2016823(火)

戦後史の名著です

正村公宏『戦後史』上下 筑摩書房1985年
1945年から1975年頃までの約30年を「戦後」と呼ぶべき時代と正村教授はみなしている。1945年夏、日本の主要都市は焼野原になりつつあった。そして、現在4年後に再び東京でオリンピックが開催されることとなっている平成の日本。先の30年はもはや過去である。この作品は先達の方方が歩まれた貴重な証しを現在の日本社会で暮らすわれわれがどう受け止めなくてはならないのかを考えるための名著である。なお、正村公宏教授は第一級の経済学者である。
同書は下記の通りに章立てされている。
戦後史 上
まえがき
第1章 敗戦と占領
第2章 戦後改革と民主主義 
第3章 インフレーションと労働運動
第4章 冷戦のなかの日本再建 
第5章 ドッジ・ラインと吉田内閣
第6章 朝鮮戦争・日本再軍備・平和条約
第7章 経済自立への道
第8章 産業合理化と労働運動
戦後史 下
第9章 戦後政治の再編成
第10章 日米安保条約の改定
第11章 高度経済成長の時代
第12章 社会的不均衡と環境破壊
第13章 世界のなかの日本
第14章 通貨危機と石油危機
第15章 転換の時代

すでに事実となった過去の歴史の意味は重く、しばしば不可避的な過程であったと思われがちである。しかし、こまかく見ると、多くの偶然的要因もあり、多数の主体の選択の累積と相互作用が歴史をつくりあげてきたことが理解される。戦争への過程でも、多くの人間の決断あるいは不決断が、具体的な歴史の様相を決定したのである。(同書 上4ページ)

核戦争の防止と軍縮の実現、環境保全と資源保護、人口の抑制と飢餓の防止といった深刻な全地球的規模の問題が存在するにもかかわらず、その解決のための有効な国際協力の展望は生まれていない。さまざまな方面から問題が投げかけられているが、国際政治の舞台での組織的行動はまだ弱い。二〇世紀の後半に経済面でいちおうの「成功」を収めた日本の国民にとって、二一世紀は、外側から与えられた状況にどう適応していくかではなくて、人間の立場から好ましいと考えられる状況を創造するためにどう行動していくかをますます強く求められる時代になるだろう。(同書 下495ページ)

蛇足
それにしても、日銀が直接に公債を引き受けるというのは、軍事費の調達や戦後復興を理由として過去に行われたそうです。中央銀行がこのような金融政策を取らなければならないほど今の日本の経済状況が深刻なのかとすごく心配になりました。






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