2017212(日)

ご無沙汰しております

矢野眞和 濱中淳子 小川和孝『教育劣位社会』岩波書店2016年

 「教育の経済問題」を経済学・社会学の方法でとりわけ日本の高等教育を対象にして考察している名著です。商売柄いつも僕が思っている、「やっぱ、勉強しなきゃダメだ」「勉強しないとあとで後悔する」「いろいろ大変だけどできるなら大学に行ったほうがいいよ」(もちろん大学に行かない生き方もぜんぜんアリだけど!)「多くの若者が定位家族(この言葉の意味がわからない方は調べてください(笑))の状況に規定されないで大学進学を果たすには社会がどうあればよいか」といった諸問題をそれぞれの方々が考えるためのスタートラインの基本事項が論じられています。

・日本人が教育を軽視しているわけではない。教育は大事だと思っているが、限られた財源を教育、とくに高等教育に配分すべきだとする政治勢力は弱く、資金配分の優先順位が低いのである。

ご存知の方も多いと思いますが、20年ほど前、道東のある都市でありましたよね・・・。

・第一に、OECD(経済協力開発機構)の標準からすれば、給付型奨学金が学生の主役であり、返済する補助金はローン(貸与)と呼ばれて、区別される。奨学金をスカラシップ(scholarship)と訳したりする人も少なくないが、スカラシップは返済する必要のない給付型(グラント)である。OECD統計による各国の平均値によれば、給付と賞与の補助金額がほぼ半々になっている。給付型奨学金がないのは、日本ぐらいである。しかも、日本は大学の授業料が高い。ヨーロッパ大陸諸国では、「授業料が無償でも給付型奨学金のある国」が多いが、「授業料が高くて、学生補助が整備されていない国」は、日本と韓国とチリぐらいである。
・第二に、日本は(ブログ筆者)高等教育機関への公的支出が極めて少なくなっている。経済規模(GDP)に占める日本の公的支出の割合は、OECD加盟国諸国の中で最下位に属する。高等教育界では昔からよく知られた特殊性だが、「公的支出を増やすべきだ」という教育界の要望は、「国家の財政難」の一言で却下され続けている。
・大学教育には、それを受けた個人の生産性の上昇に伴う税収の増加、犯罪の減少や健康の促進などといった、個人にのみ還元されるわけではないさまざまな社会的利益が存在する。
・大学教育を受けた個人は、所得の増加によって、将来的により多くの税金を払うことになる。よって、もし大学教育への新たに税金を投入した際に、仮に高所得層の大学進学率をより押し上げたとしても、そうして進学した人々は、進学しなかった場合よりも多くの所得税を払うことになるだろう。そのため、低所得層で進学しない人々も、増加した税収によって、将来的には再分配などの面で利益を受ける可能性は否定できない。






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