2017年4月2日(日)
アメリカ地域社会における子どもが大人になる発達過程についての研究
昨年の米国大統領選挙で共和党候補のトランプ氏が勝利しました。氏は、メキシコと米国の国境に壁を建設するとか、イスラム教徒入国拒否などの政策実施を主張して多くの支持を集めました。他の政治的な主張もあったとしても、なぜトランプ氏が米国大統領としてアメリカ国民に選出されたのか僕は理解できませんでした。米国で暮らす人々は、どんな思いをトランプ氏に託したのか?このなぞを解くために下記の本を購入して読んでみました。
ROBERT D.PUTNAM OUR KIDS The American Dream in Crisis SIMON&SCHUSTER PAPERBACKS 2015
『私たちの子どもたち 危機の時代のアメリカ人の夢』といった意味でしょうか。同書の構成は
Chapter 1 THE AMERICAN DREAM:MYTHS AND REALITIES 第一章 アメリカの夢 神話と現実
Chapter 2 FAMILES 第二章 家族
Chapter 3 PARENTING 第三章 親であること
Chapter 4 SCHOOLING 第四章 学校教育制度
Chapter 5 COMMUNITY 第五章 地域社会
Chapter 6 WHAT IS TO BE DONE? 第六章 今、何がなされなければならないか?
The Stories of Our Kids JENNIFER M.SILVA and ROBERT D.PUTNAM
Acknowledgements
Notes
Index
"the heartbreaking stories of poor kids in this book actually understate the tragic life experiences of those on the very bottom of our society, the most deprived of American kids."
・第一章では実際、PUTNAM教授が育った1950年代のオハイオ州 Port Clintonと約50年後の現在の地域社会の著しい変貌が最初に描かれている。50年代当時にもAffluent(特に経済的に豊かな)な人々もless Affluent(経済的に必ずしも豊かでない)な人々もいたが、そのような違いを持つ子どもたちは近隣に住み、一緒に学校に行き、遊び、ともに祈り、そしてデートさえした様子が多くのevidencesが用いられつつ描かれている。しかし、現在のこの地域は、社会階層によって住む地域がくっきりと分断されている(segregation)事実が明らかにされている。そして、お互いどのような暮らしをしているのかがさっぱりわかっていない。PUTNAM教授自身今回の研究プロジェクトを進める中で、米国社会の片隅に追いやられほったらかしにされている若者たちがどのように暮らしているのかをはじめて知ることとなったと同書において述べられている。
・社会的に不利な生育環境で育った若者たちの多くがdrug abuse,alcohol abuse,violence,teen pregnancyといった諸問題に直面している。また、特にブルーカラーの労働者層の多くの人々は不安定な就業状態あるいは失業といった状況に追いやられている。しかしその一方で、high skillを獲得した会計士、大学教授、弁護士、株式仲買人、大企業経営者といった職業の人々が社会の富を占有しつつある状況が拡大している。
・ただ、これらのgap(格差)あるいはinquality(不平等)の拡大化傾向は共和党あるいは民主党の両方の政権下でここ40年間で進行してきた。
蛇足
今回のトランプ大統領が誕生した大きな要因のひとつは、氏がアメリカ社会で不利な状況で暮らしている人々の不満や苛立ちを簡単な言葉で刺激しつつ、巧みにそのような人々の支持を獲得することに成功したということであろうと考えました。
でも、私は同書を読み進めていく中で、トランプさんが大統領になったことよりもPUTNAM教授が大統領とは異なった方法でアメリカ社会を再興しようとしていることのほうに興味を持ちました。現在、日本でも相対的貧困率が16.1%になっています。特に、シングルマザーの下で育っている子どもたちのしんどい状況がマスコミ等で報道されております。生育環境の格差は、教育達成の格差を孕みながら進行することが今回のPUTNAM教授の研究によっても指摘されています。アメリカほどではないにしても、社会の不平等が、子育て、家族構造、学校教育、そして、地域の安全や住民間の信頼構築に及ぼす影響といった問題はわが国にとっても喫緊の課題でもあると、私は考えます。同書ではmentors,mentoringという言葉が多く出てきました。もしかしたら、これらのことが地域再生のkeywordになるのではないかと考えます。同書の翻訳本も3月に出版されたみたいです。がちで、これからの世の中のあり方を考えている方にはおすすめしたい一冊です。
ROBERT D.PUTNAM OUR KIDS The American Dream in Crisis SIMON&SCHUSTER PAPERBACKS 2015
『私たちの子どもたち 危機の時代のアメリカ人の夢』といった意味でしょうか。同書の構成は
Chapter 1 THE AMERICAN DREAM:MYTHS AND REALITIES 第一章 アメリカの夢 神話と現実
Chapter 2 FAMILES 第二章 家族
Chapter 3 PARENTING 第三章 親であること
Chapter 4 SCHOOLING 第四章 学校教育制度
Chapter 5 COMMUNITY 第五章 地域社会
Chapter 6 WHAT IS TO BE DONE? 第六章 今、何がなされなければならないか?
The Stories of Our Kids JENNIFER M.SILVA and ROBERT D.PUTNAM
Acknowledgements
Notes
Index
"the heartbreaking stories of poor kids in this book actually understate the tragic life experiences of those on the very bottom of our society, the most deprived of American kids."
・第一章では実際、PUTNAM教授が育った1950年代のオハイオ州 Port Clintonと約50年後の現在の地域社会の著しい変貌が最初に描かれている。50年代当時にもAffluent(特に経済的に豊かな)な人々もless Affluent(経済的に必ずしも豊かでない)な人々もいたが、そのような違いを持つ子どもたちは近隣に住み、一緒に学校に行き、遊び、ともに祈り、そしてデートさえした様子が多くのevidencesが用いられつつ描かれている。しかし、現在のこの地域は、社会階層によって住む地域がくっきりと分断されている(segregation)事実が明らかにされている。そして、お互いどのような暮らしをしているのかがさっぱりわかっていない。PUTNAM教授自身今回の研究プロジェクトを進める中で、米国社会の片隅に追いやられほったらかしにされている若者たちがどのように暮らしているのかをはじめて知ることとなったと同書において述べられている。
・社会的に不利な生育環境で育った若者たちの多くがdrug abuse,alcohol abuse,violence,teen pregnancyといった諸問題に直面している。また、特にブルーカラーの労働者層の多くの人々は不安定な就業状態あるいは失業といった状況に追いやられている。しかしその一方で、high skillを獲得した会計士、大学教授、弁護士、株式仲買人、大企業経営者といった職業の人々が社会の富を占有しつつある状況が拡大している。
・ただ、これらのgap(格差)あるいはinquality(不平等)の拡大化傾向は共和党あるいは民主党の両方の政権下でここ40年間で進行してきた。
蛇足
今回のトランプ大統領が誕生した大きな要因のひとつは、氏がアメリカ社会で不利な状況で暮らしている人々の不満や苛立ちを簡単な言葉で刺激しつつ、巧みにそのような人々の支持を獲得することに成功したということであろうと考えました。
でも、私は同書を読み進めていく中で、トランプさんが大統領になったことよりもPUTNAM教授が大統領とは異なった方法でアメリカ社会を再興しようとしていることのほうに興味を持ちました。現在、日本でも相対的貧困率が16.1%になっています。特に、シングルマザーの下で育っている子どもたちのしんどい状況がマスコミ等で報道されております。生育環境の格差は、教育達成の格差を孕みながら進行することが今回のPUTNAM教授の研究によっても指摘されています。アメリカほどではないにしても、社会の不平等が、子育て、家族構造、学校教育、そして、地域の安全や住民間の信頼構築に及ぼす影響といった問題はわが国にとっても喫緊の課題でもあると、私は考えます。同書ではmentors,mentoringという言葉が多く出てきました。もしかしたら、これらのことが地域再生のkeywordになるのではないかと考えます。同書の翻訳本も3月に出版されたみたいです。がちで、これからの世の中のあり方を考えている方にはおすすめしたい一冊です。
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