2016年10月25日(火)
木村草太さん 『憲法という希望』
木村草太 『憲法という希望』 講談社現代新書 2016年
先日、木村さんの講演を聴く機会がありました。お話がすごくおもしろかったので、木村さんの憲法学について理解を深めたくて同書を読んでみました。憲法で、社会問題を分析して、その答えに到達する過程が、わたしのような法律の素人にもよくわかりやすい話し言葉で書かれているところが特に同書のすばらしい点です。第四章の長年NHK「クローズアップ現代」のキャスターとして活躍された国谷裕子さんと木村さんとの,家族、基地建設問題、日本の学校教育、改憲議論などについての対談が圧巻です。
私にとってこの本を読んでいちばんよかったことは、辺野古新基地建設は、閣議決定と日米間の合意を根拠とするのみで、具体的な根拠法がないということ、そして、そのことはたぶん今後の日本社会で市民が暮らしていくうえで重要な論点を孕むmatterであるということを「木村定跡」をもとに理解できた点です。同書の構成は下記の通りです。
はじめに
第一章 日本国憲法と立憲主義
第二章 人権条項を活かす
第三章 「地方自治」は誰のものか
第四章 対談 「憲法を使いこなす」には
国谷裕子×木村草太
あとがき
【付録Ⅰ】日本国憲法(昭和二一年一一月三日公布、昭和二二年五月三日施行)
【付録Ⅱ】平成二十七年四月八日 参議院予算委員会会議録第一七号
(第十三部)(二一~二三ページ)
【付録Ⅲ】憲法について学ぶ文献リスト
皆さんに身につけてほしいのは、「政府のこの活動は何かおかしいのではないか」、「個人の権利が侵害されているのではないか」という勘を働かせる能力です。
そうした勘を身につけるには、自分らしく生きようとした時に感じる息苦しさに気づくことが重要です。日本人は我慢を美徳とするので、いやなことがあっても我慢し、仕方がないと考える傾向があるように思います。しかし、本当に我慢するべきことなのか、社会の側を変えるべきではないのか、と考えてみることは非常に大切です。
そうした疑問を持ちながら憲法の条文を読んでみると、「この条文は今の自分を応援してくれているのではないか」と感じる条文に出会えることがあります。あるいは、そうした疑問について学者や弁護士さんなどの専門家に相談すれば、よい解決策が見つかったりします。(p55~p56)
「法律構成」といわれる分野ですが、まったく同じ事件でも、法律の主張の仕方が変わるだけでまったく結論が変わるというのはよくあることなのですね。弁護士がプロフェッションとして頑張らないといけないのは、まさに法律構成です。
自分が少し主張の仕方を間違えてしまっただけで、依頼人の権利が実現できなくなってしまう。ですから、有能な弁護士に依頼することが重要なのです。(p125)
ですから、憲法が、国会で定めることを要求している「立法」とは何なのかを考えなければなりません。立法とは「法律事項」を決定する権限のことを言います。「法律事項」とは、法律によって決めなければいけない事項のことを言います。
では、法律によって決めなくてはならない事項とは何でしょうか。いろいろ専門家の間で議論がありましたが、現在では、「国政の重要事項」については、法律によって決めなければならない、と考えるのが一般的です。法学部的な議論に慣れていない方からすると、単なる言葉遊びのような感じを受けるかもしれませんが、「国会は唯一の立法機関です」という条文よりは、「国政の重要事項については、国会が法律で定めなければなりません」という説明のほうが、より具体的にイメージしやすくなっているのは、お感じいただけるのではないかと思います。(p89)
通常は、憲法学者が警告すれば、国民も権力者に対して警戒の目を向けますから、権力者はそうそう悪いことはできません。しかし、国民が憲法学者の警告を無視するようになれば、権力者は憲法に縛られずに、やりたい放題をする日が来るでしょう。
それを防ぐためには、イザという時に警告を発している憲法学者の発言内容をきちんと検証できるだけの力を国民が持っていなければなりません。常日頃、国家の暴走を恐れる必要はありませんが、憲法学者が警告を発した時には、「まあ、大丈夫だろう」と安易に思わずに、「本当に大丈夫か?」と周囲に目を光らせてほしいと思います。これが、憲法を守らせるのは究極的には国民だということの意味の一つです。(p112)
先日、木村さんの講演を聴く機会がありました。お話がすごくおもしろかったので、木村さんの憲法学について理解を深めたくて同書を読んでみました。憲法で、社会問題を分析して、その答えに到達する過程が、わたしのような法律の素人にもよくわかりやすい話し言葉で書かれているところが特に同書のすばらしい点です。第四章の長年NHK「クローズアップ現代」のキャスターとして活躍された国谷裕子さんと木村さんとの,家族、基地建設問題、日本の学校教育、改憲議論などについての対談が圧巻です。
私にとってこの本を読んでいちばんよかったことは、辺野古新基地建設は、閣議決定と日米間の合意を根拠とするのみで、具体的な根拠法がないということ、そして、そのことはたぶん今後の日本社会で市民が暮らしていくうえで重要な論点を孕むmatterであるということを「木村定跡」をもとに理解できた点です。同書の構成は下記の通りです。
はじめに
第一章 日本国憲法と立憲主義
第二章 人権条項を活かす
第三章 「地方自治」は誰のものか
第四章 対談 「憲法を使いこなす」には
国谷裕子×木村草太
あとがき
【付録Ⅰ】日本国憲法(昭和二一年一一月三日公布、昭和二二年五月三日施行)
【付録Ⅱ】平成二十七年四月八日 参議院予算委員会会議録第一七号
(第十三部)(二一~二三ページ)
【付録Ⅲ】憲法について学ぶ文献リスト
皆さんに身につけてほしいのは、「政府のこの活動は何かおかしいのではないか」、「個人の権利が侵害されているのではないか」という勘を働かせる能力です。
そうした勘を身につけるには、自分らしく生きようとした時に感じる息苦しさに気づくことが重要です。日本人は我慢を美徳とするので、いやなことがあっても我慢し、仕方がないと考える傾向があるように思います。しかし、本当に我慢するべきことなのか、社会の側を変えるべきではないのか、と考えてみることは非常に大切です。
そうした疑問を持ちながら憲法の条文を読んでみると、「この条文は今の自分を応援してくれているのではないか」と感じる条文に出会えることがあります。あるいは、そうした疑問について学者や弁護士さんなどの専門家に相談すれば、よい解決策が見つかったりします。(p55~p56)
「法律構成」といわれる分野ですが、まったく同じ事件でも、法律の主張の仕方が変わるだけでまったく結論が変わるというのはよくあることなのですね。弁護士がプロフェッションとして頑張らないといけないのは、まさに法律構成です。
自分が少し主張の仕方を間違えてしまっただけで、依頼人の権利が実現できなくなってしまう。ですから、有能な弁護士に依頼することが重要なのです。(p125)
ですから、憲法が、国会で定めることを要求している「立法」とは何なのかを考えなければなりません。立法とは「法律事項」を決定する権限のことを言います。「法律事項」とは、法律によって決めなければいけない事項のことを言います。
では、法律によって決めなくてはならない事項とは何でしょうか。いろいろ専門家の間で議論がありましたが、現在では、「国政の重要事項」については、法律によって決めなければならない、と考えるのが一般的です。法学部的な議論に慣れていない方からすると、単なる言葉遊びのような感じを受けるかもしれませんが、「国会は唯一の立法機関です」という条文よりは、「国政の重要事項については、国会が法律で定めなければなりません」という説明のほうが、より具体的にイメージしやすくなっているのは、お感じいただけるのではないかと思います。(p89)
通常は、憲法学者が警告すれば、国民も権力者に対して警戒の目を向けますから、権力者はそうそう悪いことはできません。しかし、国民が憲法学者の警告を無視するようになれば、権力者は憲法に縛られずに、やりたい放題をする日が来るでしょう。
それを防ぐためには、イザという時に警告を発している憲法学者の発言内容をきちんと検証できるだけの力を国民が持っていなければなりません。常日頃、国家の暴走を恐れる必要はありませんが、憲法学者が警告を発した時には、「まあ、大丈夫だろう」と安易に思わずに、「本当に大丈夫か?」と周囲に目を光らせてほしいと思います。これが、憲法を守らせるのは究極的には国民だということの意味の一つです。(p112)
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