2019年12月8日(日)
今年の1冊
佐々木 実『資本主義と闘った男』講談社2019年
宇沢弘文(1928年7月生まれ)東大名誉教授(以下、宇沢教授)が経済学を研究した軌跡。宇沢教授は、Communist、 社会主義者ではありません。学生の時の学部は理学部数学科でした。Kenneth Joseph Arrowに均衡価格の局所的な安定についての論文の批判を手紙に書いて、Arrowからスタンフォード大学に来ないかという旨の返事を1955年に得て、1956年に宇沢教授のリサーチ・アソシエイトとして経済学研究がスタートしました。その後は、新古典派の経済学を批判的に検討し、世界の著名な経済学者たちとともに経済学の発展に大きく寄与してきたことが、本書で述べられています。ジョージ・アカロフ、ジョセフ・スティグリッツ(『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 徳間書店の著者)は、宇沢教授のお弟子さんとのことです。ちなみに、お二人はともに2001年にノーベル経済学賞を受賞しています。宇沢教授は、86歳で2014年9月になくなっております。
<1945年8月、日本軍の無条件降伏とともに始まったパックス・アメリカーナの根幹には、新自由主義の政治経済的思想が存在する。新自由主義は、企業の自由が最大限に保証されるときにはじめて、一人一人の人間の能力が最大限に発揮され、さまざまな生産要素が効率的に利用できるという一種の信念に基づいて、そのためにすべての資源、生産要素を私有化し、すべてのものを市場を通じて取り引きするような制度をつくるという考え方である。水や大気、教育とか医療、また公共的交通機関といった分野については、新しい市場をつくって、自由市場と自由貿易を追求していく。社会的共通資本を根本から否定するものである。市場原理主義は、この新自由主義を極限にまで推し進めて、儲けるためには、法を犯さない限り、何をやってもいい。法律や制度を[改革]して、儲ける機会を拡げる。そして、パックス・アメリカーナを守るためには武力の行使も辞さない。水素爆弾を使うことすら考えてもいい。ベトナム戦争、イラク侵略に際してとられた考え方である。
小泉政権の5年半ほどの間に、この市場原理主義が「改革」の名の下に全面的に導入されて、日本は社会のほとんどすべての分野で格差が拡大し、殺伐とした、陰惨な国になってしまった。この危機的状況の下で、2009年9月、歴史的な政権交代が実現した。しかし、国民の圧倒的な支持を得て発足した民主党政権は、大多数の国民の期待を無残に裏切って、パックス・アメリカーナの走狗となって、卑屈なまでに米国の利益のために奉仕している。普天間基地に始まり、今回のTPP加入問題にいたる一連の政策決定が示す通りである。>(同書611~612page)
僕的には、大学時代より宇沢教授のお名前は知っていました。大学3年時に宇沢教授の教え子の方のマクロ経済学の授業をうけましたが、微分・積分の方程式、数列などが山盛りでさっぱりわかりませんでした。その一方で、同書で何度も出てきています『自動車の社会的費用』(岩波新書)は卒論を書くときに読みました。
同書を読んで思ったことは、高校時の大学選択時に文系だから数学はやらない、特に、経済学は文系だから数学はいいとかいう進路指導は絶対やめなければならないということです。英語は重要です。だけど、それと同等以上に、大学で社会科学の勉強をしっかりとおこなうには高校程度の数学には習熟している必要があるということを強調したいです。[高校時代数学の勉強が残念ながらおろそかになった人は、もちろん大学入学後補習しながらでもO.K.です(笑)]
あと、経済において、中央集権より市場がいいのははっきりしています。でも、marketは所詮marketでしかないということをよく認識しなくてはならない。External diseconomiesをちゃんと見据えて、民の暮らしに立脚した社会をつくっていく。その時には、social common capitalがkey wordになりそうだということ。
宇沢弘文(1928年7月生まれ)東大名誉教授(以下、宇沢教授)が経済学を研究した軌跡。宇沢教授は、Communist、 社会主義者ではありません。学生の時の学部は理学部数学科でした。Kenneth Joseph Arrowに均衡価格の局所的な安定についての論文の批判を手紙に書いて、Arrowからスタンフォード大学に来ないかという旨の返事を1955年に得て、1956年に宇沢教授のリサーチ・アソシエイトとして経済学研究がスタートしました。その後は、新古典派の経済学を批判的に検討し、世界の著名な経済学者たちとともに経済学の発展に大きく寄与してきたことが、本書で述べられています。ジョージ・アカロフ、ジョセフ・スティグリッツ(『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』 徳間書店の著者)は、宇沢教授のお弟子さんとのことです。ちなみに、お二人はともに2001年にノーベル経済学賞を受賞しています。宇沢教授は、86歳で2014年9月になくなっております。
<1945年8月、日本軍の無条件降伏とともに始まったパックス・アメリカーナの根幹には、新自由主義の政治経済的思想が存在する。新自由主義は、企業の自由が最大限に保証されるときにはじめて、一人一人の人間の能力が最大限に発揮され、さまざまな生産要素が効率的に利用できるという一種の信念に基づいて、そのためにすべての資源、生産要素を私有化し、すべてのものを市場を通じて取り引きするような制度をつくるという考え方である。水や大気、教育とか医療、また公共的交通機関といった分野については、新しい市場をつくって、自由市場と自由貿易を追求していく。社会的共通資本を根本から否定するものである。市場原理主義は、この新自由主義を極限にまで推し進めて、儲けるためには、法を犯さない限り、何をやってもいい。法律や制度を[改革]して、儲ける機会を拡げる。そして、パックス・アメリカーナを守るためには武力の行使も辞さない。水素爆弾を使うことすら考えてもいい。ベトナム戦争、イラク侵略に際してとられた考え方である。
小泉政権の5年半ほどの間に、この市場原理主義が「改革」の名の下に全面的に導入されて、日本は社会のほとんどすべての分野で格差が拡大し、殺伐とした、陰惨な国になってしまった。この危機的状況の下で、2009年9月、歴史的な政権交代が実現した。しかし、国民の圧倒的な支持を得て発足した民主党政権は、大多数の国民の期待を無残に裏切って、パックス・アメリカーナの走狗となって、卑屈なまでに米国の利益のために奉仕している。普天間基地に始まり、今回のTPP加入問題にいたる一連の政策決定が示す通りである。>(同書611~612page)
僕的には、大学時代より宇沢教授のお名前は知っていました。大学3年時に宇沢教授の教え子の方のマクロ経済学の授業をうけましたが、微分・積分の方程式、数列などが山盛りでさっぱりわかりませんでした。その一方で、同書で何度も出てきています『自動車の社会的費用』(岩波新書)は卒論を書くときに読みました。
同書を読んで思ったことは、高校時の大学選択時に文系だから数学はやらない、特に、経済学は文系だから数学はいいとかいう進路指導は絶対やめなければならないということです。英語は重要です。だけど、それと同等以上に、大学で社会科学の勉強をしっかりとおこなうには高校程度の数学には習熟している必要があるということを強調したいです。[高校時代数学の勉強が残念ながらおろそかになった人は、もちろん大学入学後補習しながらでもO.K.です(笑)]
あと、経済において、中央集権より市場がいいのははっきりしています。でも、marketは所詮marketでしかないということをよく認識しなくてはならない。External diseconomiesをちゃんと見据えて、民の暮らしに立脚した社会をつくっていく。その時には、social common capitalがkey wordになりそうだということ。
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