調したように、移転は話の一部でしかない。消費者は生活賃金を支払う業者やフェアトレードによる製品を提供する業者から買い物をすることで状況を変えられる。個人は、個別に活動するにせよ集団で活動するにせよ、地元の商店や企業を使うことで状況を変えられる。貯蓄者は、株主所有の銀行がどういう給与方針を持っているか尋ねてみよう。自分の資金を相互組織に移そう。賃金の場合で強調したように、市場の力は結果の範囲を制約することもあるが、公正や社会正義の感覚といった他の配慮が作用する余地も残してくれるのだ。人は個人的な生活でのみならず経済生活においても多くの倫理的決断を下すし、それらが合わされことで、私たちの決断は不平等の度合いを減らすのに貢献できる。それがどのように実現できるのかを読者が理解する一助に本書がなったことを祈りたい。(361ページ)
『21世紀の不平等』東洋経済新報社2015年
この本の序文をトマ・ピケティが書いています。『21世紀の資本』の著者です。彼は格差の原因をr>g(資本収益率>経済成長率)というたった一つの式であらわしました。経済のグローバル化が進んで貧困化や格差はしょうがないんじゃないかと思ってしまっている人にこそ有益な本です。
・この絶望論に対して言いたいことは三つある。一つは過去に不平等の削減が起きたときの根底にある原因の一つ(唯一ではない)は政府の介入が成功したからなのだ、ということだ。こうした介入としては、第二次世界大戦後の数十年で作られた社会プログラム、報酬均等法制、教育の拡張、累進資本税や累進所得税の運用がある。こうした手法は完璧ではないが、間違いなく効果があった。二つ目の言い分は、政府プログラムが失敗する理由として重要なのは、事前の計画や相談がなかったことだ、というものだ。詳細な提案を示して公的な議論を行い、地ならしをしなくてはならない。私は現状の政策を理解するにあたり制度的な細部の重要性を強調してきた。同じように、本書で述べたアイデアも法制や施策の具体的な提案に翻訳しなくてはならない。この過程は間違いなく、制度や施策の形式も中身も改善する。(360ページ)
・そして最後に言いたいのは、本書の唯一の対象読者が政府だなどといっていないし、またそんなことを思ってもいない、ということだ。ここで述べた提案を実施するかどうか、このアイデアが実施されるかを最終的に決めるのは個人なのだ。その個人たちは、有権者として間接的にその決断を下すかもしれず、あるいは・・・今日ではこちらのほうが重要かもしれないが・・・キャンペーングループやソーシャルメディアを通じたロビイストとして、有料のプロのロビイストたちに対抗する力として動くことでその決断を行うかもしれない。選出代議士に電子メールでメッセージを送るだけでも違いは生まれるのだ。だがそれ以外に、個人は消費者、貯蓄者、投資家、労働者、雇い主としての自分自身の行動を通じ、社会での不平等の度合いを直接的に左右できる。これが最も明白なのは個人の慈善活動の面だ。そこでのリソース移転は、それ自身が重要であるだけでなく、政府に何をしてほしいかという強力なメッセージを提供するという点でも価値が高い。でも政府の場合で強調したように、移転は話の一部でしかない。消費者は生活賃金を支払う業者やフェアトレードによる製品を提供する業者から買い物をすることで状況を変えられる。個人は、個別に活動するにせよ集団で活動するにせよ、地元の商店や企業を使うことで状況を変えられる。貯蓄者は、株主所有の銀行がどういう給与方針を持っているか尋ねてみよう。自分の資金を相互組織に移そう。賃金の場合で強調したように、市場の力は結果の範囲を制約することもあるが、公正や社会正義の感覚といった他の配慮が作用する余地も残してくれるのだ。人は個人的な生活でのみならず経済生活においても多くの倫理的決断を下すし、それらが合わされことで、私たちの決断は不平等の度合いを減らすのに貢献できる。それがどのように実現できるのかを読者が理解する一助に本書がなったことを祈りたい。(361ページ)
コメント(0件) | コメント欄はユーザー登録者のみに公開されます |
コメント欄はユーザー登録者のみに公開されています
ユーザー登録すると?
- ユーザーさんをお気に入りに登録してマイページからチェックしたり、ブログが投稿された時にメールで通知を受けられます。
- 自分のコメントの次に追加でコメントが入った際に、メールで通知を受けることも出来ます。