201885(日)

夏ですね!

秋から巻き返しを図るために、新しいcoffee makerを買いました。今までのより美味しいと思いました。やっぱmade in Japan!と思ったら、今までのと同じThe Great Wallがある国で作っていました。
ところで職業的理由から、教育をちゃんと考えておかなけりゃならないと思いましていっきに下記を読みました。

中澤 渉『日本の公教育』中公新書2018年
進学率の男女差をエビデンスと見なして選抜制度が運用されると、なぜ男女差が生じるのか、という根本的な原因が問われなくなる。潜在能力に大した平均的男女差はないと思われるのに、労働市場に男女を分ける制度や仕組みが強固にあるため、女子の高学歴が正当に評価されない。だから女子が高学歴を選択しないのではないか、という問題意識は浮上する余地はなくなる。実際、多くいると推測される男子より有能な女子が、このような社会的選抜であらかじめ排除されたとしたら、社会的損失でもある。 155page

発達障害や特定の家庭環境そのものが問題であるという解釈が広まることは問題だ。仮に障害や家庭環境などが何らかの影響を与えていたとしても、それ自体が原因というより、その子のもっている障害や家庭環境を教育現場が把握し対処する方法に、より深刻な問題があったのかもしれない。160page

この本を書いた著者はほんとうに頭がいいと思います。でも、頭がいい人の書いた本を読むといつでもじゃないけど、けっこう思うことがあります。それは、こうです。「だからどうしれってよ!」なに?ああそうか。「あとは自分で考えて、やればいいじゃん!」か。



201798(金)

新作のdvd

わたしは、ダニエル・ブレイク



201786(日)

「地べたにはポリティクスが転がっている。」p285

ブレイディみかこ『子どもたちの階級闘争』みすず書房2017年

ブレイディみかこ氏のイギリスにおける保育士としての現場報告。
就学前の子どもたちの託児施設において発生しているさまざまな問題(ミクロ)が、エスニシティ、階級、ジェンダーといったマクロな要因とつながっていることを、この本を読むことで手に取るように理解することができます。
ごくごく近い将来日本においても子どもの就学前の成長と発達の保障が、めっちゃ重大な社会的関心事項になるであろうことがリアルに実感できます。すごい本です。



201757(日)

男たちは、障害者運動に夢とロマンをかけ、女たちは、日々の生活をかけた。

荒井 裕樹『差別されている自覚はあるか』現代書館2017年
新進気鋭の障害者文化論・日本近現代文学の研究者である荒井裕樹氏が横田弘氏の行動・文学作品を対象として研究するなかで人間とは何かという問題に挑戦した作品。横田氏に優しく、でも、とことんくらいついていく荒井氏の姿勢がとにかくすごいです。さらに、運動家として、また詩人として一切の妥協をゆるさないでどこまでも自分自身を掘り下げていく横田氏も圧巻です。本作品には魅力的な方々が数多く取り上げられています。ぜったい、読んだあとでみえてくる世界が違ってきますよ。

あんなにラディカルな主義主張を繰り広げた「青い芝の会」。
その精神的主柱となった「行動綱領」を起草した横田弘。
その彼が憧れていたのは、こんなにも、ありきたりなものだった。
多くの人が憧れるような、あまりにもありきたりのものを、横田弘も欲していたのだ。
普通の人と同じように、脳性マヒ者も、人から生まれ、人を産む。
その産み-生まれる環の中に、普通に、脳性マヒ者も存在する。
 そんな、いのちの環の中に脳性マヒ者がいることを、あなたはどう思いますか?
 ただそれだけ、本当に、ただそれだけを問うために、横田弘は闘ってきたんじゃないか。
(同書272~273頁)

 題目は内田みどり氏「私と『CP女の会』と箱根のお山」九~10項(同書291項)の一文です。



201742(日)

アメリカ地域社会における子どもが大人になる発達過程についての研究

昨年の米国大統領選挙で共和党候補のトランプ氏が勝利しました。氏は、メキシコと米国の国境に壁を建設するとか、イスラム教徒入国拒否などの政策実施を主張して多くの支持を集めました。他の政治的な主張もあったとしても、なぜトランプ氏が米国大統領としてアメリカ国民に選出されたのか僕は理解できませんでした。米国で暮らす人々は、どんな思いをトランプ氏に託したのか?このなぞを解くために下記の本を購入して読んでみました。

ROBERT D.PUTNAM  OUR KIDS The American Dream in Crisis SIMON&SCHUSTER PAPERBACKS 2015
『私たちの子どもたち 危機の時代のアメリカ人の夢』といった意味でしょうか。同書の構成は

Chapter 1 THE AMERICAN DREAM:MYTHS AND REALITIES  第一章 アメリカの夢 神話と現実
Chapter 2 FAMILES 第二章 家族
Chapter 3 PARENTING 第三章 親であること
Chapter 4 SCHOOLING 第四章 学校教育制度
Chapter 5 COMMUNITY 第五章 地域社会
Chapter 6 WHAT IS TO BE DONE?  第六章 今、何がなされなければならないか?
The Stories of Our Kids  JENNIFER M.SILVA and ROBERT D.PUTNAM
Acknowledgements
Notes
Index

"the heartbreaking stories of poor kids in this book actually understate the tragic life experiences of those on the very bottom of our society, the most deprived of American kids."

・第一章では実際、PUTNAM教授が育った1950年代のオハイオ州 Port Clintonと約50年後の現在の地域社会の著しい変貌が最初に描かれている。50年代当時にもAffluent(特に経済的に豊かな)な人々もless Affluent(経済的に必ずしも豊かでない)な人々もいたが、そのような違いを持つ子どもたちは近隣に住み、一緒に学校に行き、遊び、ともに祈り、そしてデートさえした様子が多くのevidencesが用いられつつ描かれている。しかし、現在のこの地域は、社会階層によって住む地域がくっきりと分断されている(segregation)事実が明らかにされている。そして、お互いどのような暮らしをしているのかがさっぱりわかっていない。PUTNAM教授自身今回の研究プロジェクトを進める中で、米国社会の片隅に追いやられほったらかしにされている若者たちがどのように暮らしているのかをはじめて知ることとなったと同書において述べられている。
・社会的に不利な生育環境で育った若者たちの多くがdrug abuse,alcohol abuse,violence,teen pregnancyといった諸問題に直面している。また、特にブルーカラーの労働者層の多くの人々は不安定な就業状態あるいは失業といった状況に追いやられている。しかしその一方で、high skillを獲得した会計士、大学教授、弁護士、株式仲買人、大企業経営者といった職業の人々が社会の富を占有しつつある状況が拡大している。
・ただ、これらのgap(格差)あるいはinquality(不平等)の拡大化傾向は共和党あるいは民主党の両方の政権下でここ40年間で進行してきた。

蛇足
 今回のトランプ大統領が誕生した大きな要因のひとつは、氏がアメリカ社会で不利な状況で暮らしている人々の不満や苛立ちを簡単な言葉で刺激しつつ、巧みにそのような人々の支持を獲得することに成功したということであろうと考えました。
 でも、私は同書を読み進めていく中で、トランプさんが大統領になったことよりもPUTNAM教授が大統領とは異なった方法でアメリカ社会を再興しようとしていることのほうに興味を持ちました。現在、日本でも相対的貧困率が16.1%になっています。特に、シングルマザーの下で育っている子どもたちのしんどい状況がマスコミ等で報道されております。生育環境の格差は、教育達成の格差を孕みながら進行することが今回のPUTNAM教授の研究によっても指摘されています。アメリカほどではないにしても、社会の不平等が、子育て、家族構造、学校教育、そして、地域の安全や住民間の信頼構築に及ぼす影響といった問題はわが国にとっても喫緊の課題でもあると、私は考えます。同書ではmentors,mentoringという言葉が多く出てきました。もしかしたら、これらのことが地域再生のkeywordになるのではないかと考えます。同書の翻訳本も3月に出版されたみたいです。がちで、これからの世の中のあり方を考えている方にはおすすめしたい一冊です。



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